北海道胆振東部地震の影響でサッカー日本代表対チリ代表の試合は中止となり、森保ジャパンの初陣は9月11日、パナソニックスタジアム吹田でのコスタリカ代表戦となった。

 

 

 結果は3対0の白星発進。森保一監督は「チーム全体としてアグレッシブに戦えていた」と手応えを口にした。

 

 このゲーム、指揮官はセンターラインにDF槙野智章、MF青山敏弘、MF遠藤航、FW小林悠を配置し、その周囲にMF中島翔哉、MF南野拓実、MF堂安律ら若手ドリブラーを並べた。

 

 攻守両面で精彩を放ったのがボランチの遠藤だ。守っては相手のパスを巧みにカット、こぼれ球もせっせと拾った。

 

 また遠藤は攻撃面でもチームに貢献した。カットしたボールを安易に後ろに下げず、攻撃につなげる場面が目立った。

 

 会場が沸いたのは前半39分だ。ピッチ中央付近で遠藤がボールを持つとゴール前の小林へミドルパス。小林が胸で落としたところに南野が走り込み、右足でボレーシュートを放った。

 

 惜しくもGKにセーブされたが、遠藤の好判断が光ったシーンだった。

 

 後半21分にはチーム2点目となる南野の代表初ゴールをお膳立てした。

 

 このシーンを振り返ろう。ピッチ中央でこぼれ球を拾った遠藤はドリブルで持ち上がり、左サイドに陣取るテクニシャンの中島にボールを預けた。

 

 次の瞬間、遠藤はペナルティーエリア内左にできたスペースにスルスルと走り始めた。中島のスルーパスを受けるためだ。

 

 左足でゴール前に折り返し、南野の左足に最後の仕事をさせた。

「意識しているのは、ワンタッチでタテにボールを入れること。これが自分の良さ」と遠藤。本職のボランチで結果を残した。

 

 森保は現役時代、いぶし銀のボランチとして鳴らした。視野の広さと豊富な運動量で94年アメリカンW杯出場を目指したオフトジャパンにおいて、地味ながらなくてはならない存在だった。

 

 辛口で知られるラモス瑠偉が「アイツ地味だけどハンパないよ。運動量ある。頭いい。1対1に強い。相手のいいところ消す」とベタ褒めしていたことでも、それは明らかだ。

 

 これまでの取材経験上、監督は自らと同じポジションの選手に対する評価は辛くなりがちだ。FW出身の監督ならFW、DF出身の監督ならDFに対する要求水準は高くなる。

 

 森保は遠藤を、どう見ているのか。

「ボランチの位置からゴール前に出てこられるとDFは対応が難しい。遠藤はそれをやってのける能力を持っている」

 

 ロシアW杯ではメンバーに選ばれながら出場機会はゼロ。その悔しさをバネに7月、浦和からベルギー1部シントトロイデンに電撃移籍を果たした。デビュー戦で初ゴールをマークするなど勢いに乗っている。

 

 来年1月にはⅤ奪回を目指すアジア杯が開催される。指揮官は遠藤を自らの「分身」としてとらえているように映る。

 

<この原稿は『サンデー毎日』2018年10月21日号に掲載されたものです>

 


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