団体世界一メンバーが、個人でも頂点狙う! 〜ヨネックスオープンジャパン〜

(写真:田児<右>にとって憧れであり超えなくてはいけない存在のリー・チョンウェイ)
世界一の凱旋試合だ。5月、インド・ニューデリーで行われた国・地域別対抗の男子団体戦トマス杯で優勝した日本メンバーが東京に集う。ヨネックスオープンは世界バドミントン連盟(BWF)公認のスーパーシリーズ(SS)。五輪、世界選手権に次ぐグレードの大会だ。団体世界一の栄冠を勝ち取った日本代表の主力たちが、今回は個人戦で頂点を目指す。
男子シングルスのエース・田児は、「思い出深い大会」でのリベンジに燃える。日本一を決める全日本総合では6連覇中。日本では抜きんでた存在だが、まだSSのタイトルは手にしていない。昨年の決勝ではリー・チョンウェイに敗れ、準優勝。同種目での日本人初優勝を逃した。BWF世界ランキング1位のリー・チョンウェイに対しては、トマス杯でも敗れており、通算戦績は1勝16敗と大きく負け越している。この高い壁を破らないことには初タイトルは見えてこないだろう。しかし、田児にとってリー・チョンウェイは偉大過ぎる存在である。「自分にとっても、ジュニアの子にとっても、彼はヒーローでレジェンド」。このバドミントン界のスーパースター超えは容易いことではない。
「大事な大会のひとつ。タイトルを守りたい」とディフェンディングチャンピオンとして臨むリー・チョンウェイは、史上最多の5度目の優勝がかかっている。その先は9月のアジア競技大会(韓国・仁川)に照準を置く。「それが終われば、最後のオリンピックに参加できるよう頑張る」と話すように、彼の現役生活もそう長くはない。田児も「あと何回(対戦)できるか」と1戦1戦が貴重な経験となる。そのためにも今大会は準決勝まで勝ち上がらなくては対戦できない。「まずはそこまでしっかりとしたパフォーマンスを見せないと」と、第4シードに入った田児も気を引き締める。“レジェンド”と対戦するためには、各国のエース級を倒していかなければならない。「自分がリー・チョンウェイになるのは無理。結果で示していく」と田児。天才と謳われた日本のエースも24歳となった。そろそろ国際大会のタイトルが欲しいところだ。

(写真:トマス杯で5勝の桃田<左>と4勝の上田)
ともに第3シードに入った男女のエースダブルスでもSS初制覇に挑む。男子ダブルスの早川、遠藤は第1ダブルスとして世界一に貢献したペア。早川は主将も務め、チームの盛り上げ役も買った。全日本総合は2連覇し、伝統ある全英選手権では2年連続の準優勝を果たしている。現在の早川、遠藤組はBWF世界ランキングで3位につけるが、今大会にはトップ2のペアも参戦している。遠藤は「ドローが厳しい」と語れば、早川は「準々決勝、準決勝といけるように頑張りたい」と、その口ぶりはいささか弱気にも映る。昨年末は「(優勝するために)足りないものを模索中」と遠藤は語っていたが、ここで勝ち切ることができれば、一気にブレークする可能性は秘めている。

(写真:ユーバー杯ではデンマークペア<左>に2勝した“タカマツ”)

(写真:予選2試合をこなしてすぐ会見に出席した山口)
昨年は山口という新星が誕生したヨネックスオープン。今年もニューヒイン、あるいはヒーローの出現はあるのか。日本はトマス杯で優勝、ユーバー杯で準優勝と、機運は乗っている。団体戦で勢いづいた今、個人戦でも世界の頂きへと到達したい。リオ五輪でメダルを狙うならば、ここで立ち止まるわけにはいかない。
(文・写真/杉浦泰介)