(写真:今季で愛媛FC U-18を卒団していく3年生たち)

 2019シーズン、7年ぶりにプレミアリーグ(高円宮杯U‐18サッカーリーグの1部リーグ)への復帰を果たした愛媛FC U‐18。初戦は勝利したものの、その後は勝利から遠ざかり苦戦が続いた。悩ましいことにシーズン後半戦に突入後も、その状況は変わらないままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 昨年の9月16日(月)には、ホーム(愛フィールド梅津寺)にてプレミアリーグ(WEST)第13節が行われ、サンフレッチ広島F.Cユースと対戦した。前半26分に失点すると、試合終盤にも追加点を奪われ、最終スコア0-2で愛媛の敗戦となってしまった。

 

 試合の立ち上がりは、互角に渡り合っているように見えたが、先制点を奪われた後、失速してしまった。何より気になるのは、愛媛の選手たちから、あまり声が出ていないことである。ピッチ上でのコミュニケーションやDFラインの統率、また士気を高めるために、チームメイト同士で声を掛け合うのは、必要なことだと思うのだが今節、大きな声は聞こえてこなかった。

 

 プレミアリーグでのハードな戦いやアウェイゲームでの長距離移動などで疲れているのか、はたまた、これまでの戦績を悔やんでいて、覇気が薄れてしまっているのか分からないが、もう少し元気な声を出して欲しいと感じた試合でもあった。

 

 その後の第14節と第15節のアウェイ連戦においても、接戦ではあったが勝利することはできなかった。このまま、出口の見えないトンネルを走り続けなければならないのだろうか……。

 

 11月23日(土)第16節、ホーム(愛フィールド梅津寺)にアビスパ福岡U‐18を迎えた。

 

 試合開始前、愛媛のウォーミングアップがピッチ内で始まる。すると選手たちが皆、意識して大きな声を出し合っていることに気付く。今までの反省からだろう。声を出し合うことの大切さを皆が理解しているように感じた。試合開始後も、選手たちから指示を出し合う元気な声が聞こえてくる。チーム全体から覇気が感じられ、良い雰囲気も伝わってくるし、これならば期待が持てそうだ。

 

(写真:第16節では久しぶりの勝利。試合後、サポーターに挨拶)

 試合は一進一退の攻防が続く中、後半11分にFW藤原代知選手のアシストからFW上岡陸選手がゴールを決め、愛媛が先制点を奪う! 1点をリードしたまま終盤、逃げ切りを図るも、アディショナルタイムに同点に追いつかれてしまった。それでも諦めることなく「勝利」という結果にこだわる愛媛イレブン。俯くことなく素早いリスタートから、敵陣左サイドの深い位置でフリーキックのチャンスを得る。キッカーのFW塩﨑彰選手がゴール前にセンタリングを供給。このボールを捉えたのは、DF村中総一郎選手。敵DFと競り合いながらヘディングシュートを放つと見事、ゴールイン! 大歓声が沸き起こる!

 

「ラララララララララララー!オオオオー!」

 

 愛媛サポーターも歓喜のチャントを大合唱! 直後、長い笛の音が響き渡り試合終了。

 

 最終スコア2-1で愛媛が激戦を制し、久しぶりの勝ち点3を手に入れた。何とリーグ戦において15試合ぶりの勝利。とてつもなく長いトンネルから、ようやく抜け出せたような清々しい瞬間でもあった。

 

 翌週の12月1日(日)もホーム(愛フィールド梅津寺)にて、第17節・ヴィッセル神戸U‐18との一戦が行われた。2019シーズンのホームゲーム最終戦である。既にリーグ降格は決定しているが、何とか勝利で終わらせたい。

 

 前半11分、敵陣右サイドの村中選手からのフィードボールが上岡選手へと通る。上岡選手は敵ゴール前までドリブルで持ち込み左足を振り抜き、シュートはゴールネットに突き刺さった! 愛媛の先制ゴールだ! 続く前半23分には、村中選手のアーリークロスからFW高野捺貴選手が追加点を決めた。

 

 ヴィッセル神戸も黙ってはいない。体格差を活かし、愛媛陣内へと強引に攻め込んで来る。前半37分に相手のコーナーキックから1点を返されてしまう。それでも慌てることなく、落ち着いてプレーを進める愛媛イレブンに再度、得点のチャンスが巡ってくる。後半37分、左サイドからDF三原秀真選手がFW柳下将野選手とのコンビネーションでゴール前までボールを運び、左足でシュートを放ち見事、ゴールネットを揺らした。 大歓声と拍手が沸き起こる! 愛媛の攻勢は、まだ終わらない。アディショナルタイムには、敵ゴール前での混戦から上岡選手がボールを押し込み、更に追加点!

 

「スウィーギン スウィンギン愛媛 フォーエヴァー!」

 

 サポーターによる歓喜の大合唱が鳴り止まない。時間は過ぎ去り、このまま試合は終了。最終スコア4-1で愛媛の快勝であった。今季最後のホームゲームを白星で飾ることができ、本当に良かった。

 試合後は選手たちと一緒に歓喜のラインダンスで締め括った。

 

 12月8日(日)、アウェイにて行われた第18節(最終節)では、セレッソ大阪U‐18と対戦。相手の猛攻にも耐え抜き、試合はスコアレスの引き分けに終わった。この日で、プレミアリーグ2019WESTの全日程が終了。

 

 愛媛の最終戦績は3勝14敗1引き分け(勝ち点10)リーグ戦10位(最下位)。残念ながら来シーズンは、プリンスリーグ四国へ降格することになった。

 

 7年ぶりに復帰したプレミアリーグの舞台は、愛媛FC U‐18にとって厳しい試練の場だった。開幕戦での勝利。また、終盤戦で意地を見せてくれたが、シーズンを通して良い成績を残すことはできず、残留とはならなかった。一戦一戦を振り返ると得点差程、チーム力の差は感じられず、負けた試合でも善戦していたように思う。

 

(写真:プレミアリーグ第17節。ヴィッセル神戸U-18との戦い)

 ただ、1対1の局面において個々の体格差や体力差、各チームに1~2名は存在する代表クラスのスーパープレーヤーによる活躍の是非が、試合の結果に大きく響いているようにも思われた。プロ志向の強い選手たちが多数集結するリーグ戦ならではの難しさや厳しさを終始、感じた1年だったのかも知れない。

 

 2019シーズン、高校年代・日本最高峰のリーグ「プレミアリーグ」へ果敢にチャレンジした愛媛FC U‐18の選手たち。この1年間で経験した試合や練習、また運営などから多くの事を学んでくれたことだと思う。サッカーを今後、続けていく上で、きっと大切な財産になるだろう。3年生たちはチームを卒業することになるが、後輩たちには、2019年シーズンの経験を活かし、今年はプリンスリーグから、再びプレミアリーグを目指してもらいたい。

 

『愛媛FC U‐18の選手・スタッフの皆さん、プレミアリーグ参戦、お疲れ様でした』

 

<松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>

1967年5月14日、愛媛県松山市出身。愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。

 


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