4500超の応募作から大賞が決定! ~第17回えひめスポーツ俳句大賞~
第17回えひめスポーツ俳句大賞の受賞作が発表され、去る3月24日に表彰式が開催された。今回は全国47都道府県から計4683作品(一般の部3243句、ジュニアの部1346句、ハイブリッド部門94点)の応募があり、俳句部門(一般、ジュニア)、俳句と写真を組み合わせたハイブリッド部門から大賞、入賞作が選ばれた。
えひめスポーツ俳句大賞は2002年に、愛媛県ゆかりの俳人・正岡子規の野球殿堂入りを記念してスタートした。今回は国体競技種目などの40区分に加えて、昨夏に100回を迎えた夏の甲子園にちなみ「高校野球」、野球王国愛媛の発展や地域活性化のために開催されている「愛・野球博」の2つにまつわる作品も併せて募集した。表彰式で主催者の愛媛県スポーツ協会・中村時広会長はこう式辞を述べている。
「愛媛が誇る俳人・正岡子規の野球殿堂入りを記念して創設された「えひめスポーツ俳句大賞」は、スポーツをテーマとした俳句や写真を通じ、輝く選手の姿やそれぞれの競技の魅力等を発信することで、スポーツファンの拡大、新たな芸術文化の創造を目指しているものです。全国各地から前回を大きく上回る応募がありました。いずれも感性豊かな力作ぞろいであり、審査員の方々におかれましては、選考に大変苦労されたのではないかと存じます。たくさんのすばらしい作品をお寄せいただいた応募者の皆様に深く感謝いたしますとともに、見事受賞されました方々には、心からお祝いを申し上げます。
さて、「えひめ国体・えひめ大会」から一年半が経とうとしておりますが、県内では、国体の競技会場となった施設を中心に数多くの競技会が開かれており、東京オリンピック・パラリンピックを来年にひかえる中、県民の皆様のスポーツに対する関心が大いに高まっているものと存じます。
本協会では、こうした機運を本県スポーツの一層の発展につなげるべく、国体レガシーを生かした競技力の向上、生涯スポーツの普及など、さまざまなスポーツ振興策を展開していきたいと考えておりますので、皆様方には、引き続き、ご理解、ご支援を賜りますようお願い申し上げます」
審査委員長を努めた松本勇二・愛媛県俳句協会会長の講評は以下の通り。
「今回は従来の40種目に高校野球(全国高校野球選手権大会第百回記念)と愛・野球博の二つのジャンルを加えて広く全国から募集したところ、全県から前年を25%上回る応募がありました。
一般の部の大賞は「スナッチの先に皇帝ダリア笑む」(京都府・白瀬美智男さん)に決まりました。重量挙げの練習風景かと思われますが、全力でバーベルを差し上げた選手の目に飛び込んできたのが皇帝ダリアという展開が新鮮でした。ダリアを微笑ませたところも秀逸です。
ジュニアの部の大賞は「ディフェンスは足から先に風光る」(愛媛県・野村颯万さん)です。バスケットの試合中か練習風景でしょうか。「ディフェンスは手からじゃなく足から踏み出すのですよ!」と何度もコーチに言われている作者です。季語「風光る」で、早春の光に包まれたまぶしい景色が見えてきます。
ハイブリッド部門の大賞は「飛魚かトライアスロン波を切る」(神奈川県・柴山洋さん)です。トライアスロンの最初の種目である水泳の写真は、無数の泳者が水しぶきを立てながら一心に泳いでいるもので圧巻です。俳句は泳者をトビウオに見立てて成功しています。
高校野球部門一般の部では「去り難き空の広さや甲子園」(京都府・小見伸雄さん)。ジュニアの部では「二回裏楽器に映る夏の空」(埼玉県・中山友里奈さん)が特別賞を受賞しました。甲子園球場を勝者として去るのは1チームのみです。ここでは敗者と取らせていただきました。抜けるような空は球児にとって永遠の記憶となるでしょう。
ジュニアの中山さんは視点に冴えがありました。応援団の管楽器に青空が映っているところを活写しています。愛・野球博の特別賞は一般・ジュニアの部ともに季語がとてもよく機能していて素晴らしい作品ばかりでした。
次回も新鮮で力感・スピード感あふれる作品を期待いたしております」
第17回えひめスポーツ俳句大賞の大賞と主な金銀銅賞受賞作品は以下のとおり。
俳句部門一般大賞
スナッチの先に皇帝ダリア笑む
京都府 白瀬美智男
俳句部門ジュニア大賞
ディフェンスは足から先に風光る
愛媛県 野村颯万
ハイブリッド部門大賞
飛魚かトライアスロン波を切る
神奈川県 柴山洋
俳句部門一般
金賞
とびっきり笑顔のパスへ春嵐
愛媛県 薦田のり子
巴投げ決めて礼する初稽古
神奈川県 阿部文彦
ハーケンの響き雷鳥走る尾根
神奈川県 貞住みえこ
飛越して馬体しなやか春の泥
熊本県 貝田ひでを
銀賞
ラガー等の慟哭止まぬノーサイド
愛知県 岩田勇
ラケットを振るたび私に夏が来る
愛媛県 足立絵莉
シャトル追いコートを鹿のように跳ぶ
東京都 野村陽子
剣道場まで片蔭を行くふたり
愛媛県 志摩梓
的射抜く太き腕に冬日燦
愛媛県 片山博文
銅賞
マラソンの白靴軽くスタートす
愛媛県 清水揖子
汗光りノックアウトの声響く
岩手県 戸来正裕
ペナルティキックに汗の手をつなぐ
東京都 野上卓
永遠のラリーの果ての雲の峰
兵庫県 大江美典
燃え残る髷を切らるる力士かな
愛媛県 清家弘
俳句部門ジュニア
金賞
ゴーグルの日焼けのあとを見せあいこ
愛媛県 中村紬
秋の虹つないでつないで取る一点
愛媛県 渡邊亜紀
ビュンビュンと月光あびて竹刀ふる
愛媛県 村上千紘
はじめてのセカンドまもる冬うらら
愛媛県 堀田瀬凪
銀賞
跳んでいく背中に翼生えた秋
東京都 魚地妃夏
クロールで一人ぬけたよ秋の海
愛媛県 吉井智咲
PKせんきめろきめろとせみがなく
愛媛県 一木輝大
姉と打つシャトルをすいこむ秋の空
愛媛県 小倉優奈
赤い手ぶくろ青い手ぶくろまうリンク
愛媛県 原田泰輔
銅賞
しぶき上げ風の道行くボートかな
埼玉県 権瓶希空
スパイクを防ぎきれるか蝸牛
埼玉県 樋口大斗
あと一歩シャトルのコルクに追い越され
愛媛県 横山秀哉
休けいでめんつけたままのかぜすずし
愛媛県 河内絵暖
うんていに力をかける秋の朝
東京都 友田大心
ハイブリッド部門
金賞
熱戦にパワーあふれる夏の雲
愛媛県 鳴滝久照
炎天下皆が見つめる白い球
愛媛県 中田悠友
銀賞
夏空に輝く応援チアガール
愛媛県 中浦涼羽
銅賞
渾身の力と力風光る
千葉県 小田中準一
駆け抜ける夏空の下ゴールイン
愛媛県 小林美琴
夏の空甲子園まであと一歩
愛媛県 白石美結
高校野球全国高校野球選手権大会第100回記念特別賞
一般
去り難き空の広さや甲子園
京都府 小見伸雄
ジュニア
二回裏楽器に映る夏の空
埼玉県 中山友里奈
ハイブリッド
金メダル重さを知った炎天下
愛媛県 中田悠友
愛・野球博
特別賞・一般
三振を恐れず振って秋高し
神奈川県 竹澤聡
夏木立二死満塁の声尖る
愛媛県 玉井美智子
逆転の一打伸びゆく秋の空
鹿児島県 肥後幸男
ナイターや時折首を振る投手
愛媛県 鴨池美月
円陣を出でて炎暑の打者となる
岩手県 板宮成悦
特別賞・ジュニア
夏休み打って走ってあわのようにねる
愛媛県 合田有琉
ホームランすいこむ夏空大かん声
愛媛県 倉瀬弘晃
甲子園手にあせにぎってみた試合
愛媛県 福岡照太
背番号もらえない夏涙ぬぐう
宮城県 舩山鈴里
プロ野球開まく戦だサクラまう
東京都 江原聖悟