リポビタンDチャレンジカップ2014が30日、東京・秩父宮ラグビー場で行われ、日本代表(IRBランキング13位)はサモア代表(同8位)に33−14で勝利した。日本は立ち上がりに先制トライを許したが、WTB藤田慶和の2トライで逆転に成功。FB五郎丸歩の2本のPGもあり、20−7とリードして試合を折り返す。後半に入って一時、点差を詰められたが、30分にはこの日、初めてCTBに抜擢された松島幸太朗のトライで突き放した。サモアとは来年のイングランドW杯でグループリーグでの対戦が決まっており、前哨戦を制した。
(写真:前半11分にトライを決め、ラストパスを出した五郎丸(背番号15)と喜ぶ藤田)
 経験の浅い若手が多かったとはいえ、ランキング上位にきっちりと勝利を収めた。
 快勝の原動力となったのはジャパンの若き戦士たちだ。ミスからカウンターで先制トライを与えていた前半11分、背番号11が中央から右へサモア陣内を突破する。21歳の松島だ。

 父はジンバブエ人で南アフリカ生まれ。桐蔭学園高では花園制覇に貢献し、昨年まで南アフリカのシャークスで腕を磨いてきた。本職はFB。だが、パワーとスピードを兼ね備えたプレースタイルに、エディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)が「直感」でCTBに起用した。

 このチャンスメイクをトライにつなげたのが、20歳の藤田だ。「(松島が)ゲインしてくれて走りやすかった」と右のタッチライン際を駆け抜けた。五郎丸のコンバージョンも決まって7−7の同点。さらに15分にはPGで10−7と勝ち越しに成功する。

 そして23分、敵陣内での左ラインアウトから、この日、代表キャップが日本最多の82となったLO大野均らがモールで押し込み、相手の守りを乱す。そこから大きく逆方向に振って、最後はまたも藤田が右隅でボールをゴール内で押さえた。17−7。前半終了間際にもPGで20−7とリードを広げ、日本が主導権をつかんだ。

 ただ、後半は開始直後にトライを返され、9点差に。ハンドリングエラーもあって、なかなか攻めきれない時間帯が続く。停滞気味のジャパンにスイッチを入れたのが松島だった。

 30分、相手陣内に攻め入りながらターンオーバーされたのをすぐに奪い返し、右サイドをスルスルと突破。サモアのディフェンスを1人、2人、3人とかわしてトライまで持ち込んだ。コンバージョンも決まって33−14。試合を決定づける得点が入った。

 抜擢に応える働きぶりに、試合後、ジョーンズHCは「いいプレーを発揮した。今後が楽しみ」と目を細めた。試合後の会見では松島に関する矢継ぎ早の質問を「まだ1試合しかプレーしていない(笑)」と制しながらも、「ラインブレイクする能力がある。13番(CTB)として欠かせない」とジャパンの新たな武器に手応えを感じているようだった。
(写真:松島は「相手は(体格が)でかいチームが多い。スペースを見つけていきたい」と貪欲だった)

 サモアのスティーブン・ベイサムHCは「うまくまとまってチームとしてプレーしていて一貫性があり、それを80分間貫いた。2年前(の対戦)と比べたら全く違うチームになっている」とジャパンの進化を認めた。屈強なサモア軍団に対しても当たり負けせず、ミスはあったものの、相手の突進を鋭いタックルで止めた。後半の勝負どころでも選手たちの動きは落ちず、流れを渡さなかった。

 サモアに勝って、テストマッチでは昨年から7連勝。これは日本代表の新記録だ。しかし、ジョーンズHCは「トライを5、6回逃したのは残念。今日のパフォーマンスはまぁまぁ」と結果だけに満足はしていない。

 W杯までテストマッチは残り15試合の予定だ。6月にはカナダでのパシフィックネーションズカップに参戦し、カナダ、アメリカと対戦する。目標とするW杯決勝トーナメント進出へ、単に勝つだけでなく内容も追い求める戦いが続いていく。