28日、韓国・仁川でのアジア競技大会はレスリング女子55キロ級で吉田沙保里(ALSOK)が決勝でビャンバツレン・スンデブ(モンゴル)にテクニカルフォール勝ちして4連覇を達成した。アジア大会での4連覇は日本の女子では初めて。2週間前の世界選手権ではリオデジャネイロ五輪で実施される53キロ級に階級を落として世界大会15連覇を果たした吉田は、従来の55キロ級に戻してアジアを制した。陸上では男子20キロ競歩で、鈴木雄介(富士通)が1時間20分44秒の2位で銀メダル。男子棒高跳び決勝では澤野大地(富士通)が5メートル55をマークして2位に入った。男子100メートル決勝はナイジェリア出身のフェミセウン・オグノデ(カタール)が9秒93のアジア新記録で優勝し、日本勢では高瀬慧(富士通)が10秒15で銅メダルを獲得した。女子100メートル決勝では福島千里(北海道ハイテクAC)が11秒49の記録で銀メダルとなった。卓球団体は男女とも準決勝進出を決めた。卓球は3位決定戦が行われないため、日本は団体男女ともにメダルが確定した。
【不変だった女王の強さ 〜レスリング女子〜】

 1か月の間に2つの階級で国際大会を戦う難しさがあっても、女王の強さは不変だった。
 最大のハードルは初戦にあった。中国のショウ・セツジュンとの一戦、吉田は第1ピリオドにタックルで倒された上に、フォール負け寸前まで持ち込まれ、0−5と大きなビハインドを背負う。

 しかし、ここで慌てないのが無敵たる所以だ。第2ピリオド、一本背負いの大技で4点を返して反撃を開始。再びタックルで倒されて4−7とリードを広げられるも、再び豪快な投げ技で逆転に成功する。その後も一時はポイントをひっくり返される、らしからぬ展開ながら、12−9で苦しんだ1回戦を突破した。

 この日の吉田はいつもと比べると腰が高く軽い印象だったが、以降は力の差をみせつける。スンデブとの決勝も得意のタックルがさえ、着々と得点を重ねた。最後も鮮やかに両腕で相手の両足を刈って、肩からマットにたたきつけて4点を追加。11点差をつけてのテクニカルフォール勝ちで優勝を決めた。

【4人が表彰台に上がるも金はゼロ 〜陸上〜】

 陸上競技2日目は優勝候補が多数しメダルラッシュが期待されたが、一番いい色のメダルとはいかなかった。朝にスタートした男子競歩20キロでは今季世界ランキング1位のタイムを持つ鈴木が登場した。ここ1、2年で日本記録を更新するなど、成長著しい鈴木も大きな国際大会の優勝はまだない。アジアチャンピオンの称号は是が非でも手にしたいところ。しかし、ロンドン五輪銅メダリストの王鎮が立ちはだかった。王は大会新となる1時間19分45秒をマーク。鈴木は1分近い差をつけられて2位だった。

 夜に行われたトラック種目では、日本のスプリンターたちがアジアの頂点に立てなかった。女子100メートル決勝では連覇を狙った福島が中国選手に敗れ、2位。後半追い上げた福島だったが、わずかに100分の1秒及ばなかった。男子は準決勝1組で山縣亮太(慶應義塾大)がアジア記録を持つサミュエル・フランシス(カタール)に先着し、組1位で通過した。しかし、それを上回る走りを見せたのが次の2組。オグノデが10秒02と自己記録を更新して全体トップのタイムで通過した。その勢いのまま決勝は降り出した雨を切り裂くように、力強い走りで駆け抜けた。同胞のフランシス記録を0秒06も更新。仁川アシアドメインスタジアムに詰めかけた観衆を沸かせた。オグノデの隣を走った山縣は、後半思うように伸びず6位に終わった。一方、準決勝で自己ベストを更新した高瀬は、粘って3位に食い込んだ。男子100メートルの日本勢では2大会ぶりとなるメダルを獲得した。

 雨の影響をもろに受けたのが、棒高跳びだ。優勝候補の山本聖途(トヨタ自動車)は5メートル35を跳べず記録なし。澤野も5メートル35、45とギリギリの3回目でクリアした。次の5メートル55は一発で跳躍に成功したが、5メートル65は3回とも失敗。5メートル65は誰も跳べなかったが、澤野は試技数により中国選手に敗れ、銀メダルとなった。

<男子100メートル・決勝>
3位 高瀬慧(富士通) 10秒15

<男子20キロ競歩>
2位 鈴木雄介(富士通) 1時間20分44秒

<男子棒高跳び>
2位 澤野大地(富士通) 5メートル55

<女子100メートル・決勝>
2位 福島千里(北海道ハイテクAC) 11秒49

【男女ともにメダル確定 〜卓球〜】

 今年の世界選手権団体でメダルを獲得した男女が、アジアでも順当に準決勝進出を決めた。男女ともに予選リーグは4連勝で1位通過。女子は香港を相手に3対1で勝利した。中でも福原愛(ANA)は2勝を挙げる活躍。予選リーグの山場だった韓国戦でも2勝している。31年ぶりに獲得した世界選手権団体の銀メダル。福原はケガのために欠場していた。再びその存在の大きさをアピールした。次戦はシンガポールと決勝進出をかけて争う。一方の男子は北朝鮮に苦戦し、3対2で競り勝った。エースの水谷隼(ビーコン・ラボ)が2勝。ここまで5戦全勝と期待に応えている。準決勝は世界選手権王者の中国と対戦する。 

【日本、開催国・韓国に敗北 大会連覇ならず 〜サッカー男子〜】

 サッカー男子の準々決勝では、U−21日本代表が開催国のU−23韓国代表に0−1で敗れ、大会連覇はならなかった。日本は前半から大声援を受ける韓国に押し込まれた。サイドから攻撃を組み立てられ、ゴール前までボールを運ばれる。それでもDF岩波拓也、アンカーのMF遠藤航を中心に、日本は劣勢を凌いでいった。後半も守勢の時間が長かった。すると43分、MF大島僚太が自陣PA内で相手を倒してPKを献上。これをDFチャン・ヒョンスにゴール右へ決められた。痛恨の失点。日本はその後、DF植田直通を前線に上げるパワープレーに出たがゴールを奪えず、ベスト8で姿を消すことになった。

 主将・大島、悔やまれるPK献上(文鶴)
U−21日本代表 0−1 U−23韓国代表
【得点】
[韓国] チャン・ヒョンス(88分)