メジャーリーグのワールドシリーズは30日、最終第7戦が行われ、サンフランシスコ・ジャイアンツがカンザスシティ・ロイヤルズに3−2で勝利し、4勝3敗で2年ぶり8度目のシリーズ制覇を達成した。ジャイアンツは2−2の同点で迎えた4回、マイク・モースのタイムリーで1点を勝ち越し。この僅少差を5回から第5戦で完封勝利したマディソン・バムガーナーを投入する継投で守り切った。ロイヤルズは29年ぶりの世界一を逃した。2番・ライトで先発出場した青木は3打数0安打だった。
 バムガーナー、中2日も5回無失点でMVP(ジャイアンツ4勝3敗、カウフマンスタジアム)
サンフランシスコ・ジャイアンツ 3 = 020100000
カンザスシティ・ロイヤルズ   2 = 020000000
勝利投手 アフェルト(1勝0敗)
敗戦投手 ガスリー(1勝1敗)
セーブ  バムガーナー(2勝0敗1S)

 とっておきのジョーカーを5回から切った。
 3−2と1点をリードしたジャイアンツは、3日前に117球を投げてロイヤルズ打線をシャットアウトしたばかりのバムガーナーをマウンドに送り込んだ。

「大丈夫だ。必要な時に投入してくれ」
 試合前、ブルース・ボーチー監督は頼れる左腕から“リリーフOK”の返事をもらっていた。
「5回までは他のピッチャーで持たせることを期待していた」
 試合は指揮官が考えていたゲームプラン通りに進んだ。

 先制したのはジャイアンツだった。先頭のパブロ・サンドバルが死球で出塁すると、今シリーズ絶好調のハンター・ペンスがヒットでチャンスを広げる。ブランドン・ベルトも続いて無死満塁。7番のマイク・モース、8番のブランドン・クロフォードがともに犠牲フライを放ち、2点を先行する。

 しかし、ロイヤルズもすぐさま反撃した。その裏、無死一塁からアレックス・ゴードンが右中間を破る二塁打で一塁走者が長駆ホームイン。1点を返して、なおも1死一、三塁からオマー・インファンテがセンターへの犠牲フライを打ち上げ、試合を振り出しに戻す。

 さらに2死一、二塁で青木に打順が巡ってきたところで、ジャイアンツベンチは左腕のジェレミー・アフェルトにピッチャーをスイッチ。早々と継投策に打って出る。これが成功し、青木は高いバウンドのショートゴロ。二塁の真上で捕球し、フォースアウトでピンチを切り抜ける。

 すると4回、ジャイアンツはサンドバル、ペンスの連打で好機を演出。ベルトのレフトフライの間にサンドバルが三塁に進み、1死一、三塁とする。ロイヤルズベンチは、ここで先発ジェレミー・ガスリーを諦め、勝利の方程式の一角、ケルビン・ヘレラをつぎこむ。

 勝負の継投策も、ロイヤルズは失点を防げなかった。迎えたモースの当たりは詰まりながらもライトの前へ。三塁走者が生還し、ジャイアンツが1点を勝ち越した。

 これで、いよいよバムガーナー登板の機は熟した。5回、今シリーズ、16イニングで1失点のエースが登場する。しかし、慣れない中継ぎのせいか、先頭のインファンテにヒットを許す。送りバントで1死二塁。打席には対バムガーナー、16打数0安打の青木。苦手左腕から値千金の同点打を放ちたいところだったが、レフト線へ弾き返した打球は、あらかじめ左に寄っていた外野手のグラブの中へ。ツキにも見放され、ロイヤルズは追いつけない。

 こうなると、バムガーナーも乗ってくる。6回、7回、8回はいずれも三者凡退。青木も8回1死でショートゴロに倒れ、攻略できなかった。ロイヤルズもヘレラから、ウェード・デービス、抑えのグレグ・ホランドを送る必死の継投。相手に追加点を与えず、ついに試合は9回裏に突入した。

 バムガーナーは簡単に2死を奪い、シリーズ優勝までは、あとひとり。後がなくなったロイヤルズは、ゴードンがセンター前に弾き返し、意地をみせる。さらに、この打球をセンターが後逸。一気に三塁へ進み、ロイヤルズファンで埋まったスタジアムは風雲急を告げる。

 それでも、この左腕は動じなかった。最後のバッター、サルバドール・ペレスは自慢の直球で押し、サードへフライを打ち上げさせる。ファウルグラウンドのサンドバルが丁寧にキャッチし、歓喜の瞬間が訪れた。

 MVPには文句なしで、バムガーナーが選ばれた。ワールドシリーズは通算5試合で4勝1セーブ、失点はわずかに1。まさにシリーズ男と言える働きぶりで、ここ5年で3度目の世界一に貢献した。

 一方、ロイヤルズはワイルドカードからの快進撃も、頂点には一歩及ばなかった。青木はシリーズ通算で14打数1安打。初の大舞台で力を発揮しきれなかった背番号23は「現実を受け止められない」と、試合後のインタビューにも言葉がなかなか出てこなかった。
「3年目にしてワールドシリーズに出られて、すごく意気に感じてやっていたが、実際、負けてしまって、すごく悔しい。今は、そういう気持ちしかない」
 その目には悔し涙があふれていた。