サッカーW杯の優勝国に贈られるトロフィーは1998年、本国開催でフランスが頂点に立つまではウルグアイ(2回)、イタリア(3回)、西ドイツ(3回)、ブラジル(4回)、イングランド(1回)、アルゼンチン(2回)の6カ国で回し合っていた。

 

 フランスが7カ国目の覇者となるまでには、第1回大会から数えて68年の歳月を要した。スペインが8カ国目の栄誉に浴するのは、その12年後である。

 

 ラグビーW杯は、サッカーW杯に遅れること57年、1987年にスタートした。優勝国はニュージーランド(3回)、オーストラリア(2回)、南アフリカ(2回)、イングランド(1回)の4カ国。9回目となる日本大会の決勝はイングランド対南アフリカだから、5カ国目が誕生することはない。

 

 ラグビー日本代表がサッカー日本代表に対し、ふたつ自慢できることがあるとすれば、出場国の多い少ないはあるものの、ひとつはサッカーより先にベスト8進出を果たしたこと。ふたつ目はW杯優勝国を倒していることである。前回のイングランド大会での南アフリカ戦勝利、“ブライトンの奇跡”がそれだ。サッカーはまだW杯本大会でW杯優勝国から白星をあげたことがない。

 

 スポーツの現場において、よく用いられる言説のひとつに「優勝したことのないチームは優勝のしかたがわからない」というものがある。長い時間をかけて遺伝子のごとく刻まれる“勝者のメンタリティー”は一朝一夕ではチームの血肉にならないということなのだろう。

 

 ラグビーW杯が開幕する前、日本が属するA組の1位通過本命は世界ランキング1位のアイルランドと見られていた。競馬風に言うなら、対抗が同7位のスコットランド。同10位の日本は、普通なら3番手だが、ホームの利を考慮して「ベスト8進出のチャンスあり」との見立てが一般的だった。

 

 それが2位アイルランドに勝ち点3をつけての1位通過は、日本の“時価”の上昇とホームの追い風に加え、このグループが全て優勝未経験国だったことも大きいのではないか。

 

 日本ラグビーと日本サッカー。この先、果てしなく遠い道のりが続くが、どちらが先に世界の頂点に立つのか。両雄の競争と共闘に期待する。令和は“フットボールの時代”かもしれない。

 

<この原稿は19年10月30日付『スポーツニッポン』に掲載されたものです>


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