1日、JA全農世界卓球団体選手権東京大会4日目が行われ、チャンピオンシップ・ディビジョンの男子グループCの日本代表(ITTF世界ランキング3位)はハンガリー代表(同25位)と対戦した。日本は1番手の水谷隼(DIOジャパン)と3番手の塩野真人(東京アート)がストレート勝ちするが、2番手の岸川聖也(ファースト)が格下相手に2敗を喫し、5戦目までもつれる苦しい展開となった。最後はエースの水谷がストレートで試合を締め、3対2で勝利した。これで通算成績を4勝1敗とし、グループ首位での通過を決めた。準々決勝は明日2日、同日に行われる決勝トーナメント1回戦のポルトガル代表(ITTF世界ランキング6位)とポーランド(同17位)の勝者とメダルをかけて戦う。一方の女子ITTF世界ランキング3位)はオーストラリア代表(同60位)に平野早矢香(ミキハウス)、田代早紀(日本生命)、森さくら(昇陽高)でオールストレートの完勝をした。GL5戦全勝でベスト8入り。2大会ぶりの表彰台へ、3日に台湾代表(同7位)とオランダ代表(同8位)の勝者と準々決勝を戦う。
(写真:前日30日に誕生日を迎えた塩野は28歳の初戦を白星で飾った)
◇チャンピオンシップ・ディビジョン
・男子グループC
日本 3−2 ハンガリー
(水谷3−0パッタンチュース、岸川0−3コシバ、塩野3−0ラカトシュ、岸川1−3パッタンチュース、水谷3−0コシバ)

「まずは第一関門突破かな」。倉嶋洋介監督はそう言って安堵した。グループリーグ初戦はランキング的には格下となるギリシャに敗れて、まさかの黒星スタートとなった。いわば「背水の陣」ともいえる後がない状況だった。2日目以降のルーマニア、フランス、ポルトガルと続く3試合を水谷、丹羽孝希(明治大)、松平健太(ホリプロ)という布陣で3連勝した。特にエースの水谷はギリシャ戦の2勝を含めて、6勝をあげる活躍。大黒柱としてチームを支えた。

 そして迎えたハンガリー戦。決勝トーナメント行きは決めているものの、ここで首位通過をすれば1回戦はシードされる。1敗で並ぶポルトガルには直接対決で勝っているため、勝利すれば準々決勝進出となる。ハンガリーは世界ランキングで26位とグループCでは最下位。ここまでの成績でも1勝3敗と決勝トーナメント進出の可能性が潰えているとはいえ日本を破ったギリシャに勝利するなど決して油断はできない相手だ。

 その大事な試合のトップバッターを任されたのは、エース水谷だ。前日に足を痛めているため、倉嶋監督の意図としては「(第1戦と第5戦を担当する)2番手扱い」という起用法だった。対戦するのはアーダーム・パッタンチュースは世界ランキング95位のカットマン。ハンガリーではランキング最上位の選手である。対する日本のトップに君臨する水谷は世界ランキングは10位だ。番狂わせを許す気は毛頭ない。フォア、バックともに冴え渡り、試合を完全に支配していた。第1ゲームは中盤に5連続ポイントを重ね、11−6で取る。続く第2ゲームは競り合いとなり、9−9となるが、そこから連続得点で寄り切った。完全にリズムに乗った水谷は、第3ゲームは相手に仕事らしい仕事をさせず11−4。ストレート勝ちで2番手の岸川にバトンをつないだ。

 しかし、ギリシャ戦以来の起用となった岸川が精彩を欠いた。2敗を喫したギリシャ戦の雪辱の思いが硬さを生んだのか、第1ゲームを3−11で落とす。そのままズルズルと悪い流れに陥り、9−11、8−11と競り勝てずストレート負けした。

 1対1のタイで登場したのが、世界卓球デビューとなるチーム最年長28歳の塩野だ。大会前までは一昨日のルーマニア戦に出場する予定だったが、ギリシャ戦の敗戦により狂いが生じた。「すぐに切り替えた」と気落ちせず、これまではチームのサポートに回った。“2日遅れのデビュー”の相手はタマーシュ・ラカトシュ。ランキング的には塩野の26位に対し、ラカトシュは206位と大きな差はあるが、塩野の約1年前までは180位台だったことを考えれば楽観視はできなかった。

「最初は自分でも分かるくらい硬かった」と塩野。第1ゲームは11−7で何とかモノにすると、徐々に自分のペースに持っていく。台から離れ、相手の打球を拾い上げる。カットマンの真骨頂である粘りを見せた。ラカトシュはしびれを切らすように打球を台上に収められない。第2ゲームを11−3で簡単に取ると、第3ゲームは一転して点の取り合いとなった。先にマッチポイントを迎えたが、4連続で得点を奪われるなど、このゲームを失いかけた。それでも台から離れるだけではなく機を見て、前へ詰めて強烈なフォアハンドを叩き込むプレーで同点に追いつく。14−13と、このゲーム3度目のマッチポイントでラカトシュの打球が台をオーバーした。この瞬間、塩野はフーッと大きく息をついた。見事に世界卓球デビュー戦で白星を手にした。

 倉嶋監督は「1ゲームはちょっと硬かったが、徐々にスイングの力が抜けて、2ゲーム目から塩野らしいプレーができた。初戦であれだけいいプレーができたのは合格点」と28歳のカットマンを評価した。

 初出場の塩野が流れを引き戻したが、岸川はパッタンチュースに1−3で敗れてしまう。カットマンを苦にしないことも加味しての2番手投入だったが、結果的には裏目に出て、2対2でのタイで最終戦を迎えた。「ここまで回るのは誤算だった」と倉嶋監督も想定外の展開ではあったが、「試合を重ねるごとに調子も上がってきて、顔付きも自信に満ち溢れている。すごくいい状態になってきた」と指揮官が絶大な信頼を寄せるエースが再びコートに登場する。

 水谷は前日に痛めたケガの影響を微塵も感じさせない。岸川をストレートで破ったダーニエル・コシバを全く寄せ付けなかった。1ゲーム目を11−3で取ると、安定したフォア、バックハンドに加え、サーブでも相手を翻弄した。水谷のショットのほとんどは枠に収まり、コシバの返球はネットに弾かれた。2ゲーム目は11−6、3ゲーム目は11−5で奪い、ここでもストレート勝ち。エースは無敗のまま今大会での連勝を8に伸ばした。

 これで日本は4勝1敗でグループリーグを終え、地力での1位突破を決めた。試合の1時間後に行われたドローでは、日本は6連覇中の中国(ITTF世界ランキング1位)とは逆の山に入った。4大会連続のメダルをかけた準々決勝は明日の夜に行われる。グループリーグで勝利したポルトガルとグループA3位のポーランド(同17位)の勝者が対戦相手となる。順当にいけば3枚揃うポルトガルの可能性が高い。グループリーグでは3対1で制しているだけに相性も悪くないはずだ。ここで勝ち上がれば、準決勝はおそらくドイツ(同2位)とヨーロッパ勢との戦いが続く。出足はつまづいた日本だが、終わりよければ全て良しとしたい。そのためにはまず欧州勢を叩いて、37年ぶりのファイナルを目指す。

・女子グループB
日本 3−0 オーストラリア
(平野3−0デデルコ、田代3−0タッパー、森3−0ミャオ・ミャオ)

 既に1位突破を確実にしていた女子は、ここまで4戦に出場したエースの石川佳純(全農)を温存した。それでも平野がストレート勝ちすると、今大会2試合目の出場となる初出場コンビもそれに続いた。田代は第1ゲーム目こそ11−9と競ったが、後は2ゲーム続けて11−2で取った。「1戦目に比べたらいいプレーができました。会場の雰囲気にもなれてきた」と田代は笑顔を見せた。最年少18歳の森は「自分らしいプレーができなかった」というデビュー戦の反省を生かし、11−2、11−5、11−5と完勝。シドニー大会から4大会連続で五輪に出場した経験を持つミャオ・ミャオを寄せ付けなかった。グループリーグ5連勝で15試合負けなし。「想定よりいいでしょう」と村上恭和監督も大満足の出来だ。1日の休養を挟んで、3日の準々決勝に臨む。