19日、プロ野球パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第5戦がヤフオクドームで行なわれ、北海道日本ハムが延長戦を制し、対戦成績を3勝3敗(ソフトバンクのアドバンテージ1勝含む)として決着は最終第6戦にもつれこんだ。ソフトバンクは2回、日本ハム先発の大谷翔平を攻略して4点を先制。しかし、日本ハムは7回に大野奨太、西川遥輝の連続長打で1点差に詰め寄ると、8回には中田翔のソロで試合を振り出しに戻す。延長戦に突入したゲームは11回、中島卓也のタイムリーで勝ち越し。4時間を超える熱戦を制した。

◇ファイナルステージ第5戦
 大野、4安打&好リード(日本ハム3勝3敗、ヤフオクドーム)
北海道日本ハム      6 = 000000310 02
福岡ソフトバンク      4 = 040000000 00 (延長11回)
勝利投手 鍵谷(2勝0敗)
敗戦投手 サファテ(0勝1敗1S)
セーブ   増井(1S)
本塁打  (日)中田4号ソロ
 二刀流右腕の力投、引退を決めたベテランの一打、主砲の一発、脇役の決勝打――。日本ハムが劣勢を挽回し、土俵際から押し戻した。 

 日本ハムの先発は今季11勝をあげている大谷。当初、ファイナルステージでは打者に専念させる予定だったが、シリーズが佳境に入り、栗山英樹監督はスターターとしての起用を決断した。

 だが、日本ハムが繰り出した切り札にソフトバンク打線が襲いかかる。2回、先頭の李大浩、松田宣浩が連打で出塁。送りバントの構えをみせた中村晃が死球を受け、無死満塁の好機を迎える。ここで6番・吉村裕基が初球を引っ張る。打球はレフトの左を抜ける二塁打。2者がホームインし、大事な先取点が入る。

 続く今宮健太もファーストストライクを叩いて三遊間を突破。3−0とリードを広げる。さらに1死後、柳田悠岐のファーストゴロで日本ハムの内野陣はセカンドでのゲッツーを狙ったが、一塁はセーフとなり、三塁走者が生還する。これで4−0。ソフトバンクがこのシリーズで初めて4得点以上のビッグイニングをつくる。

 早く反撃したい日本ハムだが、ソフトバンク守備陣が好プレーを連発し、なかなかチャンスを広げられない。3回には1死一塁で西川がライト後方への大飛球を放つも、中村晃がフェンスにぶつかりながらキャッチする。5回には、2死一、二塁から、またも西川が快音を響かせたが、ライトの中村が背走してつかみ、失点を防いだ。

 ただ、4点を失って以降、大谷も踏ん張る。5回、連打で無死一、二塁のピンチを招きながら、後続を断って追加点を許さない。続く6回も四死球で得点圏に走者を背負うも、2死から9番・細川亨を3球三振に仕留める。大谷は6回までに10奪三振の力投をみせた。

 すると、右腕の頑張りにベテランが応える。7回、2死一塁で代打として登場したのは今季限りで引退を表明している稲葉篤紀。敗れれば現役最後となる打席で、ソフトバンク2番手・森唯斗のストレートをはじき返した。打球はセンター右へ飛び、一、三塁と望みをつなぐ。

 この一打で雰囲気は一変。続く大野が粘ってフルカウントからセンター前へ打球を運ぶ。センター柳田のダイビングキャッチも及ばず、2者が生還。タイムリー二塁打で2点を返した。

 なおも打順は1番に戻り、前の2打席でいずれもライトへ大きな当たりを飛ばしている西川に巡る。ソフトバンクはサウスポーの森福允彦にスイッチ。だが、左対左の対決でも好調の西川には通じなかった。甘く入った変化球を振り抜くと打球はグングン伸び、ライトフェンス上部に当たる。外野線審の判定はホームラン。同点2ランかと思われたが、ビデオ判定の結果、三塁打に訂正された。ただ、その間に二塁走者が還り、3−4と1点差。試合はまったくわからなくなった。

 こうなると勢いは日本ハムへ。7回も続投した大谷が明石健志、内川聖一から連続三振を奪い、3人で相手の攻撃を終わらせる。次に飛び出したのは主砲の一発だ。8回、ソフトバンクの五十嵐亮太から中田がナックルカーブを完璧にとらえる。レフトポール際に突き刺さる同点ソロ。日本ハムが終盤に4点差を追いつき、試合は延長戦にもつれ込んだ。

 とはいえ、3位から勝ち上がった日本ハムは引き分けでは敗退が決まる。何とか勝ち越したい状況で、10回には2死から陽岱鋼が四球を選び、盗塁を仕掛ける。ランエンドヒットで中田の止めたバットに当たった打球は広く空いた一、二塁間を破り、一、三塁。相手のバッテリーミスも許されない場面をつくる。だが、5番の小谷野栄一はソフトバンクの抑えデニス・サファテのフォークボールにバットが空を切り、リードを奪えない。

 それでも11回、先頭のフアン・ミランダがフルカウントから四球で歩き、1死後、代打の谷口雄也がボテボテのピッチャーゴロで俊足を飛ばし、内野安打をもぎとる。さらに、この試合で3安打をマークしている大野がサファテのストレートを引っ張り、サード右を強襲。これも内野安打となり、満塁の絶好機を迎える。

 当たっている西川は空振り三振に倒れ、打席には2番・中島。前日からノーヒットが続いていたが、「打たないと男じゃない」と追い込まれながらも、サファテの速球をジャストミートする。打球はセカンドの頭上を破って、2者が歓喜のホームイン。福岡出身の23歳による貴重な一打で試合を決定づける得点が入った。

「稲葉さんの思いを無駄にせず、点を取れた。みんなの力で勝った」
 お立ち台に上った中島はナインの気持ちを代弁した。大谷の後を受けたリリーフ陣もマイケル・クロッタ、宮西尚生、鍵谷陽平と相手打線をパーフェクトに封じ、流れを渡さなかった。全員野球で試合をひっくり返し、最終戦へチームは上げ潮だ。第6戦は上沢直之を先発に立て、2010年の千葉ロッテ以来となる3位からの下剋上達成を狙う。

 逆王手をかけられたソフトバンクは初戦に好投した大隣憲司の先発が発表された。勝ちパターンに持ち込みながら敗れたショックを1日で払拭できるのか。苦しみながら優勝を決めたレギュラーシーズン最終戦を再現したいところだ。