19日、IBSAブラインドサッカー世界選手権グループリーグが行なわれ、最終戦でフランスと対戦した日本は1−1のドローとした。これで通算成績を1勝0敗2分けとした日本は、グループリーグ2位で通過し、初めて決勝トーナメント進出を決めた。

 ロベルト、PKで先制ゴール(代々木)
日本代表 1−1 フランス代表
 日本のブラインドサッカーの歴史に、また新たな1ページが刻まれた――。

 この日、日本はパラグアイ戦、モロッコ戦と、これまで途中出場だったキャプテンのFW落合啓士をスタメンで起用した。魚住稿監督はその理由をこう語った。
「ウォーミングアップの時からドリブルのスピードもシュートの精度も高く、抜群に調子が良かった。気持ちも乗っていたのが感じられたので、今日は落合でいこうと決めた」
 前半3分、その落合がこの試合チーム初のシュートを放ち、メンバーを鼓舞した。

 だが、ここまで通算成績を0勝1敗1分けと、勝ち点を伸ばし切れていないフランスは、決勝トーナメントに進出するためには、この試合で絶対に勝たなければならなかった。そのため、前半から果敢にゴールを狙い、コーナーキック(CK)から鋭いシュートを放つなど、日本がヒヤリとする場面も多かった。それでも、日本は全員で死守し、ゴールを許さない。遠目からでもゴールを狙ってくるフランスに対し、日本は高い位置でプレッシャーをかけ、いい体勢でのシュートをさせなかったのが、功を奏した。残り7分でフランスは3本のCKを得たものの、日本の堅固な守備を破ることはできなかった。試合は0−0のまま、後半へと突入した。

 後半3分、日本に大きなチャンスが訪れる。ブラインドサッカーではゴールキーパー(GK)は縦2メートル、横5メートルのゴールエリア外のボールに触れることはできない。ところが、日本のCKからゴール前での激しい攻防戦の中、相手GKがゴールエリア外のボールに触れてしまったのだ。これで日本はペナルティキック(PK)を得る。しかし、MF加藤健人の放ったシュートはクロスバーを越えてゴールラインを割り、先制することはできなかった。

 中盤は激しいボールの奪い合いとなり、プレーが激しさを増す中、お互いにファウルを重ねてしまう。後半12分の時点で、両チームともにチームファウルが3つとなり、相手に第2PK(ゴールから8メートル離れた位置からシュートを打つ)が与えられる4つ目まであと1つとなっていた。

 日本に再びチャンスが訪れたのは後半15分。自陣でボールを奪ったDF佐々木ロベルト泉が自らドリブルでゴール前へ切り込む。シュートしようとした瞬間、相手ディフェンダーに足をかけられた。このプレーにイエローカードが出され、日本にPKが与えられた。

 ゴール前にセットされたボールの位置を手で確認したロベルトは、ゴールをイメージしながら、レフェリーの笛が鳴るのを静かに待っていた。そして、ピッと笛が鳴ると、ロベルトは右足で素早くけり込んだ。「ボールにすべてを注ぎ込んだ。みんなの気持ちも一緒に、キックにこめた」というボールは、ゴールの右隅に勢いよくささり、ほぼ満員のスタンドからは大歓声が沸き起こった。

 しかし、そのわずか1分後、守備の要であるDF田中章仁がファウルを犯し、チームファウルが4つとなった。これでフランスに第2ペナルティが与えられた。フランスの選手が放ったシュートは、GK佐藤大介の手に触れるも、そのままゴールネットを揺らした。これで1−1となる。

 その後、お互いに何度かシュートチャンスが訪れるも、枠の中をとらえきれず、得点が奪えない。引き分けでも決勝トーナメント進出が決まることがわかっていた日本も、何としても勝利を奪おうと、最後まで果敢にゴールを狙った。しかし、25分が経過し、試合終了のホイッスルがピッチに鳴り響いた。日本は前日のモロッコ戦に続いてドローに終わった。

 しかし、通算成績を1勝0敗2分けとし、勝ち点が5となった日本は、パラグアイに次ぐ2位でグループリーグを突破。これまで越えることのできなかった壁を、ひとつ乗り越え、今大会で目標とするベスト4まであと1勝と迫った。

 キャプテンの落合は、次の試合に向けてこう語った。
「次はトーナメントなので、勝たなければいけない。明日はオフなので、自分たちがやってきたことをもう一度、練習してきたことを試合で出すために、チームで確認したい。あとは(試合で)シュートを打って、勝つだけ」

 日本にとって未知の世界である決勝トーナメントで、果たして魚住ジャパンはどんな戦いを見せるのか。そして、目標とするベスト4進出の道を切り拓くことができるのか。準々決勝は21日にキックオフだ。

(文・写真/斎藤寿子)