11月12日(火)、愛媛FC事務局より「河原和寿選手が今シーズンをもって弊クラブから退団することとなりました」という私たちサポーターにとってショックなニュースが伝えられた。

 

 

 

 

 

 

 

 河原選手は埼玉県出身。2005年にプロ入りし、アルビレックス新潟や大分トリニータ、栃木SCで活躍した後、2013年に愛媛FCに入団した。

 

 2014年シーズンにはリーグ戦と天皇杯、合わせて15得点をマークし、「愛媛のエース」とも呼ばれるような、チームに欠かすことができないほどの主力選手に成長した。

 

 個人的には、この年(2014年)のJ2第15節、ホームでの湘南ベルマーレ戦で魅せてくれた決勝ゴールが、とても印象深いものだった。第14節・終了時点で首位の湘南をホームに迎えたリーグ戦16位の愛媛。試合序盤から相手に押し込まれ、劣勢の展開が続いた。

 

 それでも、前半7分にパスカットからショートカウンターを繰り出し、FW西田剛選手のアシストで河原選手がゴールを決める。サポーターが陣取るゴール裏スタンドに駆け寄り、両手を突き上げ、喜びを爆発させる河原選手の姿が、今も目に焼き付いている。

 

 愛媛が、その1点を最後まで守り切り、首位の湘南を撃破した。その試合、河原選手は攻撃面だけではなく、身体を張った守備も見せてくれるなど、素晴らしい活躍ぶりだった。

 

 翌年のリーグ戦では、クラブ史上初となるJ1昇格プレーオフ出場圏内の5位に入る原動力としてチームを牽引し、愛媛FCの象徴的な存在にまで登り詰めた。

 

 ピッチの外では、いつも笑顔で私たちサポーターと優しく接してくれ、その人柄からも高い人気を誇っていた。また日頃、クラブの顔として、各種メディアに向けた広報活動や事務局主催のイベント、ボランティア活動にも率先して取り組んでくれた。クラブや地域(愛媛県)への強い愛情が感じられる選手だった。それだけにキャリアを終えるまで、愛媛でプレーを続けてくれるものと、私も含め多くのサポーターは考えていたのではないだろうか。

 

 しかし、ここ2年ほど、負傷やチームの再編成の影響から、出場機会が少なくなっていたのも事実。河原選手にしてみれば、現状への不満もあると思うし、現役プレーヤーとしての意地やこだわりも、まだまだ捨ててはいないのだと、私も思いたい。

 

 彼が下した今回の決断を私たちも深く受け止め、尊重してあげたいと、今は感じている。

 

 11月16日(土)に開催された(2019シーズン)ホームゲーム最終戦(第41節)。その試合後、今季限りで退団となる河原和寿選手との、お別れのセレモニーが行われた。

 

 セレモニー開始前、バックスタンドの客席最上段から「ONE LOVE」という文字と河原選手の顔が描かれた特製ビッグフラッグ(横50m×縦7m)がサポーターの手によって広げられる。これは、河原選手へ7年間の感謝を伝えるべく、サポーター有志(約40名)が最終戦の前夜に集まり、3時間掛けて作り上げたフラッグである。

 

 選手たちには内緒で作成し当日、サプライズで掲出したので、河原選手も驚いている様子で「(ビッグフラッグを見て)びっくりしました。とても感動しました」とセレモニー終了後、サポーターに感謝の気持ちを伝えてくれた。

 

 セレモニーはコアサポーターが陣取る、バックスタンド前にて行われた。河原選手がマイクを握り、サポーターに向けて挨拶を始める。

「7年間、振り返ればいろいろな思いがあるのですけど、サポーターの皆様には、もっと勝つ試合を、そして沢山のゴールを、ひとつでも多い勝利を届けたかったです。なかなか期待に応えることができず、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。だけど、どんなにつらくても、どんなに苦しくても、このニンジニアスタジアムのピッチから見る(皆さんが作ってくれた)景色は(数は)少ないけど、僕にとっては最高の景色でした。皆さんへ、もっと高い景色を見せてあげたかったし、最高の舞台で戦わせてあげられなかったのが、心残りなのですけど、来年以降、このチームに残る選手やスタッフが、その夢を絶対に叶えてくれると信じています。皆さんと共に戦えた7年間は最高の7年間でした。僕のことをサッカー選手として、ひとりの選手として……、戦わせてくれて、本当にありがとうございました。また違う立場で、このスタジアムに帰ってこられるように、自分らしく直向きに、そして、真面目に頑張っていきたいと思います。皆さんも愛媛FCを支え続けてください。愛し続けてください。共に戦ってあげてください。本当にありがとうございました!」

 

 途中、涙を流し、言葉を詰まらせながらもサポーターに向けて気持ちのこもったメッセージを残してくれた。

 

 直後「かわはらゴール かわゴール バモかわはら!」

 

 サポーターが河原選手のチャントを大合唱! 会場の皆が、チャントに乗せて感謝の気持ちを伝えていた。

 

『あなたと共に戦い、共に活動した日々は、私にとって大切な宝物です。いつの日か、また元気な姿を、このスタジアムで見せてください。河原和寿選手、7年間ありがとうございました』

 

<松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>

1967年5月14日、愛媛県松山市出身。愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。

 


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