6日、J1第34節が各地で行われ、鳴門・大塚スポーツパークポカリスエットスタジアムでは首位・ガンバ大阪(勝ち点62)が最下位・徳島ヴォルティスと0−0で引き分けた。また埼玉スタジアムで2位・浦和レッズ(同62)が名古屋グランパスに1−2、カシマスタジアムでは3位・鹿島アントラーズ(同60)が4位・サガン鳥栖に0−1で敗北。この結果、勝ち点を63に伸ばしたG大阪が2005年以来、2度目のリーグ制覇を果たした。

 G大阪、降格圏からの大逆転劇(鳴門大塚)
徳島ヴォルティス 0−0 ガンバ大阪
 歓喜の瞬間は2つの赤いチームではなく、青黒のチームに訪れた。優勝を決めたG大阪は、ヤマザキナビスコカップと合わせて2冠を達成。13日の天皇杯決勝(対山形)で00年の鹿島アントラーズ以来、史上2クラブ目のシーズン3冠を目指す。

 G大阪は、勝てば優勝を決定的にできる立場で試合に臨んだ。相手は最下位の徳島だけに、G大阪が押し込む展開になるかと思われた。しかし、前半2分にMF衛藤、14分にはDF那須川将大にシュートを打たれるなど、序盤は最終節でホーム初勝利を狙う徳島の攻勢に押し込まれた。

 徐々にボールポゼッションを高めて攻撃のかたちをつくろうと試みるも、人数をかけて守る徳島守備陣を前になかなかシュートまで持ち込めない。前節2ゴールのFW宇佐美貴史はMF斉藤大介、MFエステバンの厳しいマークに遭い、得意のドリブルからのチャンスメイクを封じられた。

 G大阪のファーストシュートは29分だった。徳島DFが跳ね返したクロスのこぼれ球をMF阿部浩之がPA内で拾って左足で狙ったがゴール上に外れた。31分には、左サイドからのクロスを最後はゴール前でDF米倉恒貴が倒れ込みながら右足でシュート。ゴールマウスに飛んだものの、GK長谷川徹に弾き出された。決定機を生かすことができず、スコアレスで試合を折り返した。

 長谷川健太監督は後半開始からMF倉田秋を阿部に代えてピッチに送り出した。個人技に優れた倉田を入れることで、局面の打開、そして宇佐美、FWパトリックへのマークを分散させる狙いもあったのだろう。しかし、後半も序盤は徳島に押し込まれる展開となった。2分、ゴール前の混戦からDF橋内優也にゴールネットを揺らされたが、これはオフサイドの判定に救われた。14分、FWキム・ジョンミンに右からのクロスを合わせられるも、GK東口順昭が正面でがっちりセーブした。

 27分にはミスから決定的なピンチに見舞われた。ピッチ中央でMF今野泰幸が足をすべらせ、エステバンにボールを奪われる。そこからエステバンにキム・ジョンミンとのパス交換からPA内に進入され、左足で狙われた。これはゴール外の左サイドネット。G大阪は徳島のシュート精度の低さに助けられるかたちとなった。

 なんとか耐え凌ぐ守備陣のために点をとりたい攻撃陣だったが、宇佐美がシュートを放つも枠をとらえられないなど、決定機をつくりだすことができない。長谷川監督は36分、MF大森晃太郎を下げてFWリンスを投入。最後の交代枠を使って勝利を狙いにいった。しかし結局、ゴールを奪えずにタイムアップを迎え、他会場の結果を待つことになった。

 ピッチ中央で両チームが整列し、両手を上げて観客に応える。そして、選手たちが握手で健闘を称えあった後、G大阪に歓喜の瞬間が訪れた。浦和が名古屋に、また鹿島が鳥栖に敗れたのだ。優勝決定の知らせに沸くG大阪の選手たち。宇佐美、DF丹羽大輝、DF岩下敬輔らはピッチ上で涙を流して喜びの感情を爆発させた。

 G大阪は昨季、クラブ史上初めてJ2の舞台を戦い、1年でJ1復帰を果たした。今季は開幕直前に宇佐美が負傷したことも影響して勝ち星に恵まれず、ブラジルW杯によるリーグ戦中断前(第14節終了時点)の順位は降格圏の16位だった。だが、リーグ戦再開後は5連勝と7連勝を記録。破竹の勢いで勝ち点を積み重ね、最大14あった首位との勝ち点差を逆転した。
「(優勝の要因は)チームが1つになったこと。厳しいゲームが続いたが、選手が結果を出してくれて、最後は本当に素晴らしいチームになった。中断前はまだまだJ2のチームという感じがしたが、中断以降はたくましくなったなと思う」
 指揮官は“史上最大の逆転劇”を実現させた選手たちに賛辞を惜しまなかった。キャプテンのMF遠藤保仁も「できれば勝って終わりたかったが、J2から上がってきて、J1最初の年でリーグ制覇できて本当にうれしく思う。全員がハードワークしてくれたおかげ」と9季ぶりのリーグ制覇に胸を張った。

 タイトル獲得に沸くG大阪だが、1週間後には天皇杯決勝が控えている。遠藤は「最高のパフォーマンスを見せて必ず3冠を達成したい」と意気込んだ。今季3度目の歓喜へ。青黒の戦士たちのシーズンはまだ終わっていない。

(文・鈴木友多)