2019年を迎え愛媛県スポーツ界は秋には茨城国体、そして翌20年の東京オリンピックを控え、県、スポーツ協会、各競技団体が一体となって強化、普及に力を入れている。


 一昨年、地元開催の「えひめ国体」では天皇杯2位という過去最高の成績を残し、翌18年の福井国体では目標としていた13位以内をクリアする天皇杯12位。では、今年の茨城国体の目標は? 愛媛県スポーツ協会の寺尾和祝常務に話を聞いた。寺尾常務は昨年の福井国体で県選手団総監督を務めている。

 

「まず、昨年の福井国体では国体前のブロック大会で有力な団体競技が敗退するなど苦戦が予想されました。その中で目標をクリアする天皇杯12位を獲得できたのは、出場選手たちの奮闘のおかげです。それらを踏まえ今秋の茨城国体の目標は10位台、すなわち19位以内としました」

 

 昨年の県選手団の活躍からすれば10位以内、ひと桁順位を目標としても良さそうだが。寺尾常務はその理由をこう説明する。

 

「10位台という数値は、過去の国体開催県の翌年以降の成績を分析して出した目標であります。というのも地元国体で好成績を残した開催県は翌年は競技力が維持されていて上位入賞を果たします。ですが、それが2年後、3年後となるとガクンと成績がダウンする傾向にあります。スポーツ立県を目指す愛媛県は、地元国体後もコンスタントに上位入賞を果たせるように、そしてさらに上を目指せるように、競技力の維持・向上を目標としています。10位台という目標も決して低い数字ではなく、現実的に県スポーツの競技力をコンスタントに維持、そして向上させるために設定した現実的なものです。今年の茨城国体、そして来年の鹿児島国体でも、愛媛県は近年と変わらず高い競技力を発揮できれば、と考えております」

 

 県スポーツの競技力向上、そして愛媛県のスポーツ立県に活用されるのが国体のために新設や整備された競技施設だ。いわゆる「国体レガシー」と呼ばれるこれらが愛媛県スポーツ界の大きな財産となっている。そうした施設を用いて「一町一技」、町や学校でひとつ得意なスポーツを定着させるという取り組みも愛媛県ならではのスポーツ振興策である。

 

「一町一技についても新年度になっても継続してサポートしていくことになります。また充実した県内の競技施設はオリンピックに向けた海外選手の事前キャンプ地としても注目されています。西条市にある石鎚クライミングパークは全日本選手の強化施設になった他、ヨーロッパなどの山岳強豪国もキャンプ地候補として視察に訪れるなど国際的認知度も上がっています。一昨年に開催した地元国体は、未来につながる大会だったのだな、と実感しています」

 

 スポーツ協会では地元国体開催後、昨年1年間で県民のスポーツに対する意識にも変化があったと捉えている。

 

「地元国体ということでスポーツを間近に感じた県民の皆さんが、新たにスポーツに興味を持ってくれているという流れは協会でも強く感じました。今はそうした県民の気運を後押しするために協会も力を尽くし、県内にスポーツの普及、そして将来に向けた強化に努めていきたいと思っています」

 

 スポーツ立県を旗印にする愛媛県では、生涯にわたってスポーツを「する」「見る」「応援する」「支援する」ことができる環境整備を進めている。一昨年の国体開催を土台として愛媛県のスポーツ界は、19年、そして東京五輪イヤーの20年に向けて着実に成長を遂げようとしている。

 

 

(取材・文/SC編集部・西崎)


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