7日、東京・味の素スタジアムでJ1昇格プレーオフの決勝が行われ、モンテディオ山形(リーグ6位)がジェフユナイテッド千葉(同3位)を1―0で下し、4年ぶりにJ1昇格を決めた。試合は互いにチャンスをつくれない時間帯が続いたが前半37分、山形はがFW山崎雅人のゴールで先制。1点をリードして試合を折り返した。後半は千葉の猛攻に防戦一方となったものの、GK山岸範宏を中心に体を張った守りでゴールを死守した。

  山岸、ファインセーブで勝利貢献(味スタ)
ジェフユナイテッド千葉 0−1 モンテディオ山形
【得点】
[山形] 山崎雅人(37分)
 準決勝につづき、山形を勝利に導いたのは守護神だった。山岸は準決勝のジュビロ磐田戦で1−1で敗退濃厚(プレーオフは90分間で同点の場合はリーグ戦上位が勝ち抜け)だったアディショナルタイムに、CKに攻撃参加して値千金の決勝ヘディング弾を記録。そして決勝では“本業”のGKとして千葉の猛攻をシャットアウトした。

 引き分け以上で昇格が決まる千葉に対し、山形はJ1に上がるためには勝つしかなかった。
 試合は両チームがなかなかシュートまで持ち込めない時間帯が続いた。その中で山形は決定的なピンチとチャンスをともに1度ずつ迎えた。

 まず訪れたのはピンチだ。前半25分、左CKをMF町田也真人に頭でドンピシャリのタイミングで合わされた。山岸が横っ飛びで防ぎにいったシュートは、わずかにゴール左へ外れた。その瞬間、ゴール裏にいた山形サポーターからは大きな安堵のため息がもれた。

 そして迎えた37分、今度は山形にチャンスが巡ってきた。左CKからMF宮阪政樹が直接ゴールを狙うもGKに弾き出される。しかし、そのクリアボールを拾った宮阪がゴール前に上げたクロスを、山崎がヘディング。ゴール前でバウンドしたボールは、左ポストをかすめてゴールに吸い込まれた。山形は巡ってきたチャンスをしっかりとモノにしてみせた。

 後半は攻勢を強めてきた千葉に山形が終始押し込まれた。だが、山岸を中心とした粘り強い守備がことごとく千葉のシュートを弾き返す。22分、カウンターから左サイドの町田にボールを通され、PA内でシュートを打たれるも、これはMF松岡亮輔がスライディングでブロックした。33分には、右サイドでかたちをつくられ、最後は中央にいたMF谷澤達也にミドルシュートを打たれた。シュートはゴール右下を捉えていたが、山岸が弾き、こぼれ球をDFがクリアした。

 DFがクリアするもしくは山岸がセーブするたび、約1万人つめかけた山形サポーターから大歓声が起こった。その中で「僕は試合が終わるまでは、気持ちいい充実感というのは味わわないようにしている」という山岸を筆頭に、山形イレブンは高い集中力を保って劣勢をしのいでいった。

 勝利が目前に迫ったアディショナルタイムにも山形はピンチを迎えた。FW森本貴幸にPA内右サイド深くでボールを収められると、奪いにいった山岸もうまくいなされ、中央のFWケンペスにつながれる。ケンペスが左足で放った強烈なシュートがゴールマウスへ飛んだ。決まればリーグ上位の千葉の昇格が決定的となるシュートを防いだのは、守護神だ。山岸は森本にいなされた後にすぐ体勢を立て直すと、すばやくゴール前に戻ってケンペスのシュートを横っ飛びでセーブしたのだ。山崎がゴールを決めた時と同等の歓声がスタジアムを包んだ瞬間だった。

 タイムアップの瞬間、山岸はピッチにひざをつきながら両手を突き上げた。準決勝で1点を“奪った”守護神は、決勝では1点を“守り”切った。
「嬉しさと安堵感が両方入り混じっていた」
 山岸は勝利の瞬間の心境をこう明かした。今年6月、13年半在籍した浦和レッズから期限付きで山形へ移籍した。浦和には今季にサンフレッチェ広島から移籍してきた日本代表GK西川周作が君臨。出場機会を求めての移籍だった。山岸は「僕は山形に自分のキャリアを生き返らせるチャンスをいただいた」とクラブに感謝を述べるとともに、「(昇格を勝ち取って)まだまだ微力ながらも少しだけ恩返しができたかなと思う」と笑顔を見せた。

 また守護神は「昇格したことに満足して成長していく、前進していく歩みを止めてはいけない」とも語った。J1昇格プレーオフを制した過去の2チーム(大分、徳島)は、ともにJ1最下位という成績でJ2に逆戻りした。過去の失敗を繰り返さないためには何が必要なのか。
「より厳しさ、より質の高いものをチーム全員で求めていく必要がある」
 強豪・浦和でプロ生活を送ってきた山岸はこう語気を強めた。果たして、他のチームメイトに山岸と同じ覚悟はあるか。13日に行われる天皇杯決勝(対G大阪)は、J1で戦う来季を占う意味でも、重要な一戦となる。

(文・鈴木友多)