2014年のJリーグで活躍した選手や監督などを表彰するJリーグアウォーズが9日、横浜アリーナで開催され、最優秀選手、ベストイレブンを含めた各種表彰が行われた。最優秀選手賞(MVP)にはガンバ大阪のMF遠藤保仁が選出された。遠藤は初のMVP受賞となった。最優秀監督にはG大阪を2冠(リーグ、ナビスコ杯)に導いた長谷川健太監督が初受賞。ベストヤングプレーヤー賞(1993年4月2日以降に出生し、今季のJ1リーグ戦に17試合以上出場した選手を対象)にはカイオ(鹿島)が輝いた。ブラジル出身のカイオは外国籍選手として初めて選出された。
 ベストイレブンには優勝したG大阪から遠藤(11回目、歴代最多)、FW宇佐美貴史、FWパトリック(ともに初)が名を連ねた。そのほかGK西川周作(浦和)が3年連続3回目、DF森重真人(FC東京)とFW大久保嘉人(川崎F)が2年連続2回目の受賞。DF太田宏介、MF武藤嘉紀(以上、FC東京)、DF塩谷司(広島)、MF柴崎岳(鹿島)、MFレオ・シルバ(新潟)は初選出となった。

 来年1月で35歳の遠藤、更なる進化へ

 プロ17年目で初めて、Jリーグ最高の栄誉に輝いた。遠藤は今季、全34試合にスタメン出場。6ゴールを挙げ、また精度の高いパス、セットプレーから味方の得点を演出した。遠藤なくして、G大阪の躍進はあり得なかっただろう。

「今シーズンに限らずガンバ大阪を支えてくださっているスポンサーの方々をはじめ、会社のスタッフ、長谷川健太監督はじめ現場のスタッフ、そしてチームメイトに感謝しています。そして自分のこの丈夫な体を産んでくれた両親、何よりも妻と子供たちに感謝しています。ありがとうございます」
 MVP受賞後のスピーチで、遠藤はまず周囲への感謝を口にした。初の栄誉については「団体競技なので個人にスポットが浴びるのはあまり好きではないんですけど、それだけ評価されてのことだと思うので非常に嬉しい」と淡々と語った。

 リーグとナビスコ杯を制したG大阪だが、14年は決して順風満帆なシーズンではなかった。開幕直前にエースのFW宇佐美貴史が負傷離脱。ブラジルW杯により、リーグが中断した第14節終了時点では降格圏の16位(4勝7敗3分け)に沈んでいた。遠藤個人にとっても、自身3度目のW杯は2試合の途中出場にとどまり、日本代表は1勝もできずにグループリーグで敗退。彼は「悔しい思いをした」とW杯を振り返った。

 だが、その悔しさを糧に再開したリーグではチームを勝利に導く好パフォーマンスを披露し続けた。遠藤に牽引されたG大阪は、9年ぶり2度目のリーグ制覇を達成した。アウォーズではG大阪の全選手がステージに立った。これは優勝クラブだけの特権である。
「全員で(アウォーズに)来れたのが一番うれしい。表彰台に全員でのぼれたので、やはり優勝チームというのはいいもんだなと。チーム全員が最大限努力して、上に行きたいという強い思いがこういう結果につながった」
 遠藤はこう語りながら改めて優勝を噛みしているようだった。

 MVPを受賞したG大阪の司令塔には来季、対戦相手からのマークがさらに厳しくなることが予想される。来年1月で35歳を迎え、年齢的な衰えを心配する声もある。しかし、遠藤にとってそんな心配はどこ吹く風のようだ。
「サッカーは年齢じゃないというところを、これからも証明し続けたい。同時に、沢山の若い素晴らしい選手がいることも意識しながら、その若い選手達に負けないように頑張りたいと思う。さらなる成長を求めて、いろいろなものにこれから先もトライしながら、さらにいい選手になって、来シーズンはチームとしても個人としても最高のパフォーマンスが見せられるように努力していく」

 プロ18年目となる2015年も遠藤は、淡々と自分のやるべき仕事を全うするに違いない。

 長谷川監督が語った5つの“ありがとう”

 G大阪を高みに導いたのが、最優秀監督賞を受賞した長谷川監督だ。J2に降格した13年から指揮を執り、1シーズンでのJ1復帰を実現させた。

 清水エスパルスの監督時代は、ナビスコ杯準優勝1回、天皇杯準優勝2回となかなかタイトルに恵まれなかった。それでも、長谷川監督は「清水での6年間でいろいろ経験したからこそ、こういう賞をとれた」と語る。Jリーグでの監督キャリアをスタートした9年前は、奇しくもG大阪がリーグ初優勝を果たしたシーズンだった。同年のアウォーズで当時のG大阪・西野朗監督(現名古屋監督)の「やっとここに立つことができた」との言葉を聞き、長谷川監督は「自分はいつになったらここに立てるのか。ここに立った時はどんなことを感じるのか」を考えるようになったという。

 9年の時を経て、指揮官は優勝監督としてアウォーズの舞台に立った。受賞スピーチでは5回、「ありがとう」という言葉を用いた。まずは選手たちへの感謝だ。
「シーズン終盤、厳しい試合が続いたが、最後までよくやってくれた。本当に自慢の選手たち。シーズン序盤はなかなか勝ち点を積み上げることができなかった。その中で“みんなで這い上がろう”“ひとつでも順位を上げよう”という話をして、本当に最後は“てっぺん”まで上り詰めてくれた。感謝している。ありがとう」

 また監督自身を支えてくれたコーチングスタッフ、厳しい日程の中で選手のコンディション維持を手助けしたメディカルスタッフ、現場をサポートし続けたクラブ関係者にもそれぞれ「ありがとう」と感謝を述べた。

 そして長谷川監督が「ガンバサポーター!」と声のボリュームを上げると、G大阪のファン・サポーターが集まっている観覧席から声が上がった。その方向に向かって、指揮官はこう続けた。
「みんなの後押し、声援がなければこのような賞をとることはできなかった。J2に落ちて、遠いところまで応援にかけつけてくれた。今季も厳しい日程の中、最後の最後まで選手を後押ししてくれた。ホンマにおおきに!」

 選手、スタッフ、ファン・サポーターはいずれもチームにとって欠かすことのできない存在だ。だが、長谷川健太という人間を最も近くで支えているのは、他でもない、家族だ。
「女房はサッカーに集中する環境をつくってくれた。恥ずかしくて、面と向かって感謝の言葉を言ったことがないが、この場を借りて言いたいと思う。ありがとう」

 こう言って照れ笑いを浮かべた長谷川監督は、最後にこうスピーチを締めくくった。
「この場に立った感想をひとこと。最高です!」
 13日には天皇杯決勝(対山形)を控えている。指揮官としては今季3度目の優勝会見を行って1年を飾りたいところだろう。

 14年はG大阪のためのシーズンだったと言っても過言ではない。来季からJ1のシーズンが2ステージ制に変更され、レギュラーシーズン終了後にはプレーオフが実施される。激動の1年になるであろう2015年。果たして、優勝クラブとしてアウォーズの舞台に立つのはどこか。

(文・鈴木友多)

<2014 Jリーグアウォーズ受賞者一覧>

○最優秀選手賞 
遠藤保仁(ガンバ大阪)

○ベストイレブン
GK 西川周作(浦和レッズ)
DF 太田宏介(FC東京)、森重真人(FC東京)、塩谷司(サンフレッチェ広島)
MF 柴崎岳(鹿島アントラーズ)、武藤嘉紀(FC東京)、レオ・シルバ(アルビレックス新潟)、遠藤保仁(ガンバ大阪)
FW 大久保嘉人(川崎フロンターレ)、宇佐美貴史(ガンバ大阪)、パトリック(ガンバ大阪)

○得点王 
大久保嘉人(川崎フロンターレ) 18得点 ※2年連続2度目

○最優秀監督賞
長谷川健太(ガンバ大阪)

○ベストヤングプレーヤー賞 
カイオ(鹿島アントラーズ)

○最優秀ゴール賞
西大伍(鹿島アントラーズ) ※J1第18節(11月30日) 鹿島VS広島戦

○J2 Most Exciting Player
田中隼磨(松本山雅FC)

○最優秀主審賞
西村雄一 ※6年連続6度目、歴代最多

○最優秀副審賞
相樂亨 ※6年連続6度目、歴代最多

○フェアプレー個人賞
西川周作(浦和レッズ)
工藤壮人(柏レイソル)
平岡康裕(清水エスパルス)
森岡亮太(ヴィッセル神戸)
水本裕貴(サンフレッチェ広島)
豊田陽平(サガン鳥栖)

○フェアプレー賞 高円宮杯
サンフレッチェ広島

○フェアプレー賞(J1)
ベガルタ仙台
浦和レッズ
横浜F・マリノス
アルビレックス新潟
徳島ヴォルティス

○フェアプレー賞(J2)
松本山雅FC
ギラヴァンツ北九州
京都サンガF.C.
ファジアーノ岡山
モンテディオ山形
湘南ベルマーレ
ザスパクサツ群馬
ジュビロ磐田

○フェアプレー賞(J3)
福島ユナイテッドFC
AC長野パルセイロ
藤枝MYFC

○功労選手賞
伊藤宏樹
岡野雅行
ジュニーニョ
服部年宏
波戸康広
山田暢久
吉田孝行
ルーカス

○Jリーグベストピッチ賞
NACK5スタジアム大宮
IAIスタジアム日本平
豊田スタジアム
北九州市本城陸上競技場

○最優秀育成クラブ賞
東京ヴェルディ