プロ野球の現役選手が日本外国特派員協会で記者会見するのは異例である。
その席で「侍ジャパン」の4番、横浜DeNAの筒香嘉智は少年野球や高校野球の現場での「勝利至上主義」の弊害を指摘した。
アマチュア野球の関係者の中には、筒香の指摘を苦々しい思いで聞いていた者もいたのではないか。「新聞社が主催しているので、現状が良くないと思っている方がたくさんいても、なかなか思いを伝えきれていない」
筒香の問題提起は新聞社が主催する大会のあり方にも及んだ。
筒香の発言に対しては賛否両論あるようだが、概ね正論だろう。
<成長過程の子供たちに、「勝つこと」はそれほど重要でしょうか。いや、むしろ弊害になる場合さえある、と僕は思います。勝つことが絶対的な目標とされる「勝利至上主義」は、いま様々なスポーツの現場で問題視されています。勝利至上主義の弊害の一つは、野球が子供たちのためではなく、指導者の実績や功績、関係者や親など大人たちの満足のためのものになってしまいがちな点です>(自著『空に向かってかっ飛ばせ!未来のアスリートたちへ』文藝春秋)
少年野球や高校野球の現場においてアスリート・ファーストの意識は低く、ともすると指導者ファーストになっているのではないか。自らがそうした現場を経験しているだけに筒香の言葉には重みがある。
「使えないんだよ!」
「帰れ!」
指導者の中には、未だに子供たちに向かってこんな罵声を浴びせかける者がいる、という。
それに対しても、筒香は「選手を委縮させるだけ」と手厳しい批判を行なっていた。
<勝つためには、どうしても監督は選手を、自分の言う通りに動く駒として育てようとします。その指導に従わなければ監督や親から怒られるので、選手も大人たちの顔色を見てプレーをすることになり、自分で答えを見つけ出そうとしなくなります>(同前)
現役引退後は高野連会長でもやってもらいたい。
<この原稿は2019年2月18日号『週刊大衆』に掲載されたものです>
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