GMOクラウド株式会社はクラウド・ホスティングサービスおよびセキュリティサービスを中心とした各種インターネットソリューションの開発・運用を行っている。同社は2018年にパートナー(従業員)の組織外活動を支援する「ソトカツサポート制度」を開始した。2019年1月から同制度は国際スポーツ大会などのボランティアを対象に追加し、パートナーの幅広い活動をサポートしている。GMOクラウド株式会社取締役グループコーポレート部門担当兼社長室長の松下昇平氏にその取り組みについて訊いた。

 

二宮清純: 御社の取り組みのひとつ「ソトカツサポート制度」とは具体的にどのような制度なのでしょうか?

松下昇平: パートナーの成長機会の創出を目的に2018年1月に導入しました。副業・複業を含め、パートナーの知識・能力・スキル向上に繋がる組織外活動を認めています。そのために特別有給休暇の付与をはじめ様々なサポートを行っているんです。2019年1月からは、国際スポーツ大会のボランティアを公認の組織外活動の対象に追加しました。

 

伊藤数子: その「ソトカツサポート制度」はどのような経緯でスタートしたのでしょうか?

松下: 弊社の社長である青山満が「仕事はワクワクしながらするものである」という考えの持ち主なんです。2017年に弊社のグループ全体で“ワクワク”というキーワードをもとに、「コトをITで変えていく」という共通ビジョンを掲げました。その“ワクワク”に繋がる活動を推進できるもののひとつとして、2018年度から「ソトカツサポート制度」を始めました。

 

伊藤: 働くことそのものの考え方を変えるということですね。

松下: はい。たとえ現状、会社を運営できているとしても、今のままをキープするだけでは成長し続けることは難しいと考えています。現状に満足することなく仕組みや制度を変えていかないと、この先も必要とされる存在にはなれません。

 

 外での経験を還元

 

二宮: その組織外活動の中に今年1月から国際大会等のスポーツボランティアを追加したと伺いました。日本で開催される9月のラグビーワールドカップも対象に?

松下: もちろんです。多様な国籍、年代、職種の方々とボランティア活動を通じて交流することで、パートナーには業務で得られない経験をしてもらいたい。翌年には2020年東京オリンピック・パラリンピックが開催されますので、ボランティア活動に興味を持つパートナーは以前よりも増えることが予想されます。そのため特別有給休暇取得上限日数をこれまでの年間4日から最大10日に引き上げます。

 

二宮: ボランティアに参加した証明書は必要なのでしょうか?

松下: 形式などにこだわるつもりはありません。証明書を発行する手続きが面倒で制度活用にブレーキをかけるようなことはしたくないんです。これを成功事例にしていきたいと考えているので、厳密に取り締まるということはあまりしたくありません。休日を使ってボランティア活動に参加するのではなく有休を使ってボランティア活動を体験できる。それを「ソトカツサポート制度」で打ち出していきたいと思っています。

 

伊藤: 御社は「ソトカツサポート制度」の拡充を契機に、スポーツボランティアの啓蒙活動を進めています。さらに御社は本社を置く渋谷区の独自ボランティア制度に賛同しています。同制度はSTANDも事務局として関わらせていただいています。

松下: 昨年12月、弊社でパートナーを対象に渋谷区独自ボランティア制度に登録するために必要な公認講座を開催させていただきました。講座には社内からも多くの人たちが参加しました。「ソトカツサポート制度」を始めたことで、少しずつではありますが、ボランティア活動に興味を持つ人が増えてきました。大事なのは本人だけでなく周囲も快く送り出していけるような環境を整えることです。それを「ソトカツサポート制度」で推し進めていきたいと思っています。

 

伊藤: さきほど“ワクワク”することがキーワードとおっしゃっていました、それは「ソトカツサポート制度」を利用することで、会社の外でも“ワクワク”するような体験をしてほしいということですね?

松下: おっしゃる通りです。日本では業務中に社外に出ることが“サボっている”“会社を裏切っている”というような見方をされる場合があります。それは社外で業務を行うことが、自分だけのための時間に使っているんじゃないかと捉えられているからだと思うんです。弊社の考えは違います。むしろ外で経験したことが会社に還元されていくと、考えています。社外での活動でつくられる独自のネットワークがありますし、それによって得られる経験やスキルもあるかもしれない。もうひとつはモチベーションですね。社外活動を通じ、外の空気に触れることによって、GMOクラウドで働くやりがいや面白さも再発見できるのではないかと考えています。

 

(後編につづく)

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松下昇平(まつした・しょうへい)プロフィール>

GMOクラウド株式会社取締役グループコーポレート部門担当兼社長室長。大阪府生まれ。2007年立命館アジア太平洋大学卒業、同年住商リース株式会社(現三井住友ファイナンス&リース株式会社)入社。2011年中小企業診断士登録。同年GMOクラウド株式会社に入社し、2013年社長室長、2015年マーケティング部長兼社長室長、2016年コーポレート部長兼社長室長を経て、2017年に取締役就任。中学・高校時代には水泳部に所属。現在はマリンスポーツ、登山を習慣としている。

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