23日、都内ホテルでNPB(日本プロ野球機構)の「新人選択会議」(ドラフト)が行なわれた。注目された大学No.1右腕の有原航平(早大)は横浜DeNA、広島、北海道日本ハム、阪神の4球団が1位指名。抽選の結果、日本ハムが交渉権を獲得した。最速157キロの速球で甲子園を沸かせた安樂智大(愛媛・済美高)には東京ヤクルトと東北楽天が競合し、楽天が交渉権を得た。リーグ優勝した巨人は高校通算73本塁打の岡本和真(奈良・智辯学園高)、福岡ソフトバンクは投げては最速150キロ、打っては通算57本塁打と潜在能力の高い松本裕樹(岩手・盛岡大付高)をともに単独で1位指名した。
(写真:有原の「交渉権確定」の当たりクジを引き、喜ぶ日本ハム・津田球団社長(右)と栗山監督)
 その他の1位指名はオリックスが東京六大学通算20勝の左腕・山崎福也(明大)、千葉ロッテが走攻守3拍子揃った内野手の中村奨吾(早大)、埼玉西武が昨夏の甲子園優勝投手・高橋光成(群馬・前橋育英高)、中日が社会人の長身右腕・野村亮介(三菱日立パワーシステムズ横浜)。抽選に外れた4球団は東京ヤクルトが社会人左腕の竹下真吾(ヤマハ)、広島が外野手の野間峻祥(中部学院大)を指名し、交渉権を手にした。

 DeNAと阪神は最速151キロで多彩な変化球を操る山崎康晃(亜大)で再び重複。抽選の末、DeNAの中畑清監督が当たりクジを引き当てた。クジ引きで2度外した阪神は左腕の横山雄哉(新日鐵住金鹿島)を指名した。

 2位以下では、千葉ロッテが最速149キロの本格派右腕・田中英祐(京大)を2位指名。京大では初のドラフト指名選手となった。西武は4位で敦賀気比高を卒業して現在は浪人中の右腕・玉村祐典を指名した。

 独立リーグでは四国アイランドリーグPlusから最多タイとなる3選手が本指名を受けた。BCリーグ・新潟でも活躍した香川の右腕・寺田哲也は東京ヤクルトが4位指名。最多勝(16勝)のタイトルを獲得し、徳島の日本一に貢献した入野貴大は楽天が5位指名した。独立リーグ・グランドチャンピオンシップで胴上げ投手に輝いた山本雅士は中日から8位指名された。BCリーグからは富山の右腕・中村憲吾が育成9位指名を受けた。

<楽天・立花社長、抽選3連勝>

“神の右手”が三たび威力を発揮した。
 2球団が競合した安樂の交渉権を射止めたのは楽天だった。クジを引いたのは立花陽三球団社長。一昨年は森雄大(東福岡高)、昨年は松井裕樹(桐光学園高)の抽選で当たりクジを右手で引いた。
(写真:「高校生とは思えない真っすぐの勢いがある」と大久保監督も安樂に惚れ込んだ)

「右(側のクジ)が残ってほしいと思っていた」という立花社長は、ヤクルトの真中満新監督が左手でクジを引いた後、今回も右手を抽選箱に入れる。クジを開封すると、「交渉権確定」の文字が目に飛び込み、右の拳をグッと握ってガッツポーズをみせた。

 昨夏は2年生ながら甲子園準優勝。その後は右ヒジ痛もあって、全国大会出場はならなかったが、187センチ88キロの素材は一級品だ。大久保博元新監督は「将来的にうちの柱になるピッチャー」と高く評価。「今年のほうが緊張した」と興奮気味の立花社長は「今年は悔しい成績だったんで、来年はいい成績を残せるように頑張りたい」と、即戦力の期待もかかる豪腕獲得で最下位からの逆襲を誓った。

<日本ハムも球団社長が当たりクジ>

 今ドラフトの目玉とも言える有原には最大7球団の重複も予想されたが、外れた場合のリスクを回避したチームもあり、最終的には4球団の指名で落ち着いた。DeNAが中畑監督、阪神が和田豊監督と指揮官がクジ引き役を務める中、広島は、大瀬良大地を当てた昨年同様、担当スカウト(今回は尾形佳紀スカウト)に大役を託した。日本ハムは昨年、抽選で“3連敗”だった栗山英樹監督の「代打」で津田敏一球団社長がクジを引いた。
 
 結果は過去、陽岱鋼、中田翔、斎藤佑樹らの交渉権を獲得してきた日本ハムが当たりクジをゲットした。津田社長は開口一番、「なまらうれしい!」と北海道弁で喜びを表現。「稲葉(篤紀)、金子(誠)が引退したが、中田、陽、大谷(翔平)がいる。一緒にプレーしてもらって日本一を奪回したい」とラブコールを送った。

 栗山英樹監督はキャスターとして広島・広陵高時代の有原を甲子園で取材してきた。それだけに「ずっと欲しいと思っていた。彼が入ることでチームがさらに良くなる」と笑顔をみせた。この秋は右ヒジ痛で出遅れたものの、最速156キロの速球とカーブ、スライダー、チェンジアップの変化球で打者を抑え、プロでも即通用する右腕だ。

 今季の日本ハムは3位に入ったものの、2ケタ勝利をマークしたのは大谷だけで、先発の一角を担える存在が必要だった。「野球はピッチャーなんで、そのレベルを上げるのが課題」と語った指揮官にとって最高の補強ができそうだ。

<交渉権獲得選手>

福岡ソフトバンク
【1位】 松本裕樹(盛岡大付高・投手)
【2位】 栗原陵矢(春江工高・捕手)
【3位】 古澤勝吾(九州国際大付高・内野手)
【4位】 笠谷俊介(大分商高・投手)
【5位】 島袋洋奨(中央大・投手)
【育成1位】 幸山一大(富山第一高・外野手)
【育成2位】 齋藤誠哉(磐田東高・投手)
【育成3位】 山下亜文(小松大谷高・投手)
【育成4位】 堀内汰門(山村国際高・捕手)
【育成5位】 柿木映二(柳川高・投手)
【育成6位】 金子将太(大間々高・外野手)
【育成7位】 河野大樹(NOMOベースボールクラブ・内野手)
【育成8位】 中村恵吾(富山サンダーバーズ・投手)

巨人
【1位】 岡本和真(智辯学園高・内野手)
【2位】 戸根千明(日本大・投手)
【3位】 高木勇人(三菱重工名古屋・投手)
【4位】 田中大輝(國學院大・投手)
【育成1位】 篠原慎平(香川オリーブガイナーズ・投手)
【育成2位】 川相拓也(桜美林大卒・内野手)
【育成3位】 田中貴也(山梨学院大・捕手)
【育成4位】 高橋慎之介(木更津総合高卒・投手)

オリックス
【1位】 山崎福也(明治大・投手)
【2位】 宗佑磨(横浜隼人高・内野手)
【3位】 佐野皓大(大分高・投手)
【4位】 高木伴(NTT東日本・投手)
【5位】 斎藤綱記(北照高・投手)
【6位】 坂寄晴一(JR東日本・投手)
【7位】 西野真弘(JR東日本・内野手)
【8位】 小田裕也(日本生命・外野手)
【9位】 鈴木優(雪谷高・投手)

阪神
【1位】 横山雄哉(新日鐡住金鹿島・投手)※有原、山崎の外れ指名
【2位】 石崎剛(新日鐡住金鹿島・投手)
【3位】 江越大賀(駒澤大・外野手)
【4位】 守屋功輝(Honda鈴鹿・投手)
【5位】 植田海(近江高・内野手)

北海道日本ハム
【1位】 有原航平(早稲田大・投手)
【2位】 清水優心(九州国際大付高・捕手)
【3位】 浅間大基(横浜高・外野手
【4位】 石川直也(山形中央高・投手)
【5位】 瀬川隼郎(室蘭シャークス・投手)
【6位】 立田将太(大和広陵高・投手)
【7位】 高濱祐仁(横浜高・内野手)
【8位】 太田賢吾(川越工高・内野手)
【9位】 佐藤正尭(愛知啓成高・内野手)

広島
【1位】 野間峻祥(中部学院大・外野手)※有原の外れ指名
【2位】 薮田和樹(亜細亜大・投手)
【3位】 塹江敦哉(高松北高・投手)
【4位】 藤井皓哉(おかやま山陽高・投手)
【5位】 桑原樹(常葉学園菊川高・内野手)
【6位】 飯田哲矢(JR東日本・投手)
【7位】 多田大輔(鳴門渦潮高・捕手)
【育成1位】 松浦耕大(MSH医療専門学校・捕手)
【育成2位】 木村聡司(常葉橘高・投手、内野手)

千葉ロッテ
【1位】 中村奨吾(早稲田大・内野手)
【2位】 田中英祐(京都大・投手)
【3位】 岩下大輝(星稜高・投手)
【4位】 寺嶋寛大(創価大・捕手)
【5位】 香月一也(大阪桐蔭高・内野手)
【6位】 宮崎敦次(広島国際学院大・投手)
【7位】 脇本直人(健大高崎高・外野手)

中日
【1位】 野村亮介(三菱日立パワーシステムズ横浜・投手)
【2位】 浜田智博(九州産業大・投手)
【3位】 友永翔太(日本通運・外野手)
【4位】 石川駿(JX-ENEOS・内野手)
【5位】 加藤匠馬(青山学院大・捕手)
【6位】 井領雅貴(JX-ENEOS・外野手)
【7位】 遠藤一星(東京ガス・内野手)
【8位】 山本雅士(徳島インディゴソックス・投手)
【9位】 金子丈(大阪商業大・投手)
【育成1位】 佐藤雄偉知(東海大相模高・投手)
【育成2位】 石垣幸大(いなべ総合高・投手)
【育成3位】 藤吉優(秀岳館高・捕手)
【育成4位】 近藤弘基(名城大・外野手)

埼玉西武
【1位】 高橋光成(前橋育英高・投手)
【2位】 佐野泰雄(平成国際大・投手)
【3位】 外崎修汰(富士大・内野手)
【4位】 玉村祐典(敦賀気比高卒・投手)
【5位】 山田遥楓(佐賀工高・内野手)
【育成1位】 戸川大輔(北海高・外野手)

横浜DeNA
【1位】 山崎康晃(亜細亜大・投手)※有原の外れ指名
【2位】 石田健大(法政大・投手)
【3位】 倉本寿彦(日本新薬・内野手)
【4位】 福地元春(三菱日立パワーシステムズ横浜・投手)
【5位】 山下幸輝(國學院大・内野手)
【6位】 百瀬大騎(松本一高・内野手)
【7位】 飯塚悟史(日本文理高・投手)
【育成1位】 亀井塔生(日星高・捕手)

東北楽天
【1位】 安樂智大(済美高・投手)
【2位】 小野郁(西日本短大付高・投手)
【3位】 福田将儀(中央大・外野手)
【4位】 ルシアノ・フェルナンド(白鴎大・外野手)
【5位】 入野貴大(徳島インディゴソックス・投手)
【6位】 加藤正志(JR東日本東北・投手)
【7位】 伊東亮大(日本製紙石巻・外野手)
【育成1位】 八百板卓丸(聖光学院高・外野手)
【育成2位】 大坂谷啓生(青森中央学院大・外野手)

東京ヤクルト
【1位】 竹下真吾(ヤマハ・投手) ※安樂の外れ指名
【2位】 風張蓮(東京農業大学北海道オホーツク・投手)
【3位】 山川晃司(福岡工大城東高・捕手)
【4位】 寺田哲也(香川オリーブガイナーズ・投手)
【5位】 中元勇作(伯和ビクトリーズ・投手)
【6位】 土肥寛昌(Honda鈴鹿・投手)
【7位】 原泉(第一工業大・外野手)
【育成1位】 中島彰吾(福岡大・投手)