(写真:愛媛サポーター有志によって制作された白幕)

 カップ戦や国体予選などのスケジュールを消化し、約3カ月ぶりに再開された2019プレナスなでしこリーグ2部。悲願の1部昇格を目指す愛媛FCレディースはリーグ戦を首位で折り返し、いよいよ運命の後期日程へと臨む。

 

 

 

 

 

 

 

 だが8月31日(土)、アウェイにて行われた第10節では、ちふれASエルフェン埼玉に敗れ、首位の座を明け渡した。『昨年のように、このまま調子を崩してしまうのだろうか……』。嫌なイメージが頭を過る。

 

 1週間後の9月7日(土)、第11節、セレッソ大阪堺レディースとの一戦が、丸山公園陸上競技場(愛媛県宇和島市)にて行われた。この日、台風の接近に伴い、天候が不安定な状態の宇和島市。晴れているかと思っていたら、急に雨が降ったり、強風が吹いたりと、ピッチ内のコンディションも刻々と変化し、先が読みづらい状況となった。

 

 フェーン現象の影響なのか気温も32℃を超え、酷い蒸し暑さの中、時計は午後2時を廻り、セレッソ大阪堺レディースのキックオフで試合がスタート。前半の立ち上がり、風下から敵陣に攻める愛媛だったが、相手のロングフィードとサイド攻撃から先制を許してしまった。

 

 それでも前半9分、敵ペナルティーエリア内の混戦からルーズボールをDF鎌田蘭選手が拾い、FW大矢歩選手へとラストパス。大矢選手がこのボールを落ち着いてゴールマウスへと流し込み、すぐさま同点に追いつく!

 

 前半28分に相手にミドルシュートを決められ、再び1点ビハインド……。だが、その10分後、愛媛が反撃に出る。敵陣中央でボールをキープするMF山口千尋選手。DFの背後に抜け出す構えを見せるFW上野真実選手の前方にスルーパスを通す。このボールに追いついた上野選手が相手ゴールへと押し込み、再び同点に追いついた!

 

 白熱のシーソーゲームは、まだまだ続く。後半に入り、風上に立ち試合を優位に進める愛媛だったが8分、一瞬の隙を突かれ、相手に3点目を献上してしまう。再度、反撃に向けチャンスを創り出すものの得点には結び付かないイライラした展開が続く。

 

 だが、選手もサポーターも決して諦めてはいない。その思いが天に届いたのか、40分あたりから、強い風と共に激しい横殴りの雨が降り始める。その風雨に背中を押されるように、怒涛の攻撃を展開する愛媛。41分、敵陣左サイドからビルドアップを図る。敵陣の深い位置でボールをキープしたMF山城見友希選手はDFをかわしつつ、ゴール前のMF仲松叶実選手にパスを送る。ボールを足元に収めた仲松選手は狙いを定めてシュートを放つ。ロビングのシュートはGKの頭上をすり抜け、見事ゴールに吸い込まれた!

 

 土壇場で3-3の同点に追いついた愛媛の勢いは止まらない! アディショナルタイムに入り4分が経過。主審が時計に目をやる回数が増え始める中、自陣からのロングフィードが前線に届く。敵DFがカバーに入りバックパスを試みるが、MF河本紗英選手がカット。そのままペナルティーエリアまでボールを持ち込み、ゴール前に走り込んで来た大矢選手にラストパスを供給。このボールを捉えた大矢選手が右足で蹴り込みゴールネットを揺らした。遂に愛媛が逆転!! 大歓声が沸き起こる! チームメイトと抱き合い、喜びを爆発させる大矢選手!

 

(場内アナウンス)「ゴール! ゴール! ゴール! ただいまの得点は、愛媛FCレディース背番号9! おおやー!」

(サポーター)「あゆみー!」

(場内アナウンス)「おおやー!」

(サポーター)「あゆみー!」

(場内アナウンス)「おおやー!」

(サポーター)「あゆみー!」

 

 今節のホームゲームから始まった場内アナウンスとサポーターによるコール&レスポンスが競技場に木霊する!

 

その後、「スウィーギン スウィンギン愛媛 フォーエヴァー!」とサポーターによる歓喜の大合唱が続く中、長い笛が吹かれ試合終了。

 

いつしか雨雲は、その役割を終えたかのように上空を去り、会場は眩しい夕焼けに包まれていた。

 

 この第11節は、最終スコア4-3で愛媛FCレディースによる劇的な逆転勝利となった。3度追いつき、試合終了間際に逆転弾が決まる中、号泣するサポーターも続出するなど、本当に感動的なホームゲームであった。

 

 また、この勝利により、再び愛媛FCレディースが首位の座を取り戻したのである。もちろん試合後は、選手たちと一緒に勝利を祝うラインダンスで締め括る! 皆と肩を組み、歓喜のダンスを踊り、喜びを分かち合った。

 

 流した汗と風雨の影響で選手たちもサポーターも、全身びしょ濡れではあったが皆、自然と笑みがこぼれ、ハイタッチや握手を繰り返し、ホームゲームの余韻を存分に楽しんでいた。

 

 サポーター有志によって制作された「共に1部昇格目指して戦おう!!」というメッセージが書かれた白幕が飾られた第11節。選手たちは逆境を乗り越え、追い込まれながらも真価を発揮し、この勝利を掴んでくれた。過酷なリーグ戦において、今後も楽な試合はひとつもないだろう。苦難を乗り越えなければ「1部昇格」という夢を手繰り寄せることはできないのである。

 

 今日の勝利と歓喜を糧に、これからも一戦一戦を大切にサポーターと心をひとつにし、後期日程を戦ってもらいたい。

 

<松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>

1967年5月14日、愛媛県松山市出身。愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。

 

 


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