少子化なのだから、部員が減るのは仕方がない。しかし「激減」と「微減」では大違いである。

 

 日本中学校体育連盟の調査によると、軟式野球部員(男子)の数は2001年度が32万1629人だったのに対し、18年度は16万6800人。これに対し、サッカー部員(男子)の数は01年度が22万1806人だったのに対し、18年度は19万6343人。減ってはいるものの、野球部員を上回った。

 

 他を見渡しても、少子化のあおりを受け、部員増の競技は、ほとんどない。しかし、極度の落ち込みを見せているのは野球だけである。いわゆる“ひとり負け”の状態だ。

 

 なぜ、子供たちは野球を敬遠するようになったのか。横浜DeNAの主砲・筒香嘉智の見解が興味深い。

 

「小さい子供たちが野球をやりたいのにもかかわらず、無理をし過ぎて手術をしたり、けがをして野球を断念したというケースを僕自身何度も見てきました」(日本外国特派員協会2019年1月)

 

 底辺人口の減少は高校野球にも影響を及ぼしている。高野連の統計によると参加校数、部員数ともに減少の一途にある。硬式野球部は05年度の4253校をピークに減り続け、今年度は3957校。14年度、17万312人もいた部員は、今年度は14万3867人。練習時間が長い、理不尽な指導者がいる、用具代が高い、遠征支援など親の負担が大きい…。高校野球の現状に対する不満は、方々で耳にするが、「では、どうするのか?」と問うと、誰もが答えに窮するありさまだ。

 

 ピンチこそチャンス。手垢のついたフレーズだが、今回は便乗することにする。

 

 高野連によると、今夏、部員不足による連合チームは86(234校)を数えた。別々の学校の生徒がひとつになり、チームワークを育もうとする姿は教育現場での「共生社会」の実現であり、その体験から彼らは互いの「アイデンティティー」を認め合うという民主的な思考を手に入れることができるはずだ。連合チーム、いいじゃないか。

 

 また部員の減少は、ベンチ入りの機会の増加を意味する。部活の本来の目的は「機会保障」であり、うまい下手は二の次だったはずである。肥大化した高校野球から身の丈に合った高校野球へ――。考え方と視点を変えれば、必ずしも悪いことばかりではない。

 

<この原稿は19年7月17日付『スポーツニッポン』に掲載されたものです>


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