平成最後のルヴァンカップを制したのはJ1の湘南ベルマーレだった。湘南にとっては1994年度の天皇杯を制して以来、2つ目のタイトル獲得となった。同時に賞金1億5000万円を手にした。

 

 

 ルヴァン杯の前身はナビスコカップである。第1回大会はJリーグ開幕前の92年秋に行われ、大成功を収めた。これがJリーグの好発進に結びついたと言われている。国立競技場で行われたヴェルディ川崎と清水エスパルスの決勝は5万6000人の大観衆で埋まった。それはサッカー新時代の到来を告げるものだった。

 

 この4月、湘南はパーソナル・トレーニング事業を展開するRIZAPグループの傘下に入った。発表記者会見の席で瀬戸健社長はこう言った。

 

「2020年までにJ1、ルヴァン杯、天皇杯のいずれかのタイトルの獲得をする。これを約束させていただきました。大きな夢と覚悟を持って(湘南のサポートに)取り組ませていただきたいと考えております」

 

 まさか瀬戸社長も1年目から「結果にコミット」できるとは思っていなかったに違いない。

 

 決勝の相手は2001年以来、2度目の大会制覇を狙う横浜F・マリノス。埼玉スタジアムでの試合ながら4万4242人の観客が詰めかけた。

 

 試合は序盤から湘南がペースを掴んだ。積極的にプレスをかけ、頻繁に上下動を繰り返すのが“湘南スタイル”だ。

 

 待望の先取点は前半36分。MF杉岡大暉の左足から生まれた。ズドンと音のするようなミドルシュートだった。

 

 後半はビハインドを負った横浜に押され気味だったが、豊富な運動量と体を張った守備で虎の子の1点を守り切った。

 

 チームの指揮を執る曺貴裁監督は今季7シーズン目。Jリーグの現役監督では一番の長期政権だ。49歳は頬を緩めながら試合をこう振り返った。

 

「いつもは相手にボールを渡してから守備をする展開が多かった。今日は自分たちで卵を扱うようにボールをつなぎ、チャンスを作った。試合に出た選手、出ていない選手が一緒に切磋琢磨してやってきたことが結果につながり嬉しい」

 

 曺監督の持ち味は誰に対してもハードワークを求める熱血指導だ。

 

 今季、10年間在籍した浦和レッズから移籍してきたMF梅崎司は、こう語っていた。

「練習はどのクラブでも経験したことがないくらい厳しい。常に空気がピリッとしていて試合以上の緊張感がある。これは曺監督だから作り出せる雰囲気だと思います。よく“高校サッカーみたい”と言われますが、プロの世界でこの雰囲気を作り出せる監督は他にいないと思います」

 

 湘南の前身・藤和不動産サッカー部が創設されたのが1968年。クラブにとっては50周年の節目の年での戴冠となった。

 

 RIZAPグループはクラブに3年間で10億円の出資を決めている。残る2つのタイトル獲得に向け、バックアップ態勢をさらに充実させる方針である。

 

<この原稿は『サンデー毎日』2018年12月2日号に掲載されたものです>

 


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