ニューヨーク・ヤンキースの田中将大が15日、敵地でのニューヨーク・メッツ戦に先発し、メジャーリーグ移籍後初完投を完封勝利で飾り、無傷の6勝目をあげた。これでレギュラーシーズンは日本時代から34連勝。この日の田中は緩急をうまく使い、凡打の山を築く。無四球とコントロールも安定し、114球で相手打線をシャットアウトした。ナショナルリーグ本拠地でのインターリーグのため、打席にも立った田中は9回の第4打席でセンター前ヒットを放ち、メジャー初安打もマークしている。ヤンキースは4−0で勝利し、連敗を4で止めた。
 単に勝ち星を重ねているだけではない。一戦一戦、レベルアップしていると実感させられる背番号19の完封劇だった。

 メッツはチーム打率はリーグ下位ながら、13日からのヤンキースとのサブウェイシリーズでは2試合連続で2ケタ安打を放ち、当たっていた。乗っている相手に田中は緩いボールを使って翻弄する。時折、カーブを交え、打者のタイミングを外す。立ち上がりはヒットを1本打たれたものの、3番のデイビッド・ライト、4番のカーティス・グランダーソンを打ち取り、ペースをつかんだ。

 2回から4回までは三者凡退。5回は先頭のクリス・ヤングにレフト前ヒットで出塁を許すも、相手の盗塁失敗に助けられ、3人で攻撃を終わらせる。少ない球数でスコアボードに0を重ね、5回までの投球数はわずか56球だった。

 ピンチを迎えたのは3点リードの6回、2死からエリク・ヤングに甘く入ったストレートをセンターに運ばれ、二塁打に。この日、初の長打を打たれる。だが、初回にヒットを許したダニエル・マーフィーをスプリットでファーストゴロに仕留め、得点を与えない。

 すると7回、メッツのクリーンアップに対して圧巻のピッチングを披露する。ライトにはスライダー、グランダーソンにはカーブ、C・ヤングにはストレートと、すべて違う球種で3者連続三振。どのボールでもストライクがとれ、かつ決め球にもできる。田中の調子の良さを象徴するイニングだった。

 8回も三者凡退で球数は101球。最終回、打順が巡ってきた田中はそのままバッターボックスへ入る。バットを振らず、ピッチングに専念しても良い場面ながら、デトロイト・タイガースでは守護神を務めたホセ・バルベルデの2球目を叩いた。打球はセカンドの左を破り、センター前へ。メジャー7打席目での初安打にベンチのデレク・ジーターも驚いたような笑みを浮かべた。

 そして9回裏、メジャー初完投と初完封をかけたマウンドへ。先頭のボビー・アブレイユにこの日、4本目のヒットをセンターへ運ばれたが、連打を許さず、後続を断つ。最後のバッター、ライトはショートライナーに倒れ、キャッチャーのブライアン・マキャンと勝利のハイタッチを交わした。

 ヤンキースは現状、CCサバシアやイバン・ノバらが軒並み故障者リスト入りし、投手陣の台所は火の車だ。そんななか、ひとりで投げ抜いてチームに勝利をもたらせたのは1勝分以上の価値がある。それでも田中は自身のピッチングに納得いかなかったのか、試合中、何度も首をひねるシーンがみられた。結果を出しても高みを見据える右腕は、米国でも進化の途上にある。