「世界へ発進! 脱日本式ゴルフのすすめ」ではザ・ロイヤル ゴルフクラブ(ザ・ロイヤルGC・茨城県鉾田市)を舞台に、ゴルフの新たな楽しみを提案していきます。今回はザ・ロイヤルGCが世界基準のゴルファー育成の一貫として取り組む「4スタンス理論」を取り上げます。これまでのアマチュアゴルファー対象の「4スタンスゴルフ特別レッスン」のレポートからさらに一歩進んで、ツアープロが実際に4スタンス理論をどう実際のプレーにいかしているのか? 4スタンス実践プロの特訓に1日密着してみました。

 

 ツアープロと4スタンス

 今回、4スタンスレッスン&ラウンドを行ったのは、今年28歳の小袋秀人プロだ。

 

 小袋プロは、日本大学在籍中の2011年に日本学生ゴルフ選手権、12年に日本アマチュア選手権を制し、その後、大学を中退しプロに転向した。183センチと恵まれた体格から生み出されるパワフルなスイングが身上で、現在、下部ツアーのAbemaTVツアーに参戦中だ。

 

 小袋プロが4スタンス理論と巡り合ったのは、プロ2年目の14年、日本ゴルフツアー機構(JGTO)の宮崎合宿に参加したときのこと。アマチュア時代にも知人から「4スタンス理論というものがある。ゴルフにもいかせる」と聞いていたが、このときはまだ実践するには至らなかった。それがプロになってから参加した宮崎合宿で、講師である4スタンス理論の創始者・廣戸聡一氏の話を聞き、これまで耳にしたことがなかった体のメカニズムや体のスムーズな動かし方に感銘を受けたという。

 

「これまで見たり聞いたりしていたゴルフ理論とはまったく異なっていました。軸や体幹などといったよく耳にしていた言葉だけではなく、廣戸さんの話は体の根本の動かし方や人間の体がそもそも持っている特性などにも言及していました。最初に4スタンスというものを知ったときには難しく感じた部分もありましたが、実際に話を聞くことで4スタンス理論がストンと自分の中に入ってきたんです」

 

 これをきっかけにして4スタンス理論を自分のゴルフに取り入れ、「体が柔らかく使えるようになった」と語る小袋プロ。今回取材したザ・ロイヤルGCの特訓では道場での特別レッスンとコースラウンド、2種類のメニューを実施した。まずは道場編からお伝えしよう。

 

 改めて4スタンス理論について触れておけば、人間はバランスのとり方と体の動かし方で4つのタイプに分けられる。

 

 バランスをとる場所が足の内側か外側か、さらに足のつま先寄りかカカト付近か。そして体を動かす際に肩と股関節の連動が左右同じ側(パラレル)か対角線上(クロス)か。それぞれの組み合わせでA1(つま先・内側でバランスをとるクロスタイプ)、A2(つま先・外側でバランスをとるパラレルタイプ)、B1(カカト・内側でバランスをとるパラレルタイプ)、B2(カカト・外側でバランスをとるクロスタイプ)と分類される。これは利き目と同じく、自分の意思でコントロールできるものではなく、個人が持って生まれた特性である。

 

(写真:中央の廣戸氏は身振り手振りを交え解説。小袋プロ<奥>、松田プロは一挙手一投足を見逃すまいと注視。)

 ゴルフに当てはめれば、各タイプごとにフォーム、スイングが異なる。詳細については当コラムのバックナンバーや廣戸氏がこの10月に上梓した「廣戸聡一ブレインノート 脳と骨格で解く人体理論大全」(日本文芸社)などの著作を参考にしてほしい。ちなみに小袋プロはA1タイプで、4スタンス理論と出会う以前は、旧来のフォームやスイングの常識に固執し、腰を痛めたこともあったという。

 

 さて、今回の4スタンス理論特訓において廣戸氏が改めて小袋プロに教えたのが、「狙い(ターゲッティング)」だった。

 

 狙いは3段階

 近年、ゴルフツアーのテレビ中継を見ていると、ティーアップしたボールの真後ろに立ち、クラブを真正面に掲げて狙い所を定める。そんなルーティンをとるゴルファーが多いことに気がつくだろう。これがいわゆる「狙い(ターゲッティング)」であり、ゴルフでいえばボールの落とし所を定める動作だ。当然、ただボールの真後ろから狙い所を見ればいいというわけではない。4スタンス理論では「狙い」には以下の3段階があるとしている。

 

1. 狙うと考える(脳を発動させる)。
2. 正中線と手足をターゲットに向ける(安定して立ち、体の真ん中・正中線と手先・足先も同じ方向へ向ける)。
3. 目標を見据える(このときにA1タイプはみぞおち胸側、A2タイプはみぞおち背中側、B1タイプは首の付根の背中側、B2タイプは首の付根の胸側で見る意識を持つ)。

 

 さらに今回の道場特訓では、狙いを定めた後、アドレスに入る前、鎖骨を動かす予備動作についても指摘があった。鎖骨左側を下げ、右側を巻き上げる動作で体に角度をつける。この後にアドレスに入ることで狙いが定まり、スムーズなスイング始動のきっかけとなるのだ。

 

 午前中、しかもラウンド前の早い時間から、こうした「廣戸語録」を頭に詰め込み、次に体で理解した小袋プロは、ラウンドに出る前、一旦、練習場へ立ち寄った。照準を定めるルーティンの確認など最終チェックを実施するためだ。

 

 結果は……、本人も驚くほど乾いたインパクト音が鳴り響き、ボールは狙った方向へ、しかも「強いボール」が飛んでいった。小袋プロの感想。
「いつも朝イチで打つ練習場のボールとは、球の質が違っていました。狙いどおり、思い通り、そして強いボールが打てました。ボールが意思を持って飛んでいっている気がして、今日のラウンドが楽しみです」

 

(写真:左から小袋プロ、野津社長、小田プロ、松田プロ)

 新たな4スタンスゴルフを実践するためのラウンドは小袋プロの他、ザ・ロイヤルGC所属で小袋プロとは旧知の仲である松田一将プロと小田教久プロ、ザ・ロイヤルGCコースオーナーの野津基弘社長の4人で回ることとなった。プロゴルファーが4スタンスゴルフを実践するということで、プライベートラウンドながらも関係者を含めて"ギャラリー"も十数人が集まった。通常の練習ラウンドと比べれば、より実戦に近いシチュエーションだ。


「ギャラリーがいるのは、プレッシャーとの戦いも学べる。むしろ大歓迎ですね」と意気込む小袋プロのラウンドレポートは、次回、4スタンスゴルフ・ラウンド編にて詳述しよう。

(つづく)

 

<小袋秀人(こぶくろ・ひでと)プロフィール>
1991年4月19日、神奈川県出身。幼少期からクラブを握り、ゴルフを始めたのは5歳のとき。大学時代は名門・日本大ゴルフ部に所属し、2011年に朝日杯争奪日本学生ゴルフ選手権に優勝。翌12年は日本アマチュア選手権を制覇した。12年年末にプロへ転向し、大学を中退。現在はAbemaTVツアーを戦いながら、今季は国内男子ツアーの中日クラウンズ、セガサミーカップ、日本オープンに出場した。身長183センチ、体重80キロ。

 

(取材・文/SC編集部・西崎 写真/ザ・ロイヤルGC、SC編集部 監修/二宮清純)

 

◆イベント告知
ザ・ロイヤルGCでは定期的にゴルフ愛好家を対象にしたレッスン「廣戸聡一4スタンスゴルフスペシャルデー」を実施している。廣戸氏や担当インストラクターの流れるようなトークで難しいはずの4スタンス理論がすいすいと耳に入り、スコアと飛距離も伸びると好評でリピーターも多い。今後の開催日程など問い合わせはザ・ロイヤル ゴルフクラブ(Tel. 0291-39-7511)まで。

 

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