6年ぶりのクライマックスシリーズ(CS)出場を決めたオリックスを支えているのが強力リリーフ陣である。なかでも抑えの平野佳寿につなぐ重要な役割を果たしているのがセットアッパーの佐藤達也だ。プロ2年目の昨季、67試合に登板して42ホールドポイント(HP)をあげ、最優秀中継ぎのタイトルを獲得。今季も58試合に登板し、五十嵐亮太(福岡ソフトバンク)に次ぐ39HPをあげている。今後の戦いでも、この細身のセットアッパーが、18年ぶりのリーグ制覇、CS突破を目指す上でカギを握ることは間違いない。他球団の強打者を豪速球でキリキリ舞いさせている28歳に、二宮清純が“直球勝負”を挑んだ。
(写真:マウンドでは存在感を発揮するが、普段は「プロ野球選手とは気づかれないように過ごしている」といたって普通だ)
二宮: 今季は、優勝争いをする中でのフル回転。これまで以上にやりがいがあるシーズンでしょう。
佐藤: 入団3年目ですけど、過去2年間は低迷していましたから、こんなにチーム状態がいいのは初めて。優勝争いの緊張感よりも、むしろ、いい雰囲気を楽しめていますね。

二宮: チーム状態の良さはどのあたりに感じますか。
佐藤: 何より今季のチームは明るい。選手同士も仲が良くて、チームがひとつにまとまっている感覚が強いです。

二宮: 森脇浩司監督のリーダーシップも評価が高いですが、選手にメールを送ったり、フォローが細かいそうですね。
佐藤: はい。監督には体のケアのことを、いつも気にかけていただいています。たとえば、疲労が溜まっている時は、こうした方がいいとか、今の状態なら、休みも少し練習して体をほぐしたほうがよいとか。「自分の中で確立したものをつくりなさい」と言われていますね。

二宮: セットアッパーとして今季もチーム最多の登板を重ねています。心身ともに重圧がかかるポジションで正直、疲労は溜まりませんか。
佐藤: 僕は回復力が早いタイプなので、一晩寝れば、次の日は大丈夫です。その意味では中継ぎ向きなのかなと思います。毎日投げる方があっている。先発で長いイニングを投げる方がスタミナが持たないんです。

二宮: プロ入り当時は荒れ球の印象が強かったのですが、年々、コントロールもまとまってきていますね。
佐藤: いえいえ。今もあんまり良くないですよ(笑)。意識しているのは、際どいところを突くのではなく、ストライクゾーンに投げること。バッターに振ってもらって勝負しよう。そう考えるようになってから、コントロールもだいぶ良くなってきたと思います。

二宮: セットアッパーはチームの勝敗を左右する重要な役割です。マウンドに上がる際に心がけていることは?
佐藤: セットアッパーは100%成功させることが大事です。やはり、常に意識しているのはゼロに抑えてベンチに帰ることですね。僕の場合、同点や1点ビハインドの競った場面で打たれることが多いので、その点はまだまだ課題です。出番は回の頭からだったり、ピンチの場面だったりしますが、どんな状況であっても、必ず抑えて次のピッチャーにつなげる。抑えには平野(佳寿)さんがいらっしゃいますから、僕はなんとか勝っている状態でバトンを渡したいと思いながら投げています。

二宮: ひとつの失投も許されないポジションだけに精神的なタフさも要求されますね。
佐藤: まぁ、いつも、ものすごいプレッシャーですから、正直、ビクビクしながら投げています(笑)。

二宮: それは意外です。豪快な投げっぷりとはイメージのギャップがあります。
佐藤: マウンドでは、なるべく不安なのを見せないように気をつけているんですよ。もともとは気が弱くて、心配性なので……(苦笑)。

二宮: ただ、オリックスはエースの金子千尋投手はもちろん、リリーフ陣でも平野投手に、馬原孝浩投手、岸田護投手、比嘉幹貴投手と力のあるピッチャーが揃っています。その点は心強いのでは?
佐藤: チームとしては安心でしょうけど、一選手としては、それもプレッシャーです(苦笑)。素晴らしいピッチャーが多すぎて、いつ自分の投げる場所がなくなるかわからない。戦々恐々としていますよ

二宮: ファンも久々の優勝、日本シリーズ進出を楽しみにしています。ビールかけができれば最高でしょうね。
佐藤: ビールかけは社会人(ホンダ)時代、都市対抗で優勝した時に、一度、経験しました。プロは規模も違うでしょうから、ぜひ、やってみたい。残り試合、登板した時は全力で腕を振って頑張ります。

<9月19日より発売の講談社『週刊現代』では佐藤投手の特集記事が掲載されます。こちらも併せてお楽しみください>