二宮清純: この人と飲みたい、ゲストは引き続き巨人、西武でリリーフとして活躍された鹿取義隆さんです。
鹿取義隆 よろしくお願いします。


二宮: 雲海酒造の『木挽BLUE』を飲みながらの野球談義で盛り上がっていますが、鹿取さんもおかわりはロックですか。
鹿取 お酒は強い方ではありませんが、この『木挽BLUE』はロックが合いますね。チビリチビリと飲んでも香りが良くて、じっくりと楽しめます。


二宮: タフネス右腕で鳴らした鹿取さんだけに、酒の席でも長丁場はお得意ですね。
鹿取 大学時代、そしてプロに入ってからも、お酒の強い先輩たちと一緒に過ごしていたので少しは鍛えられたのかもしれません。


二宮: さすが、それでこそ高知の人間ですよ。
鹿取 アハハハ。では、おかわりをいただきましょう。うん、グラスから漂う香りが鼻をくすぐって何杯でもいけそうです。

 

 

 

 


 ブライアントの衝撃

 

二宮: 鹿取さんは1979年から巨人で11年間、90年からは西武で8年間、プロで活躍されました。19年間、何人もの強打者と対戦し、その中で一番、怖かったバッターは?
鹿取 チームのピンチに登板していたので、みんな怖いバッターでした(笑)。

 

二宮: 当時、セ・リーグの強打者といえば広島の山本浩二さん、阪神の掛布雅之さん、ヤクルトの若松勉さん、中日の谷沢健一さんなどの名前が浮かびます。
鹿取 ゲーム終盤なのでホームランさえ打たれなければ、ヒットならオッケーというスタンスでしたね。低めにボールを集めて、内角外角と揺さぶって、なんとか打ち取っていました。

 

二宮: 一番、打たれたのは?
鹿取 山本浩二さんは対戦していて本当に怖いバッターでした。思い切り体を開いて空振りしたから「内角狙いか」と思ってアウトコースに放ったら、それを踏み込んでバカーンとホームランにされたなんてことも。

 

二宮: 山本さんはわざと空振りして「エサをまく」という駆け引きが得意でしたね。
鹿取 何度か痛い目に遭いましたよ。

 

二宮: 鹿取さんは90年に西岡良洋さんとのトレードで西武に移籍しました。パ・リーグにも猛者がいたでしょう?
鹿取 いましたねー。特に近鉄のラルフ・ブライアントが強烈でした。

 

二宮: 89年10月12日の西武対近鉄のダブルヘッダーで4打数連続ホームランを放ったブライアントですね。あのときは第1試合で同点満塁弾、勝ち越しソロを含む3本塁打、第2試合でもソロホームランと、ブライアントのバットが西武のリーグ5連覇を阻止した格好です。

鹿取 もうパワーがハンパじゃなかった。打球も強烈でしたよ。ある試合でブライアントにピッチャー返しを打たれたんですが、ボールが股間を通り抜けたときに風を感じました。

 

二宮: アハハ。って、風を感じるって相当です。当たっていたらシャレになりません。

鹿取 「来たっ」と思ってバッとグラブを出したけど間に合わず、それで股の下をズバーッと。ピッチャーライナーで文字通り"縮み上がった"のは、後にも先にもあのときだけですよ。

 

二宮: ご無事で何よりでした。西武時代はオリックスのイチロー選手とも対戦していますね。
鹿取 登録名がイチローになる前、鈴木君の時代から対戦していますが、まあその頃から非凡でしたね。

 

二宮: どんなところに天賦の才を?
鹿取 彼と初めて対戦したとき、ピッチャーライナーで打ち取ったんですけど、そのときにバットのしなりがすごかった。

 

二宮: しなり、ですか?
鹿取 バットがしなってヘッドが後から遅れて来る感じで、「あ、今打ったんだ」みたいな。それで一瞬遅れて打球がボーンッて飛んで来る。

 

二宮: イチローと対戦したピッチャーは皆、インパクトまでなかなかヘッドが出てこないと言いますね。
鹿取 そうです。「なんだ、こいつ。体が細いのにただ者じゃないな」という感じでしたよ。

 

 イチローはスーパーカー

 

二宮: イチローへの攻め方は?
鹿取 ありません(笑)。真ん中に投げるしかない。

 

二宮: 真ん中ですかッ!?
鹿取 ど真ん中に投げてイチローのミス待ちですよ。まず初球はアウトサイドからの変化球でワンストライクはとれる。それは打ってこないというか、余裕で見逃されて、その後はどこに投げてもうまく打つんですよ。

 

二宮: つまり弱点は見つからなかった、と?
鹿取 うーん、見当たらなかったですね。

 

二宮: インハイで空振りさせるとか?
鹿取 いや、イチローは振らないんですよ。見切るんです。もう真ん中に投げてイチローが「どっちに打とうかな」と迷い、打ち損じてもらうしかなかった。

 

二宮: 別格だったんですね。
鹿取 まったく規格外ですよ、我々が普通車ならイチローはスーパーカー。たとえばファーストゴロを打たせたら、ピッチャーがベースカバーに走りますが、イチローはそれを抜くわけですよ。

 

二宮: 内野安打も多かったですもんね。
鹿取 右方向にゴロが飛んだらピッチャーは反射的にカバーに走る。それを打者走者のイチローが抜くんですからね。「え、マジかよ」とびっくりするほどの速さでした。

 

二宮: 打って良し、走って良しだからどうしようもない。
鹿取 お手上げでした。そういえば、僕、イチローの連続イニング出場をストップさせているんですよ。

 

二宮: え、デッドボールとか?
鹿取 はい。忘れもしません。イチローは94年6月24日から96年4月11日までフルイニング出場を続けていたんですが、4月12日、僕がヒザにぶつけて記録が途絶えちゃったんですよ。

 

二宮: あっちゃー、ですね。
鹿取 あっちゃっちゃー、ですよ(笑)。膝元に投げ込んだスライダーがちょっと力が入り過ぎちゃってねえ……。家に帰ったら、子供に叱られましたよ。「お父さん、イチローの記録止めた」って。

 

二宮: アハハハ。「パパ、ひどい」と?
鹿取 そうなんですよ(笑)。こっちはそんなの続いているとは知らないから、申し訳なかったな、と……。

 

二宮: それにしても鹿取さんと対戦していたイチロー選手が、この3月まで現役だったというのもすごいですね。
鹿取 そのあたりも規格外ですよ。3月の試合は全部見に行きました。最後はイチローがハグしてくれましたよ。

 

二宮: ぶつけられたことも忘れて(笑)。
鹿取 「あのときはよくも……」なんてこともなく、ね(笑)。

 

二宮: 鹿取さんの現役時代は20年以上前ですが、当時と比べるとリリーフの地位も変わりましたね。
鹿取 抑えはもちろんですが、中継ぎにもホールドという評価基準ができてモチベーションにもなっているし、年俸も上がってきています。

 

二宮: 鹿取さんの年俸は?
鹿取 先発投手よりも安かったですが、僕らのころは周りもそんなに高年俸ではなかったですからね。阪神の福間納さんなども中継ぎで頑張っていて、そのあたりから随分とリリーフ陣の評価の改善が進んだと思います。

 

 連投より辛いこと

 

二宮: 今のリリーフは1イニング限定ですが、鹿取さんの時代はいわゆる"イニングまたぎ"は当たり前でした。
鹿取 2イニングとか平気で投げていました。広島で抑えをやっていた江夏豊さんだって7回から登板したりしてましたからね。時代が変わったということでしょうが、イニングまたぎも連投も僕はまったく苦じゃなかった。

 

二宮: では一番、辛かったのは?
鹿取 打たれた後、なかなか登板機会がないことでした。リベンジのチャンスがないと、ずっと引きずってしまいますから……。

 

二宮: 前日に打たれた打者相手だと「よし、やってやろう」と。
鹿取 そうですね。そういうリリーフの気持ちのわかるコーチや監督の下でプレーできたことも幸せでした。

 

二宮: 鹿取さんは現在、侍ジャパンのテクニカルディレクター(TD)を務めています。この秋はプレミア12があり、来年は東京オリンピック。そして21年3月にWBCと国際大会が目白押しです。各球団、若手も含めて代表の顔ぶれも楽しみですね。
鹿取 代表というのは「あれも、これも」と選手を選べるわけじゃありません。左バッターばかりじゃ都合が悪いから、右も入れておこう。そうなったときに首脳陣に「この選手がいい、あの選手がいい」とアドバイスをできるようにしておく。それがTDの役割です。

 

二宮: 個人的には侍ジャパンの正捕手が誰になるのかが気になります。前回のWBCに出場した小林誠司選手(巨人)なのか、それとも打撃のいい森友哉選手(埼玉西武)なのか、はたまた甲斐キャノンでお馴染みの甲斐拓也選手(福岡ソフトバンク)なのか、選考に迷うところです。
鹿取 あと千葉ロッテの田村龍弘選手もいますからね。第1回WBCの里崎智也から始まって、その後は城島健司、炭谷銀仁朗が侍ジャパンの正妻を務めました。監督としては誰を選ぶのか、正直、悩むところだと思います。

 

二宮: さて、木挽BLUEのボトルも随分と空いてきました。侍ジャパンの活躍をサカナにうまい酒を飲みたいところですね。
鹿取 そうですね。プレミア12は前回、韓国に逆転負けしたリベンジがありますし、東京五輪は今後のためにも金メダルは絶対です。

 

二宮: 美酒を飲むためにも。
鹿取 そのときにはロックをグイグイ……いや、マイペースにしておきましょう(笑)。

 

二宮: では、最後に侍ジャパンの今後の活躍を祈って乾杯しましょう。
鹿取 いいですね。乾杯!

 

二宮: おお。最後にはグイッとグラスを空けるあたりは、さすが高知出身ですね。
鹿取 ですが、返杯はご勘弁を(笑)。

 

 

鹿取義隆(かとり・よしたか)プロフィール
1957年3月10日、高知県出身。高知商、明治大を経て、78年にドラフト外で巨人に入団。サイドスローからの多彩な変化球を武器に、中継ぎ、抑えとして活躍した。87年には公式戦130試合中63試合に登板し、7勝4敗18セーブ、防御率1.90の成績を残す。89年オフにトレードで西武に移籍。90年、24セーブをあげ最優秀救援投手のタイトルを獲得。リーグ優勝と日本一に貢献した。97年、現役引退後は巨人の投手コーチなどを歴任。2006年にはWBC日本代表の投手コーチに就任。世界一に貢献した。14年、U-15代表監督、野球日本代表のテクニカルディレクターに就任。15年、プレミア12の日本代表の投手コーチを務める。17年4月に巨人GM特別補佐、6月にGM兼編成本部長に昇格した。18年10月、同職を退任。現在は野球日本代表のテクニカルディレクターを務める。プロ通算成績は91勝46敗131セーブ。

 

(文・写真・まとめ/SC編集部・西崎)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回、鹿取義隆さんと楽しんだお酒は芋焼酎「木挽BLUE(ブルー)」。宮崎の海 日向灘から採取した、雲海酒造独自の酵母【日向灘黒潮酵母】を使用し、宮崎・綾の日本有数の照葉樹林が生み出す清らかな水と南九州産の厳選された芋(黄金千貫)を原料に、綾蔵の熟練の蔵人達が丹精込めて造り上げました。芋焼酎なのにすっきりとしていて、ロックでも飲みやすい、爽やかな口当たりの本格芋焼酎です。

 

提供/雲海酒造株式会社

 

 

<対談協力>
折おり
東京都港区赤坂2-14-5 Daiwa赤坂ビル1F
TEL. 03-6459-1888
営業時間:16時30分~翌5時
定休日: 日曜、祝日

 

 

 

☆プレゼント☆

 鹿取義隆さんの直筆サインボールを「木挽BLUE」(900ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はこちらのメールフォームより、件名と本文の最初に「鹿取義隆さんのサイン希望」と明記の上、下記クイズの答え、郵便番号、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)を明記し、このコーナーの感想や取り上げて欲しいゲストをお書き添えの上、お送りください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は19年6月13日(木)。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。

 

◎クイズ◎

 今回、鹿取義隆さんと楽しんだお酒の名前は?

 

 お酒は20歳になってから。

 お酒は楽しく適量を。

 飲酒運転は絶対にやめましょう。

 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。


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