16日、愛媛FCは2012年度および13年度の決算において、不適切な会計処理を行っていたと発表した。クラブの報告によれば、14年10月に退社した経理担当者が実際は赤字だった営業利益を黒字として処理。内部調査と外部協力者による調査の結果、横領・着服の事実はないとされる。Jリーグでは12年度から3期連続で赤字を計上すると、クラブライセンスを取得できない規定があるが、愛媛の14年度決算は黒字の見通しとなっている。今後、Jリーグは第三者による追加調査を踏まえ、処分を決める。
(写真:「Jリーグもしっかり向き合って検討したい」と語った大河理事)
 節目のJリーグ10年目に大きな汚点を残す不祥事が発覚した。2年間で粉飾した額は約9550万円。実際には12年度が約52万円の黒字から約3360万円の赤字、13年度は約154万円の黒字から約6140万円の赤字となることが判明した。

 愛媛の亀井文雄社長と佐伯真道副社長が松山市内で開いた会見は、冒頭、「サポーターおよび関係する皆様方に大変ご迷惑やご心配をおかけすることになり、心からお詫び申し上げます」と謝罪。問題が発生した経緯を明らかにした。

 事の発端は昨年8月だった。社内で現金残高と会計帳簿が合致しないことが分かり、調査を開始。不適切な会計処理が行われていたことが発覚したため、詳細な調査を実施し、12月に結果をJリーグに報告した。

 いったい、なぜ、これほど誤った決算に至ったのか。その原因を亀井社長は元経理担当者による「収入の過大計上や費用の過少計上、および伝票未入力等」と説明する。この背景のひとつにあるのがJリーグが採用しているクラブライセンス制度だ。12年度からは3期連続で赤字を計上するとライセンスが取得できなくなる規定が適用されており、“健全経営”への取り組みが一層、求められている。

 加えて愛媛の場合、県が筆頭株主で、各市町が出資している手前、大幅な赤字を出すことが許されない事情もある。元経理担当者へのヒアリング調査によると、「支出の方が増えてきて、どうにか調整できないものがという気持ちがあった」「処理が煩雑になり、それらが蓄積してまとめて処理をしてしまった」と語ったという。元経理担当者は昨年10月に自主退社した。今回の修正により、2年連続の黒字が一転、2010年度から4年連続の赤字決算となるが、クラブには2億円の資本金があり、現時点では債務超過に陥る危険はない。

 何より社内のチェック体制も杜撰だった。経理業務は元経理担当者任せで管理、監督の仕組みが十分ではなかった。亀井社長は「管理ができていなかったのが、一番の原因。大いに反省している」と語った。自らの責任問題については「どのようにとっていくかについては十二分に考えている」としつつ、当面は全容解明と再発防止に全力で取り組む考えを示した。

 同日、愛媛の会見を受けて、Jリーグも会見を行った。
 出席した大河正明常務理事兼コンプライアンスオフィサーは「我々が見ても、この決算はおかしかった。つまり中に入ればすぐ分かるレベル」と断じた。今回の件は、Jリーグ規約の23条(Jクラブの健全経営)の3項<Jクラブは、前項(Jリーグが指定した)の書類に虚偽の記載をしてはならない>に抵触する可能性があるという。その場合、該当クラブには1000万円以下の制裁金が科される。

 Jリーグは問題点として、愛媛のガバナンスの欠如を挙げた。大河理事は「経理業務を元経理担当者に任せっきりになっていたんじゃないのかという点。会社内のガバナンスのチェック体制が十分に構築されておらず、その事実を経営陣が把握できていないと思われる。管理、監督面での問題があったのは否めないところなのかなと考えています」と述べた。

 Jリーグとしては第三者による調査結果と報告を待つかたちとなる。大河理事は「我々としてはMAXで1カ月以内に仕上げてほしい」と要望した上で、「2月の後半ぐらいには制裁処分をどうするかを判定することになると思う」と今後のメドを語った。

 地方クラブの愛媛は予算規模が小さく、フロントの人数も少ない。プロとは名ばかりのクラブ経営とガバナンスの実態が、この一件で露呈してしまった格好だ。愛媛は今季をJ1昇格を目指す3カ年計画の最終年として位置づけてきた。それならば、真のプロクラブへフロントも生まれ変わる時期にきている。