第165回 ラグビーの余熱 継続こそ力なり

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 日本人は熱しやすく、冷めやすい民族と言われている。

 

 

 少年の頃、スポーツ界最大のヒロインと言えば、女子プロボウラーの中山律子だった。

 

 1970年8月、「レディズ・チャレンジボウル」における女子プロ初のパーフェクトゲームの衝撃は未だに忘れることができない。

 

 当時、中山はボウリングのみならず、CMの「女王」でもあった。

 

 〽律子さん、律子さん、中山律子さん さわやかフェザー~

 

 私と同年代で、このCMを知らない人は、まずいないだろう。どこの家に行っても、浴室をのぞくと、花王の「シャンプー」が置いてあった。

 

 しかし、中山が巻き起こしたボウリングブームも次第に下火になり、やがてテレビから姿を消す。

 

 ピーク時に全国で3697カ所もあったボウリング場も、2017年には777カ所に減ってしまった。

 

 近年、高齢者を中心に再びブームの兆しがあるというが、70年代前半の活況を取り戻すのは容易ではあるまい。

 

 ジャパンのW杯での活躍により、“にわかラグビーファン”が急増している。

 

 史上初の決勝トーナメント進出を決めた13日のスコットランド戦の平均視聴率は39.2%(関東地区・ビデオリサーチ調べ)。瞬間最高は53.7%(同)に達した。

 

 ラグビーとボウリングとでは競技の性格も違えば、規模も違う。比較すること自体ナンセンスなのだが、一般国民からすれば、数ある娯楽の中のひとつに過ぎない。

 

 想定を上回る追い風を一過性のものにしないためには、現行の「トップリーグ」を名実ともに国民的な人気リーグに衣替えするしかない。2021年秋に予定されている新リーグの成否が日本ラグビーの命運を握っている。

 

 ラグビー界には苦い記憶がある。4年前のイングランド大会で、ジャパンは南アフリカ戦の歴史的勝利を含む3勝をあげた。

 

 成田に帰国した選手たちを待っていたのは、今まで目にしたことのない数のメディアやファンだった。

 

 こうした追い風の中、15‐16シーズンのトップリーグが11月に開幕した。3連覇を狙うパナソニック対スター揃いのサントリーという好カードだったが、入場者は前年の開幕戦を下回る1万792人(秩父宮)。空席の目立つスタンドを見やりながら、田中史朗は寂しそうに吐き捨てた。

 

「ラグビーが負けた日です」

 

 ラグビー界は同じ「愚」を繰り返してはならない。重要なのは「祭りの後」だ。W杯の余熱を利用しない手はない。

 

<この原稿は『週刊漫画ゴラク』2019年10月11日号に掲載されたものです>

 

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