(写真:新スローガンは『KEEP HUNTING』。新指揮官の大久保HC<右>と世界に挑む)

 26日、スーパーラグビー(SR)に参戦するヒト・コミュニケーションズ サンウルブズは都内で記者会見を行い、2020年シーズンの第1次スコッド15人を発表した。16年シーズンから参戦してきたが、5年契約で切れるため、2020年シーズンが最終年になる見通し。新シーズンは来年2月1日、福岡・レベルファイブスタジアムで開幕戦を行う。

 

 2020年シーズン、サンウルブズの指揮を執るのはコーチから昇格した大久保直弥氏だ。日本人初のHC就任となった大久保HCは、こう抱負を述べた。
「プレッシャーはありません。楽しみしかない。私のやるべき使命はひとつ。優秀なスタッフと選手の力、チームの力を最大限に引き出し、過去最高のシーズンを送ることです」

 

 サンウルブズの運営会社ジャパンエスアールの渡瀬裕司CEOは日本ラグビーフットボール協会の理事も務める。
「将来的な日本代表の強化を考え、協会の中でも彼にHCをやってもらおう、と。彼に対する日本ラグビー界の期待は大きい。プレッシャーにならないようにサポートしていきたい」

 この日、サンウルブズは大久保HCをサポートするコーチングスタッフ2名を発表した。前サントリーサンゴリアス監督の沢木敬介氏、前ヤマハ発動機ジュビロコーチの田村義和氏。沢木氏はコーチング・コーディネーターに、「長谷川(慎)コーチの一番弟子」(渡瀬CEO)という田村氏はスクラムコーチを担当する。ディフェンスコーチについては、外国人指導者で調整中。渡瀬CEOは「サンウルブズは日本人と外国人の融合が特徴。コーチングスタッフもそこを図っていきたい」と話した。

 

(写真:「選手の取り合いは良くない」と渡瀬CEO。TLとの兼ね合いもあり、選手選考は難航しそうだ)

 20年シーズンのSRは2月から5月までリーグ戦各チーム16試合を行う予定だ。来年1月から5月まで行われるトップリーグとスケジュールがほぼ重なっているため、国内のトップ選手を招集できない可能性が高い。発表されたサンウルブズの第1次スコッドの中にはW杯日本大会に出場したジャパンの選手とトップリーグ所属選手はいなかった。

 

 また今回のスコッド発表が15人にとどまったとについて、渡瀬CEOは「契約は締結したが、チームとの最終調整が終わっていない。国内においてはトップリーグと調整をしながらというところであります。状況を見ながら第2次、第3次と適宜発表させていただきたいと思っています」と説明。最終的なスコッドは40人前後になる見通しだ。

 

 一方、スコッドに早稲田大学のSH齋藤直人選手、天理大学のCTBシオサイア・フィフィタ選手と2人の現役大学生が選ばれるなど若手育成に注力する方向性も見受けられる。23年フランス大会までの続投が決まったジェイミー・ジョセフHCは「次のレベルのラグビーにチャレンジすること、次の世代の日本人の選手を育成することが大事」とコメントを寄せており、渡瀬CEOは「次の世代を育成できるか、注力していきたい」と語っていた。

 

 2020年シーズンのチームスローガンは『KEEP HUNTING』に決定した。大久保HCは攻撃的なスタイルを標榜する。
「我々は毎試合トライに対して貪欲でありたい。1本取ったら、もう1本、2本、3本と。トライ、勝利に飢えている姿勢が我々のスタイル。それにふさわしい言葉だと思います。今回ジャパンの“ONE TEAM”が皆さんの心に突き刺さったのは、素晴らしいパフォーマンスや態度、行動に依るところが大きい。“KEEP HUNTING”という言葉に意味を持たせるのは、我々の行動であり、プレーだと思っています」

 

(写真:「現状に満足せずハングリーな選手に来てもらいたい」と語る大久保HC)

 44歳の新指揮官は目指すのはサントリー、ジャパンのような人もボールも動くアタッキング・ラグビーだ。
「オーソドックスに戦っても世界ではなかなか通用しない。スピードとスキルでスペースにアタックすることは我々の生命線。そこは引き続き強化していきたい。それと同時に走る、仕事するというのは相手を上回っていかないといけない」

 

 サンウルブズのSRラストシーズン、開幕戦はレベルファイブスタジアムでオーストラリアのレベルズと対戦する。「過去8勝しかしていないので、大きなことは言えませんが、プレーオフに出たい。そのためにはホームで勝ちたい」。一戦必勝誓う大久保HCの下、日出る狼のSR最終章がスタートする。

 

(文・写真/杉浦泰介)