(写真:『RIZIN18』に出場する堀口。総合格闘技では連勝中)

 昨年同様、RIZIN夏の陣2連戦が開催される。

 

『RIZIN17』(7月28日、さいたまスーパーアリーナ)

『RIZIN18』(8月18日、ドルフィンズアリーナ=愛知県体育館)

 

 この2大会には、RIZINキックボクシング部門のエース、那須川天心は参戦しない。だが、7・28さいたま、8・18名古屋、いずれの大会にも興味深いカードが揃っている。

 

 まず、『RIZIN17』では、軽中量級における注目の日本人対決が行われる。

 矢地祐介(KRAZY BEE)vs.朝倉未来(トライフォース赤坂)/契約体重70キロ

 元谷友貴(フリー)vs.扇久保博正(パラエストラ松戸)/契約体重61キロ

 石渡伸太郎(CAVE)vs.佐々木憂流迦(Serra Longo Fight Team)/契約体重61キロ

 

 いずれも好カードだが、中でも注視したいのは、やはり矢地vs.朝倉兄か。

 

 矢地は、RIZINのトップに登りつめる男としては期待されているが、ここのところ失速している。

 2016年にRIZINに参戦して以来、マリオ・シスムンド(フィリピン)、ダロン・クルックシャンク(米国)、北岡悟を相次いでKOで破った矢地の当時の勢いは凄まじかった。2017年大晦日には、五味隆典からタップを奪い「世代交代」を高らかに宣言。頂は、すぐ目の前にあるように思われた。しかし、その後、ルイス・グスタボ(ブラジル)、ジョニー・ケース(米国)に連敗。この2試合では、持ち味である鋭い踏み込みが見られていない。

 

 対して朝倉兄は勢いを増している。昨年8月にRIZIN初参戦を果たすと、日沖発、リオン武らを破り現在4連勝中。今年4月の『RIZIN15』では、矢地をKO勝ちしたグスタボから勝利を収めている成長株だ。

 

 連敗中とはいえ、類い稀なるセンスを持つ矢地と、堅実なファイトができるうえに勢いに乗る朝倉兄の対峙。緊張感溢れる闘いは必至だ。予想は難しいが、現状の充実度を考えれば、朝倉兄が優位だろうか。

 

 絶対王者の凱旋試合

 

『RIZIN18』には、総合格闘技部門のエース、堀口恭司(アメリカン・トップチーム)がメインエベンターとして登場する。

 

 昨年大晦日に、堀口はダリオン・コールドウェル(米国)に一本勝ちし、初代RIZINバンタム級王者となった。そして、今年6月、ニューヨークMSGでのコールドウェルとの再戦にも勝利。Bellatorバンタム級王者のベルトも手に入れ2冠王となった。総合格闘技において現在13連勝中を誇る絶対王者の凱旋試合である。

 

 今回の対戦相手は、朝倉未来の弟・海(トライフォース赤坂)。一昨年12月に、RIZINのリングに初登場し才賀紀左衛門をTKOで下して以降、4連勝中。兄同様、弟の海も勢いに乗っている。

 

 こちらは、堀口が朝倉弟に胸を貸す一戦。朝倉弟も将来を有望視される選手だが、格を考えれば、堀口が1ランク上と見るべきだろう。朝倉弟が、どこまで食い下がれるかが焦点となる。

 

『RIZIN』夏の2連戦で繰り広げられる苛烈なサバイバルファイト。暑い夏に、熱い闘いを期待したい。

 

 最後に。先日、ドキュメンタリー映画『破天荒ボクサー』(出演:山口賢一、高山勝成ほか、監督:武田倫和)を観た。

 思うところがあった。この作品が訴えたかったことについても近々、触れてみたいと考えている。7月19日まで新宿・K’sシネマで公開。

 

近藤隆夫(こんどう・たかお)

1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実 ~すべては敬愛するエリオのために~』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー ~小林繁物語~』(竹書房)『キミはもっと速く走れる!』『ジャッキー・ロビンソン ~人種差別をのりこえたメジャーリーガー~』『キミも速く走れる!―ヒミツの特訓』(いずれも汐文社)ほか多数。最新刊は『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)。

連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)


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