愛媛県スポーツ界にとって2018年は「新」がキーワードだった。17年秋、第72回国民体育大会「愛顔つなぐえひめ国体」を大成功のうちに終え、18年は愛媛県のスポーツ界が「アフターえひめ国体」をスローガンとして、新たな一歩を踏み出した年である。その1年を振り返ろう。


 愛媛県スポーツ協会は6月、中村時広県知事を新会長に選出。民間と行政が一体になってスポーツ立県に向けて本格的に動き出した。それに先駆け4月には県にスポーツ・文化部が新設されており、県が掲げてきたスポーツの定着と振興にこれまで以上に力を入れていくことになった。新体制の下で臨んだ福井国体は、目標としていた天皇杯13位以内をクリアする天皇杯12位という好成績を残している。

 

 愛媛県選手団の総監督を務めた寺尾和祝スポーツ協会理事は、福井国体を振り返ってこう語った。
「目標とした天皇杯13位以内を達成できたのは、選手一人一人が日頃の練習の成果を発揮したことはもちろん、各競技団体が『地元開催のえひめ国体が終わりではない』という意識を強く持って強化に励んだ結果だと思う。天皇杯12位から14位までの点差は2.5ポイントであり、1選手の入賞によって順位が変動するという僅差であったことから、選手たちが1点でも多く得点を重ねた結果が12位という成果に表れたのだと思います」

 

 ボート部の武田大作は愛媛県ボート協会の強化部長を兼務しながら、今季は選手として新たな取り組みを見せた。シーズン開幕直後、こう語っていた。
「ボートの成年選手は地元国体を区切りにして引退した選手も多かった。でも、『まだやり残したことがある!』と現役を続ける選手も多く、実は私もその1人。地元国体で満足な結果を残せなかったことから、今年は専属のトレーナーをつけて、トレーニング方法やメニューも変更しました。これまでヒザの痛みにはテーピングで対処していたものを、今年からは痛みが出ないようにするために内転筋のトレーニングを導入しました。その結果、痛みが出ることはなくなりました」

 

 新トレーニングの成果もありシーズン序盤、第71回朝日レガッタ一般男子シングルスカルで準優勝を果たし、第40回全日本軽量級選手権大会男子シングルスカルでも準優勝を飾った。強化部長としても7月に行われた四国ブロック大会で12種目すべてで国体出場枠を確保し、重責を果たした。

 

「少年男子は各学校の先生方の指導が優れているので、国体本番で必ず結果を残してくれるでしょう」という武田の言葉通り、福井国体で少年男子は舵手つきクォドルプル優勝など愛媛県勢の躍進に貢献している。

 

 ボート大国・福井を向こうに回しての快挙に武田は、「ボート競技の強化が順調に進んだ背景には、えひめ国体のレガシーが役立っている」と言って、こう続けた。
「国体の地元開催が決まってから、玉川湖ボートコースの設備改修など様々なバックアップを受けました。78艇収納の玉川艇庫も完成し、また桟橋が新しくなって船の出し入れがしやすくなり、練習時のストレスが減った。強化用の船の他、伴走指導ができる双胴艇も導入されるなど練習環境が整いました」

 

 アフターえひめ国体の成果を福井国体で示したボート競技には、これからも国体レガシーを活用してさらなる強化と選手層の拡大が期待されている。

 

「新」ということでいえば、ダイキ弓道部は5月に玉木里奈を新主将に、そして10月からは弓道部OBの原田喜美子を新監督に迎えて、新たな一歩を踏み出した。新監督の下で臨んだ10月の全日本実業団弓道大会で、団体女子の部(産業別)で優勝を果たし、これ以上ないスタートを切っている。

 

 福井国体はブロック予選で敗れて出場は果たせなかったが、新弓道部の目標は19年の国体代表選出と出場、そしてそこでの上位入賞である。

 

 9月にはビーチバレーの新たな取り組みとして、松山市内で「ジャパンビーチバレーボールツアー2018」第8戦が行われた。会場は松山城の天守閣を見上げる城山公園に砂を運び込んで作られた特設コート。ビーチバレーの普及、そして県内での強化のためにも絶好のアピールの場となった。

 

 福井国体のビーチバレーでも愛媛県勢は活躍を見せた。男子で長谷川徳海/庄司憲右ペアが連覇を果たし、女子の村上礼華/松尾優美ペアが5位入賞。愛媛県のビーチバレーには追い風が吹いている状況である。

 

 その他、福井国体では山岳のリードで少年男子が愛媛県勢として初優勝を果たした。関係者の多くは、西条市に国際レベルの石鎚クライミングパークSAIJOが完成してから選手レベルがグンと上がった、と語っている。

 

 スポーツ立県を目指す愛媛県にとって来る19年は、東京オリンピック・パラリンピックを控え重要な年となる。各競技団体のさらなる強化と躍進に期待したい。

 

(取材・文/SC編集部・西崎)


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