(写真:大会運営以外にもセコンドにつくなど試合中も家族が支えた)
8月のカッキーライドが終わると僕はすぐに昆虫ヒーローへ頭を切り替えた。
ミヤマ☆仮面の昆虫イベントは夏が本番だからだ。夏が過ぎても今度は「森のプロレス」大会が控えている。プロデューサーとして、大会全てを管理しなければならないのだ。つまりカッキーライドという祭が終わっても僕の熱量は収まることはないのである。
しかし、忙しくすることは病気にとっては良いことではない。
自分への戒めの意味も込めてカッキーライドを今一度振り返っていきたいと思う。
今回は家族目線でカッキーライドの裏側をお届けしたい。以下は妻の文章となるが目を通していただきたい。
今年もカッキーライドを開催することになりました。
私は大会を開催するなんて大変なことはやらないでほしいと思っていましたし、夫もそう思っていたに違いません。
でも髙山善広選手のやってほしいという言葉に夫は開催を決意し、私も腹をくくりました。
実は開催前からたくさんの方から「今年もやってほしい」と言われていて、それをすることが今まで夫や私たち家族を支えて応援してくださった皆様への恩返しになるとも思っていたからです。
開催するにあたってはかなりの労力を使うし、かなりのストレスも抱えます。
夫はおかげさまで元気にはしているものの、がんと告知されてからまだ3年とちょっと。まだまだ闘病中の身なのです。
そこで夫のストレスを減らすために、今回はなるべく家族中心で開催をすることにしました。
家族でやると家族の負担は多くはなるものの、周りに気を使わなくてすむ分、夫のストレスは減るはずと考えたのです。
16歳の息子が大会の実行委員長となり、娘はMCを務めたり宣伝部長としても積極的に告知をしてくれました。
私は裏方でチケットをさばいたり運転手となりました。
カッキーライドは年に1回開催する小さな興行のため、宣伝活動が重要です。
ポスターを持ってあちこちを走り回る。テレビ、ラジオ、雑誌のインタビュー、そして他団体の大会で告知をさせてもらうのですが、これがかなりハードなのです。
普通の人でも大変なのですから、病人にとっては並大抵のことではないと思います。
体に負担をかけないために綿密なスケジュールを組み、動く日と体を休める日をうまく作るようにし、移動も車で送迎することで無駄を省きました。
そして、それと同時に大変なのはマッチメイクです。
対戦カードによってはチケットの売り上げが大幅に変わってしまいます。
夫はいつも実行委員長の息子と“ああでもない、こうでもない”とマッチメイクを考え、選手に交渉し、ブッキングをしていました。
と普通はここまでですが、なんと今回夫はメインの試合で鈴木みのる選手とU.W.F.ルールで対戦することになったのです。
私は現役時代を知っているだけに、プロレス選手がどれだけ大変なのかは分かっています。
しかも昨年に藤原喜明選手とスパーリングマッチをしたものの、本格的なプロレス復帰は12年ぶり。
がん患者ということを差し引いても無理がありすぎます。
それでも夫は大会を成功させるためメインを張ることにし、スパーリングなどの練習を本格的に始めました。
私は運転手で毎回道場に一緒に行き、練習を見ていましたが、現役をリタイアした46歳の者がするような練習ではないと驚きました。
夫は向上心を持って練習に励み、私がスパーリングの様子をビデオに撮ると、家に帰ってから見直し遅くまで復習していました。
体的にはキツそうに見えましたが、“これはある意味、がんには良いのではないか”と感じました。
子供の頃からプロレスラーに憧れ、17歳で上京してプロレスラーになった夫は、引退してもやはりプロレスラーなのです。
リングに立つことが1番の特効薬なのかもしれないし、それがものすごい力を生み出しているのだと確信します。
とはいえ、実際は病気を抱えている体なので、プロレスラーの時のようにモリモリ食べて体を大きくするわけにはいかず、食事には気を使いました。
今までは病気のためたんぱく質、塩分、油を極力少なくする食事を心がけていましたが、激しいスパーリングをこなすには、ある程度たんぱく質や塩分、油も必要なのではないかと考えました。
がんを再発させない程度に栄養を摂取するという塩梅が難しいのです。
夫は元来食いしん坊だし、元々プロレスラーなので食べれば食べるほど良いとされてきました。
それが病気になって食事制限をし、せっかく結果を出せているのに、食べていいとなったらまたいくらでも食べたくなってしまうのです。
また定期的に病院で血液検査をしているのですが、水分不足で腎臓の数値が下がります。
スパーリングは尋常じゃない汗をかきますので水分や塩分、ミネラルの摂取が必要です。
たくさん麦茶を作ってまめに飲むようにし、と同時にむくまないようにスイカも積極的に食べるようにしました。
病気になってからずっと続けている新鮮なビタミンや酵素を摂るためのにんじんジュースや免疫を下げないための漢方を煎じて飲むというのもしているので飲むだけでも大変です。
毎日マッサージをしたり、仕事の合間には温泉治療に行ったり、ちょうど夏でしたので海にも行き、砂に埋まって体の毒素を出すという砂療法もしました。
忙しくても体調を崩さないよう、そしてがんを再発させないようできることはなんでもしました。
おかげさまで無事にカッキーライドを開催することができ、今はホッとしています。
終わった直後からたくさんの皆様に「来年も開催してほしい」と言われ、“ひえ〜”と思っているのも事実です。
ただ、これも夫にとっては生きがいになるかもしれないし、応援してくださる皆様には恩返しになるかもしれない。また闘病中の方には頑張っている姿を見ていただくことで希望の光になるかもしれません。
今回家族で頑張って無事に開催できたことが自信になりましたので、これからも家族で力を合わせて頑張っていこうと思います。
(このコーナーは毎月第4金曜日に更新します)
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