日本時間29日、女子サッカーの国際親善試合がカナダ・バンクーバーで行われ、日本女子代表(なでしこジャパン)がカナダ女子代表を3−2で下した。なでしこは序盤、カナダにチャンスをつくられたものの、無失点で耐え凌ぐ。すると前半33分、MF永里亜紗乃のゴールで先制し、リードして試合を折り返した。後半は13分にMF阪口夢穂のオウンゴールで同点となったが、31分にFW大儀見優季の得点で勝ち越す。アディショナルタイムにMFソフィー・シュミットのゴールで再び追いつかれたが、直後にMF鮫島彩が決勝弾。競り勝ったなでしこが年内最後の一戦を連勝で締めくくった。

 永里、豪快左足ボレーで代表初ゴール(バンクーバー)
日本女子代表 3−2 カナダ女子代表
【得点】
[日本] 永里亜紗乃(33分)、大儀見優季(76分)、鮫島彩(90分+3)
[カナダ] オウンゴール(58分)、シュミット(90分+2)
 なでしこが劇的な勝利で年内最終戦を飾った。カナダのシンプルな攻撃、また自分たちのミスで思うように試合は進められなかった。それでも、W杯開催国であり、ロンドン五輪銅メダルのカナダ相手にしっかりと勝ち切る強さを見せた。

 なでしこは26日の1戦目からスタメンを9人入れ替えて2戦目に臨んだ。

 序盤はカナダに何度もチャンスをつくられた。4分、FWクリスティン・シンクレアにピッチ中央付近からのスルーパスに抜け出され、GK福元美穂が飛び出してクリア。だが右サイドにこぼれた球を拾われ、上げられたクロスの落としをゴール正面でMFジェシー・フレミングに右足で狙われた。シュートはDFに当たって事なきを得たものの、決定的な場面だった。

 なでしこは大幅なメンバー変更が影響したのか、DFラインの裏を簡単にとられたり、マークの受け渡しが遅れたりと守備での連係ミスが目立った。

 そして慣れない人工芝も苦戦のひとつの要因になっていたように映った。人工芝は天然芝のピッチよりもバウンドが大きくなるといわれており、なでしこもロングパスのファーストバウンドが大きくなってパスミスになる場面が見受けられた。

 苦しい立ち上がりとなったなでしこだが、巡ってきたワンチャンスをモノにした。決めたのは永里だ。33分、右CKが相手DFにクリアされ、PA手前で大きくバウンド。永里はこれにうまくタイミングを合わせて左足を振り抜き、ゴール右上へ叩き込んだ。永里のうれしい代表初ゴールで、劣勢だったなでしこが1点をリードして試合を折り返すことに成功した。

 しかし、後半もカナダペースで試合が進んだ。13分、カナダの左CKの場面で、キッカーのシュミットにショートコーナーからPA内に進入され、ゴール左45度の位置で右足を一閃された。シュートコースに入った阪口が頭でクリアにいったものの、シュートの勢いに押され、ボールはゴールネットに吸い込まれた。結果的に阪口のオウンゴールとなった。

 勝ち越しゴールを奪いたいなでしこは、25分、FW高瀬愛実に代えてMF宮間あやを投入。後半開始から出場の大儀見、FW大野忍を含めて前線をフレッシュな顔ぶれにした。大儀見が積極的に裏へ動き出し、宮間は前線から積極的にプレスをかけることでカナダのDFラインをゆさぶり続けた。

 すると31分、なでしこの策が実を結ぶ。DF有吉佐織が右サイドでボールを受けると、グラウンダーのロングパスをDFラインの裏へ走り込もうとした大儀見へ。パスコース上にいたカナダのDFがクリアにいったボールが浮き球となってPA手前にこぼれたところを、大儀見が滑り込みながら右足で合わせた。このシュートが前に出てきていたGKの頭上を抜いて左ポストに当たってゴールネットを揺らし、なでしこが勝ち越しに成功した。また、姉・優季(旧姓=永里)と妹・亜紗乃の姉妹によるアベック弾の実現となった。

 このまますんなりと逃げ切りたいところだったが、アディショナルタイム2分、GKからのロングボールをポストプレーでつながれ、混戦からFWジョゼ・ベーレーンガーにシュートを許す。福元がファインセーブで弾いたこぼれ球を、シュミットに押し込まれた。なでしこは土壇場で追いつかれてしまった。
 しかし、試合はまだ終わらなかった。直後のプレーでカナダのDFが自陣でボールの処理を誤り、プレスをかけていた途中出場の鮫島がボールを奪って一気にゴール前までドリブル。鮫島は前に出てきたGKとの1対1から冷静にゴール左へ流し込んだ。

 W杯開催国に連勝し、来年に弾みがついたことは間違いない。ただ、大会連覇へ向けての課題は少なくないことも事実だ。この日はDF岩清水梓が後半途中で足をつり、交代を余儀なくされるなど、人工芝が選手に与える負担の大きさが明るみに出た。試合内容もベストメンバーに近い布陣で臨んだ1戦目から一転、主導権を握れないまま90分を終えた。人工芝への対応、選手層の底上げは急務だ。W杯まで残り約7カ月。果たして、残された時間でなでしこはどこまでレベルアップできるか。