南アフリカの3度目の優勝で幕を閉じた2019年ラグビーW杯日本大会は、全45試合中17試合が関東地区(東京都、神奈川県、埼玉県)で開催された。これは全試合の38%にあたる。

 

 日産スタジアムで行なわれた南アフリカ対イングランドの決勝は、スポーツに限ればスタジアムレコードとなる7万103人の大観衆で埋まった。02年サッカーW杯日韓大会の決勝戦、ブラジル対ドイツの6万9029人をも上回るものだった。

 

 関西地区(大阪府、兵庫県)でも8試合が行われたが、全試合の18%に過ぎなかった。中国・四国地区では1試合も開催されなかった。

 

 ラグビーW杯が終われば、来年は東京五輪・パラリンピックだ。ホストシティはもちろん東京だが、会場は千葉県、神奈川県、埼玉県、茨城県と関東の1都4県にまたがる。

 

 最近、講演やシンポジウムなどで関西方面に出向くと「スポーツは東高西低ですな」と冷ややかに言われる。「いや、21年には関西を中心にワールドマスターズ(WM)が開催されるんですよ」と返しても、反応はイマイチだ。

 

 WMは<国際マスターズ協会(IMGA)が4年ごとに主催する、30才以上の成人・中高年の一般アスリートを対象とした生涯スポーツの国際総合競技大会>(大会HP)。五輪の翌年に開催され、第1回は85年、カナダのトロントが舞台となった。第10回が関西大会。アジアでは栄えある初開催だ。

 

 近年、平均寿命の延伸に伴い、世界中でWMに対する注目度が高くなっている。それが証拠に17年大会は85年大会に比べ、参加者が3倍に増えた。<参加型スポーツとフィットネスは、アメリカでは850億ドル(約9兆2845億円)のビジネス市場であり、経済の分野でも劇的な速度で成長した分野である>(『アスリートは歳を取るほど強くなる』ジェフ・ベルコビッチ著・草思社)

 

 関西WMの4年後、2度目の大阪万博が開催される25年、団塊の世代全員が後期高齢者(75歳以上)の仲間入りを果たす。医療費は18年度の39.2兆円から47.4兆円に達する見通し。継続的な医療・介護を必要としない健康寿命を1年でも平均寿命に近付ける上で、「生涯スポーツ」の普及と振興は急務である。関西WMには、その旗振り役としての期待がかかる。

 

<この原稿は19年11月13日付『スポーツニッポン』に掲載されたものです>


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