広島か、川崎Fか。J1の優勝争いはいよいよ佳境に入ってきたが、それ以上に目が離せないというか、えらいこっちゃな状況になっているのが残留争いである。

 

 最下位を“独走”しかけていた長崎が、ここにきて番狂わせを連発。伝説的な快進撃を続けていた名古屋を止めたかと思えば、翌週には4位の仙台をも倒し、降格圏外の15位まで勝ち点3に迫った。

 

 もちろん、長崎が依然苦しい状況にあることには変わりはないが、昇格1年目のチームに追い上げられている顔ぶれが、何というか、凄い。17位G大阪、16位柏、14名古屋、12位横浜、11位磐田……降格圏内との勝ち点差「3」の中に、実に5チームも、J優勝経験のあるチームが顔を揃えてしまっているのである。

 

 栄枯盛衰は世の習い。かつては名門と呼ばれたチームが没落していくケースは世界中どこのリーグでもある。ドイツ・サッカー界の名門ニュルンベルクは、そのあまりの強さゆえ、ドイツ有数のスポーツ紙「キッカー」に本社を同じ街に置く決断を下させてしまったほどだが、いまや彼らに優勝の可能性があると考える人は、ほぼ皆無である。

 

 ちなみに昨季のブンデスリーガでは、創設以来1部に留まり続けてきた名門ハンブルグがついに降格の憂き目となった。古豪や名門が落日を迎えるのは、決して珍しいことではない。

 

 だが、それはあくまでも何年か、あるいは十何年、何十年かに一度の椿事である。今年のJリーグのように、名門だらけの残留争いというのは、わたしの乏しい知識と記憶の中には当てはまる例がない。

 

 なぜこんなことが起こったのか。ネガティブに考えれば長期的かつ戦略的な視野を持つフロントの人材不足が遠因かもしれないし、ポジティブに見れば、欧州ほどには階級社会が固定されていない日本ならではの事象、ということもできる。

 

 なんにせよ、今年のJ1で起きているのが滅多にないこと、そうそう見られるものでないことだけは間違いない。取り立てて贔屓のチームを持たない身としては、ヒリつくような終盤戦を大いに愉しませてもらいたいと思っている。

 

 もし本当に複数のオリジナル10、あるいは優勝経験チームが降格するようなことになればJリーグはいよいよ新しい時局を迎える。来年以降は外国人枠が5人になるとなれば、なおさらのことだ。

 

 これまでのJリーグは、一時期の鹿島を除くと、外国人選手を単体として捉えているところがほとんどだった。つまり、必要な選手を当てはめ、チームへの同化を図っていくやり方である。

 

 だが、フィールドプレーヤーの半数が外国人でもOKということになれば、ユニットとしての補強を考えるところが出てくるだろう。共通したサッカー観を持つ複数の外国人選手の獲得が、今後のトレンドとなっていく可能性もある。

 

 今後のJにおいては、今まで以上にフロントの手腕や哲学、人脈が問われることになる。終わりと始まりが同時進行中。それが現在のJリーグなのかもしれない。

 

<この原稿は18年9月27日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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