22日、IBSAブラインドサッカー世界選手権が行なわれ、日本は5〜8位決定予備戦でドイツに1−0で勝利。24日の5、6位決定戦でパラグアイと対戦する。前半の序盤から主導権を握り、果敢に相手ゴールをおびやかした日本は、前半14分にMF黒田智成のゴールで先制。後半にはドイツが前線に3人を置く攻撃的な布陣で得点を狙いにくるも、日本は最後まで集中力を切らすことなく、1点を守り切った。

 黒田、初戦に続くゴール(代々木)
日本代表 1−0 ドイツ代表
 3度目の世界選手権で初めて決勝トーナメントに進出した日本だったが、前日の準々決勝では同じアジアの強豪、中国にPK戦の末に惜しくも敗れた。しかし、その悔しい敗戦を引きずってはいなかった。
「もう一度、初戦の気持ちで再スタートを切ろう。今日の試合がすべて次につながる」
 魚住稿監督は、そう言って選手たちをピッチに送り出した。

 この日の相手は、3月の親善試合で0−3と完敗したドイツだったが、前半、試合の流れをつかんだのは日本だった。いつもよりも高い位置で守備をしき、FW落合啓士、黒田が相手ボールを奪うと、巧みなドリブルでゴール前へ運び、シュートチャンスをつくる。前半10分にはクリアしたボールを黒田が拾い、一気にゴール前へ。右足でのシュートはジャストミートするも、ゴールの枠には飛ばなかった。

 中盤はドイツの攻撃が続いたところで、日本はタイムアウトをとった。これが再び日本に流れを引き寄せることになる。タイム明け直後の前半14分、黒田がゴール前にボールを運び、シュートチャンスを狙う。ゴール前の混戦から、ドイツのディフェンダーが見失ったルーズボールをガイドの指示のもとに右足でシュート。ボールはドイツのゴール右すみに刺さり、初戦のパラグアイ戦に続くゴールとなった。

 実はこの日、ピッチは濡れており、スリッピーな状態となっていた。そのため、黒田は「練習の時から滑ってボールが足につかない状態で、今日はどんなふうにプレーすればいいのかという不安があった」という。試合中も足元が滑り、思うようなプレーができずにいたという黒田は、ゴールも「決してきれいなシュートではなかった」という。それでも「何が何でも入れてやろうと思っていた」という黒田。「みんなの気持ちで入ったゴールだと思う」と語った。

 日本はその後も、守りに入ることなく、果敢に攻める。コーナーキック(CK)から黒田が右足でシュートを放つと、川村も負けじとゴール正面から左足でシュートと、2点目を狙った。ドイツも終盤に反撃を見せ、日本のゴールをおびやかした。しかし、日本はシュートコースを塞ぐ鉄壁の守りで死守。1−0と日本リードで折り返した。

 後半に入ると、ドイツは自陣のゴールにディフェンダー1人だけを残し、前線に3人が上がるという攻撃的な布陣をしいた。しかし、日本の守備は乱れることはなく、逆にディフェンスからルーズボールを拾い、カウンターで攻撃へとつなげた。だが、お互いにゴールネットを揺らすことはできず、刻々と時間が過ぎていった。

 すると、残り36秒のところで、黒田が倒され、日本はゴールを狙える位置でのフリーキックを得た。黒田はすぐにシュートせず、ボールをキープして時間を使ってからシュートを放った。結果、ドイツに反撃の時間はなく、まもなく試合終了のホイッスルが鳴り響いた。日本が1−0で勝利し、5、6位決定戦へと駒を進めた。

 これまで以上に前半から攻める姿勢が見られたことについて訊かれると、黒田はこう答えた。
「ドイツはパワーがあるので、PK戦には強い。だから50分の中で決めたいという気持ちがあった。守備の中からルーズボールを拾って攻撃につなげ、シュートで終わるという意識がチーム全員にあった」

 そして1点を守り切った守備については、こう手応えを口にした。
「今日はポジションどりに加えて、タフに体をぶつけていこうということを意識した。その中でドイツのようなフィジカルの強い相手を無失点で抑えることができるという自信ができた」

 一方、魚住監督はディフェンスラインを上げた理由について、こう語っている。
「今後、徐々にライン上げて、最終的には4人のダイヤモンドをもっと高い位置に置きたいと思っている。攻撃と守備を切り分けることなく、融合したかたちで戦えるようにしていきたい。そういう意味で、今日は少しラインを上げることができたのは大きな成果だった」

 最終日となる24日の5、6位決定戦では、初戦で1−0で競り勝ったパラグアイと対戦する。「最後はパラグアイに勝って、みんなで喜び合って終わりたい」と黒田。魚住監督も「5位と6位とではまったく違う。日本の目標はベスト4だった。それに最大限近づくためにも最後は勝って5位で終わりたい」と意気込みを語った。アジア初開催となった今大会、果たして日本は最後に何をつかむのか。パラグアイとの一戦に注目したい。

(文・写真/斎藤寿子)