DCMダイキボート部の武田大作は今季、充実のシーズンを迎えそうである。第4回西日本選手権(4月20~21日)は一般男子シングスカル準優勝、第72回朝日レガッタ(5月3~6日)は一般男子シングルスカルで通算14度目の優勝を果たした。また5月26日決勝の第97回全日本選手権では男子シングルスカルで6位に入賞した。


 武田は「コンディションは万全。練習もトレーニングも順調」と語り、アトランタ、シドニー、アテネ、北京、ロンドンに続く自身6度目の五輪となる東京大会代表入りに向けギアを上げている。「目標は出るだけではなく、世界で勝つこと」。45歳の武田は力強く言い切った。

 

 代表選考から逆算

 2020年東京オリンピックのボート代表選考は、次のような流れで行われる。代表入りを目指す選手は、今秋11月に荒川で行われる競技会HEAD of ARA(HOA)に参加し、12月と20年2月に2000mエルゴタイムトライアル記録を日本ボート協会へ提出。そして3月12日に予選タイムトライアル、3月20~22日が日本代表候補最終選考レースとなる。

 

 武田は今秋11月のHOAから逆算し、今季をスタートした。
「今年はまず3月に19年度日本代表候補選考レースに出場しました。3月は通常ならオフなので成績は二の次、事実、決勝22位とか散々でした。でも、この大会に出たのは好成績を残すことではなく、自分の今の立ち位置と足りない部分を知りたかったからです。その後、昨年以上にトレーニングを積んで、西日本、朝日レガッタ、全日本選手権に臨みました。西日本、朝日レガッタでは好成績を残せて、全日本でも今の日本代表や元日本代表と勝負ができました。さらにトレーニングを積み、秋に向かいたいと思います」

 

 武田は17年のえひめ国体前にヒザを負傷し、その影響でコンディション不良が続いていた。「えひめ国体のあとはしばらく体がガタガタでした」と武田。だが、昨季あたりからコンディションが戻ったことで、トレーニング強度もアップできた。武田は今のコンディションについてこう語っている。

 

「体のどこにも痛みがないので地道なトレーニングも継続してできています。エルゴメーターの数値も良くなってきているので、これからは高強度のトレーニングを積んでいこうと思っています。まずは7月の社会人大会に向けてピークを作り、その後は秋の茨城国体、そして11月のHOA。さらに翌年3月の代表選考レースまで、世界で勝てる体をつくりたいですね」

 

 武田は今シーズン、日本U-23代表のサポートコーチも務めることになった(契約期限は7月末まで)。社会人大会前の準備期間とバッティングするが、武田はU-23の若い選手を教える中で自分自身にも新たな発見があると期待している。

 

「若い選手たちに僕のこれまでの経験を教え、世界で戦えるように手伝いたい。コーチとして接する中で、選手・武田としてプラスになるものが必ずあると思っています。7月いっぱいまでコーチを務めて、その後は自分自身のトレーニングを始めます。トレーニングの質は保っているので、これからはいかに量をこなすかが課題です。30代の前半が一番練習量をこなした時期なんですが、そこまで持っていきたいですね。それくらいじゃないと、世界で勝つことはできませんから」

 

 愛媛県代表として出場する茨城国体についても聞いた。
「これまで愛媛県ボート協会の強化部長を務めていましたが、今年から役職が副会長になりました。強化は若い人たちにバトンタッチしたことで、選手活動に専念できるようになった面はあります。副会長なんて肩書が不思議な感じですが、でも専念できる分、選手として愛媛の名前を全国に響かせたいですね。国体にはダブルスカルで出場するので、シングルにはないスピードが体験できます。スピードが上がった中でのテクニックなど、ここでも得るものは多いと思っています。国体にはナショナルチームも出てくるはずなので、彼らとレースをするのもいい経験になります。45歳ですが、この年齢で大会に出ているのは自分でもまあすごいことだと思います。何度も言いますが、東京は出るだけではなく勝つことが目標。まだ出るのも決まってないのにおこがましいとは思いますが、武田大作、本気です」

 

 7月の社会人選手権、秋の国体を経て東京オリンピック代表入りを目指す"ボートの鉄人"から目が離せない。

 

(取材・文/SC編集部・西崎)


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