(写真:クッツェーHCを挟み、フォトセッションに応じる田中と田村)

 来年1月より開幕するジャパンラグビートップリーグ。昨季12位のキヤノンイーグルスは、日本代表(ジャパン)のSH田中史朗、南アフリカ代表(スプリングボクス)のCTBジェシー・クリエルらを獲得し、上位進出を窺う。スプリングボクスを率いたことのあるアリスター・クッツェーHCの下、ジャパンのSO田村優を擁するチーム。トップリーグの“台風の目”となりえる存在だ。

 

 25日、田中と田村の自主トレーニングを都内クラブハウスで公開した。ジャパンの変幻自在のアタックを支えたハーフ団ということもあり、多くの報道陣が詰め掛けた。クラブハウス内のジムで汗を流した後、記者会見に臨んだ。

 

(写真:オフの期間も登山や海水浴で身体を動かしていた田村は涼しい表情)

 ジャパンを史上初のベスト8に導いた司令塔・田村。自身を取り巻く環境、見える景色は変わったはずだが、「僕自身は何も変わっていない。これまでの30年間と変わりないですし、この先も変えない」とマイペースを貫くつもりだ。「40歳までプレーしたい」という今後については「可能性は無限。ここから3年ぐらいは絶好調の年になる。僕がラグビー人生で手に入れていない日本一を獲りたい」と頂点を目指す。

 

(写真:「プレーヤーである限り日本代表を目指す」と語る田中)

 チーム初の日本一への心強い援軍がパナソニック ワイルドナイツからの移籍してきた田中だ。パナソニックのトップリーグ3連覇に貢献し、ニュージーランドのハイランダーズでもスーパーラグビー制覇を経験している。田村は「2人でゲームを動かせる。そばにいると助かるし、先輩としても心強い」と加入を喜ぶ。一方の田中も田村をサポートする姿勢を見せた。「能力が高過ぎて浮いている部分があると聞いています。彼が力を落とすことなく周りを引き上げていきたい。そうすれば日本一も見えてくる」

 

 34歳のベテランは「今までの経験を落とし込み、チームとして強くなりたい」と意気込む。クッツェーHCはキヤノンの新たな武器となる新ハーフ団に、こう期待を寄せた。

「W杯のパフォーマンスを見ていた。ファンタスティックな2人。リーダーとなりえる選手だ。彼らには代表で見せていたパフォーマンスをキャノンでも見せてほしい」

 

(写真:急遽取材に応じることとなったが、紳士な対応だったクリエル)

 新加入は田中だけではない。W杯を制したスプリングボクスのメンバーで、世界一の一員となったクリエルだ。15-16シーズンにNTTドコモレッドハリケーンズでプレーし、2度目のトップリーグ参戦となる。2020年度のシーズンはスーパーラグビーと日程が重なるが、それでもトップリーグを選んだ。

「トップリーグでプレーした経験もありますし、今世界中のトップ選手がこのリーグに集まっている。新しい環境で成長するいい機会と思い、日本を選んだ」

 

 ポジションは主にCTB。田中、田村が軸になるハーフ団を支える存在だ。

「2人ともワールドクラスの選手。一緒にプレーができることが楽しみ。日本語を勉強し、しっかりコミュニケーションを取れるようになりたい。彼らの外(のポジション)でプレーすることで、外からいろいろな情報を伝える。彼らのもうひとつの目になりたい」

 

(写真:ジムでの軽いトレーニングにも多くのカメラが向けられた)

 田中、クリエルが加わったほか、ジャパン通算10キャップのLO宇佐美和彦が復帰するなどチームの層は間違いなく厚くなった。12‐13シーズンからトップリーグに昇格したキャノンの過去最高成績は6位。16チームの総当たり戦となる今シーズン、トップリーグの台風の目となるか。その中心にはジャパンのハーフ団を再結成する2人がいるはずだ。田村は「100%楽しみます」、田中は「楽しくひた向きに全力で」と口にする。開幕戦は来年1月12日、昨季2冠の王者・神戸製鋼コベルコスティーラーズと対戦する。

 

(文・写真/杉浦泰介)