(写真:報道陣のリクエストに応え、森新会長<左>と岩渕専務理事がガッチリ握手)

 29日、日本ラグビーフットボール協会は都内で評議員会および理事会を開催し、2019年、20年度の役員を決定した。新会長には元日本代表主将の森重隆副会長が就任。副会長はヤマハ発動機ジュビロ前監督の清宮克幸氏と、理事・会計役を務めていた山城泰介氏が就いた。専務理事は男子7人制代表の岩渕健輔ヘッドコーチ(HC)が現職と兼任する。

 

 協会の役員人事は若返りを図った。岡村正前会長を含め、今回退任した副会長4名はいずれも70歳を超える高齢だった。森新会長は副会長の中で唯一の60代だった。清宮新副会長は50代、岩渕新専務理事は40代だ。

 

 森新会長は福岡高校、明治大学を経て新日鉄釜石でプレーした。主将、選手権監督して日本選手権7連覇のうちの4連覇に貢献した。日本代表キャップは27で、主将を務めた経歴を持つ。“ヒゲ森さん”の愛称で親しまれている。記者会見に登壇した森新会長はこう意気込みを述べた。
「これから日本のラグビーを引っ張っていく覚悟であります。日本のラグビーはよきアマチュアリズムを発揮しながら素晴らしい人材を世に送り出してきました。自己犠牲の精神で個々がチームや地域に貢献してきました。日本協会は競技人口、ファンを増やし、ラグビースピリッツが多くの人々に浸透することで日本が素晴らしい国になっていくことを使命、目標としています」

 

 ホストカントリーとしてワールドカップを目前に迎える中での緊急登板となった。「熱き思いの伝道師となるべく全国の開催都市に足を運び、地域の方々との交流を図りたいと思います」と森新会長。今年9月のラグビーワールドカップ、来年は東京オリンピックとビッグイベントが続くが、岩渕新専務理事は「この1年の間にものすごく大切なイベントを2つ控えています。私と会長の任期は2年。この2年で日本ラグビーの50年、100年が決まる。そういう覚悟でやらなければいけないと感じています」と真剣な面持ちで語った。

 

 森新会長によれば、今回の役員人事には「若返りで改善をスピードアップしたい」という狙いがあるという。森新会長は清宮新副会長について「もう10回くらい会った。トップリーグを含め、『改革をやってくれ』とお願いしました」と言い、イノベーションの旗頭役を期待している。43歳の岩渕新専務理事は、男子7人制代表のHCを続投する。2つの重責を担うことになったが、本人は「物理的には難しい。前向きな意味でのトライ。覚悟を決めてやり切る」と口にした。

 

 岩渕新専務理事はこう続ける。 
「ラグビー協会そのものを他のユニオン(協会)に勝てるユニオンにしていかなければいけないと思っております。ユニオンが世界一にならないと代表チームが世界で一番になれない。協会としてはガバナンスやコンプライアンスをしっかり徹底しながら意思決定のスピードを高めながら、世界のユニオンと戦えるようにしていかないといけない」

 

 早速、森新会長は週明けの月曜日に日本代表の宮崎合宿に赴く予定だ。ジェイミー・ジョセフHCをはじめ現場の声に耳を傾ける。新会長はコミュニケーションを重視する。協会内の話し合いも増やしたい意向を示し、「常にコミュニケーションを取りながら、決定していきたい」と宣言した。若返りを図り、新体制となった協会は生まれ変われるのか。その動向に注目が集まる。

 

(文・写真/杉浦泰介)