先週の本欄でJ1下位グループの大混戦を「降格争い」と書いたら、校閲のチェックが入った。

 

「争っているのは降格ではなく残留なので、残留争いと表現するのが正しいのでは?」

 

 参りました。というか、これは恥ずかしい! 若いころ、「大団円」という言葉を「大円団」だとばかり思い込んでいて赤っ恥をかいた記憶があるが、まだまだ恥の種は残っていそう。

 

 さて、言葉づかいは間違ってしまったが、残留争いがいよいよ苛烈さを増してきているのは間違いない。ここにきてG大阪が4連勝で一気に自動降格の圏内からは脱出したが、それでも17位柏との勝ち点差はわずかに「3」。得失点の差もたった「1」しかないとなれば、1試合で順位が入れ替わってしまうことも十分にありえる。

 

 しかも、柏とG大阪は最終節でぶつかることが決まっている。もし12月1日をこのまま、もしくは近い状況で迎えることになれば、J1優勝経験を持つチーム同士の、伝説的なサバイバルマッチの実現となる。

 

 気になってカレンダーを見てみると、今年の最終節には他にも絶妙なカードが組まれている。快進撃が止まり、勢いに翳りの出てきた15位名古屋は14位の湘南とホームで対戦。トーレス、金崎という超A級のストライカー2人を擁しながら降格圏をさまよう鳥栖は、ACL出場権を懸ける鹿島と、最下位の長崎は9位の清水と当たる。

 

 もちろん、残り試合がまだ6(チームによっては8)あることを考えれば、最終節を迎えるまでに順位は変動するだろう。いまは圏外にいる神戸や横浜、磐田が巻き込まれていく可能性もある。残留を争うチームにとって、最終節まで息が抜けないカードが組まれている。当事者にとっては不本意だろうが、これはJの面白さをアピールする大きなチャンスとも言える。

 

 多くの国において、リーグ戦の1試合が特別なスポットライトを浴びる条件はざっくりいって3つある。一つは優勝(上位)争い、一つは残留争い、そしてもう一つがダービーマッチである。12月1日の最終節が特別な一日になるのはもちろんだが、今週末のJも見逃せない。静岡と大阪、2つの大きなダービーが控えているからである。

 

 特に、尻に火のついた感のG大阪、磐田にとってはいつも以上に重要な一戦となる。というのも、負けられない、負けたくないという気持ちを倍加させて挑むダービーで敗北を喫するようなことがあると、そのダメージは簡単には拭い去れない場合が多いからである。今季の両チームにとって、ここでのダメージは文字通りの命取りになりかねない。

 

 もちろん、そんなことは選手もサポーターも百も承知。それだけに、いろいろな意味で気合が入りまくった試合が見られるのでは、と期待している。台風、今週は逸れてくれないかな。

 

<この原稿は18年10月4日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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