24日、IBSAブラインドサッカー世界選手権が行なわれ、日本は5位決定戦でパラグアイと対戦。フィジカルに勝る南米の強豪相手を堅固な守備で無失点に抑えたものの、攻撃では得点を奪うことができず、0−0で勝負の行方はPK戦にもちこまれた。そのPK戦では日本は5人が失敗に終わる。一方、パラグアイも4人目までは失敗するも、5人目が成功し、1−0でパラグアイが勝利。日本は最終戦を白星で飾ることはできなかったが、過去最高位の6位となった。

 日本、黒星も過去最高位の6位(代々木)
日本代表 0−0 パラグアイ代表
(PK 0−
「決勝戦のつもりで戦おう」
 試合前、魚住稿監督はそう言って、選手たちを鼓舞したという。相手はグループリーグの初戦、MF黒田智成のゴールを守り切って1−0で勝利したパラグアイ。この試合でも、無失点に抑えて、少ないチャンスをモノにするという展開を狙った。

 前半、最初のシュートをキャプテンのFW落合啓士が放ち、日本がコーナーキックを得る。しかし、これは得点に結びつけることができなかった。すると、中盤以降は徐々にパラグアイが主導権を握り始め、日本はなかなか攻撃の糸口をつかむことができない。攻撃に2人をかけて左右に振り、ディフェンスの壁を崩しにかかるパラグアイ。ゴール前では巧みなドリブルとフィジカルの強さでキープしながらディフェンスの裏にまわり、シュートチャンスをつくった。しかし、GK佐藤大介が好セーブを見せ、得点を許さなかった。

 0−0のまま、試合は後半へと突入した。後半10分、守備からボールを奪ったMF川村怜が得意のドリブルでゴール前へ進むと、左右に相手ディフェンダーを振って、シュート。しかし、これはゴール左に外れた。

 残り10分を切ると、パラグアイのプレーが激しさを増し、日本はファウルを重ねてしまう。後半18分には守備でMF加藤健人が、後半10分には攻撃をしかけた黒田がルーズボールをけりこもうとしたところで相手の足にキックがあたり、イエローカード。これでチームファウルは3つとなり、第2PKが与えられる4つ目まで残りひとつとなった。

 すると、残り44秒のところで、加藤が後ろからパラグアイの選手に当たりにいくかたちとなって4つ目のファウルとなり、パラグアイに第2PKが与えられてしまう。しかし、これをパラグアイが外し、事なきを得る。そして、0−0のまま試合終了のホイッスルが鳴り、PK戦での勝負となった。

 満員のスタンドからは大きな日本コールが鳴り響き、チームも円陣を組んで気合いを入れた。しかし、日本は落合、加藤、川村と立て続けに失敗に終わる。それでも途中出場のGK安部尚哉がファインセーブを見せ、パラグアイに得点を許さない。お互いに3人を終えたところで0−0。ここからサドンデスとなった。日本は4人目のDF佐々木ロベルト泉が右ポストに当て、失敗。パラグアイの4人目はグラウンダーの鋭いシュートを放つも、これを安部が両足でセーブした。そして5人目。日本はMF三原健朗のシュートがゴール左に外れてしまう。するとパラグアイの5人目のシュートがゴール右上、コーナーぎりぎりのところに突き刺さり、大接戦はパラグアイに軍配が上がった。

「選手たちを誇りに思う」
 試合後のインタビューで魚住監督はそう言って、選手たちを称えた。
「6試合を通して、300分間、流れの中で一度も失点することなく最後まで守り続けてくれた。これまで一度も勝つことができなかった世界選手権という大舞台で2勝することができた。目標のベスト4には届かなかったが、リオでのメダルが決して大風呂敷を広げて言っているわけではなく、本当に狙えるというところを見せることができたと思う」

 一方、悔しさを露わにしたのが、黒田と落合だった。「最後は笑顔で終わりたかったが、あと一歩のところで得点を取り切れず、自分たちの力不足を感じた」と黒田が語れば、落合も「悔しいし、応援してくれた人たちを笑顔にできなかったことが残念」と率直な感想を述べた。

 今大会、日本は守備では、グループリーグのフランス戦、第2PKでの1失点のみに抑え、世界の強豪相手にも、日本の組織的な守備が通用するところを十分に照明することができた。だが、その一方で、やはり攻撃力の弱さを露呈した大会でもあった。

 今後の課題について魚住監督はこう述べた。
「サッカーは得点を取らなければ勝つことはできない。今しっかりと出来上がっている守備の(4人の)ダイヤモンドのラインを、1メートル、2メートル上げて、高い位置からプレスをかけて早い段階でボールを奪うなどして、攻撃の回数を増やしていきたい。また、最後は1対1の勝負になるので、個人の技術も磨いていきたい」

 来年にはリオデジャネイロパラリンピックの出場権をかけた戦いが待っている。それまでの課題について、落合はこう語った。
「今は(フィールドプレーヤーの)4人全員で守って、ボールを奪ったら1人で攻撃するというスタイルだが、監督がやろうとしているのは2人で攻めるスタイル。ところが、今大会では相手が強くて(ディフェンスラインを)引かざるを得ず、1人で攻めるしかなかった。監督が目指しているサッカーに選手がまだ到達していない。来年のリオ予選までには、リスクを背負っても守れるくらいの1対1の強さや、ドリブルで突破して最後は強いシュートで打ち切る強さを身に着けて、監督が自信をもって、やりたいサッカーができるようにしたい」
 
 これまで勝利すら挙げたことのなかった大舞台で2勝を挙げ、初の決勝トーナメント進出、そして最高位となる6位に躍進したことは間違いない事実である。「世界の強豪と6試合戦えたことは自分たちの財産」と黒田が語ったように、今大会を糧に、さらなる成長を期待したい。次は、いよいよ初のパラリンピック出場に向けた戦いとなる。

(文・写真/斎藤寿子)