5年後に日本で開催されるラグビーワールドカップ2019の組織委員会の理事会が29日、都内で開かれ、20年に開かれる東京五輪・パラリンピックの組織委員会と、ボランティアの確保や会場警備などの実務面で連携を図る連絡会議を設置することを決めた。月1回ペースで集まって情報交換し、大会運営上での必要な部分に関して協働する。組織委の嶋津昭事務総長は「定期的に協議をして何をするか内容を詰めていくことで全体のコスト節約や、人的資源の効果的活用につながる」と語った。
 2019年と2020年、2年連続でビッグスポーツイベントを開くメリットを生かすのが連絡会議の設置だ。19年のW杯、8万人収容の新国立競技場で行われる決勝では4万人の外国人が来場すると組織委では見込んでいる。多国籍で多言語の観客を受け入れ、円滑に試合を進めるには会場警備やボランティアの役割は欠かせない。

 大会に合わせて外国人を含む多数の来場者が訪れる状況は五輪やパラリンピックも同様だ。そこで今後、連絡会議では19年W杯での体験を20年五輪・パラリンピックに生かすべく、共同でボランティアを採用するといったアイデアを検討する。

 また15年のイングランドW杯ではロンドンに19年のW杯日本開催をアピールするブースを設置する。これは5月に安倍晋三首相が訪英した際、英国のデービッド・キャメロン首相と、12年のロンドン五輪・パラリンピックや15年イングランドW杯での経験やノウハウを共有することで一致しており、その一環の活動となる。ブースは組織委と関係省庁(国土交通省、文部科学省、経済産業省、農林水産省)、来年3月に決定する試合開催地が一緒になって設ける予定で、予算規模は億単位になる見通しだ。嶋津事務総長は「2015年大会から2019年大会の成功につなげていきたい」と現地でPRする狙いを明かした。

 なお、この日の理事会では御手洗冨士夫会長(日本経団連名誉会長)、竹田恆和副会長(日本オリンピック委員会会長)、中村芳夫副会長(日本経団連顧問)、森喜朗副会長(日本ラグビー協会会長)の再任が決まった。昨年9月から組織委の暫定COO(最高執行責任者)を務めていたマット・ キャロル氏は退任する。

 キャロル氏は03年のオーストラリアW杯にゼネラルマネジャーで携わった実績を持ち、暫定COOとして大会準備のプランニングなどで組織委を牽引してきた。約11カ月の職務を振り返り、キャロル氏は「現状の準備段階はあるべき位置にいる」と評価。「日本は誰に対してもウェルカムの姿勢を持ち、食べ物が豊かでビールがおいしい(笑)。この3つがあればW杯は成功する」とジョーク交じりで日本での大会実施に問題がないことを強調した。今後の課題としてはチケット販売を挙げ、「ラグビーそのものの認知度や好感度を上げることが2019年のプロモーションにつながっていく」と国内でラグビー熱をより高めることが重要との認識を示した。

 7月29日(日本時間)はちょうど5年前、2019年W杯の日本開催が決定した日にあたる。それから5年が経過し、本番までは残り5年。これまでのW杯とは異なり、10年という長い準備期間が与えられた日本での大会を確実に成功させるべく作業が進んでいく。