スポーツは進化しなければならない。

 

 どんなスポーツにも歴史があり、ルールがあり、しきたりがある。しかし、それだけにとどまっていてはこのご時世、残っていくのは厳しい。競技人口、愛好者人口が減ってしまい、世の中で話題にされなくなっていくと、そのスポーツの未来は険しい。

 

 そして、どんどん生み出される新しいスポーツ。スケードボードやサーフィン、そしてブレイクダンスなどがオリンピックスポーツになるとは誰が予想しただろう。世界のあちこちで遊びの一端として生まれたスポーツが競技に発展し、普及していくのを見ていると、その可能性は留まることを知れない。

 

 そう、社会においての企業のように、現状維持だけを考えていたり、一部の利権者だけがコントロールをし続けているような旧態依然のスポーツは当然厳しくなっていくし、シュリンクしてしまうこともある。つまりスポーツの発展や生き残りにも、常に努力が必要なのは、一般的社会活動と同じなのだ。

 

 たとえばソフトボール。そもそも国内ではメジャーであるが、世界的には競技人口が少ない競技だ。そういった状況もあり、東京大会以降は五輪競技から再び落ちてしまい、先が見えていない。国内の競技人口も減少が続いており、関係者は憂慮している。同じように五輪競技から落ちる野球は、MLBがあり、プロ野球があるため危機感はそこまでないが、少年野球人口の減少などを考えると油断ならない。

 メジャースポーツでさえこの状況。マイナースポーツに危機意識が薄ければ未来はない。

 

 客観的に見ていると、競技団体の実質的なトップが若くて行動力があるところはいいが、長く君臨し、周りの人たちが意見を言えなくなっているところは危ない。現在、スポーツ庁で競技団体のガバナンスコード作成の方向で進んでおり、10年以上継続して要職につけないようにしようということになりそうだ。これは大切なことであると思う。優秀な人でも10年以上になると、周りが忖度してしまうし、感覚のずれが始まる。

 

 さらに、その人がいることで新しい人材が育ってこないということもある。人材がいないのではなく、育てる環境にないことが多いというのが日本ではよく見られるようだ。やはり新陳代謝し、常に新しい感覚で攻めていく。その後ろに経験者がフォローするというような団体でなければ、これからは人材もスポーツも育っていかないのかもしれないし、それは競技団体だけにあてはまることではないとも思う。

 

 若き力が目立つ競技も

 

 近年、そんな攻めの姿勢で高パフォーマンスを見せているのが日本フェンシング協会だろう。会長は34歳の太田雄貴氏。2017年に就任してから矢継ぎ早に新しい施策を発表。IT技術を取り入れ観戦者に分かりやすいシステムを取り入れたり、選手たちに英語力を求めて日本代表入りの条件にしたり、既存の団体では思いつきもしなかったようなことをダイナミックに取り入れ、周りを驚かせながらも急速にフェンシング界を変えている。

 

 英語力はグローバル社会におけるフェンシング界でのコミュニケーション能力向上や、セカンドキャリアなどを視野に入れているからだ。選手たちに英会話能力の必要性を求め、民間英語試験での基準クリアを、日本代表の選出条件と決めたことは記憶に新しい。つい近年まで選手だった彼は現役時代に感じていたことや、危機感を持っていたことを実直に進めているので、少々極端な施策でも説得力がある。もちろんそのための下準備は進めているとは思うが、業界での影響力と知名度をいい意味で使っているので、これからも楽しみだ。

 

 近年は全日本スキー連盟でも、若手の皆川賢太郎氏などが中心となり改革を進めている。このように変化できる競技はどんどん進化していくだろう。

 

 社会環境が変化すれば、スポーツに求められるものも変化していく。

 スポーツは止まってはいられないのだ。

 

白戸太朗(しらと・たろう)プロフィール

17shiratoPF スポーツナビゲーター&プロトライアスリート。日本人として最初にトライアスロンワールドカップを転戦し、その後はアイアンマン(ロングディスタンス)へ転向、息の長い活動を続ける。近年はアドベンチャーレースへも積極的に参加、世界中を転戦していた。スカイパーフェクTV(J Sports)のレギュラーキャスターをつとめるなど、スポーツを多角的に説くナビゲータとして活躍中。08年11月、トライアスロンを国内に普及、発展させていくための会社「株式会社アスロニア」を設立、代表取締役を務める。17年7月より東京都議会議員。著書に『仕事ができる人はなぜトライアスロンに挑むのか!?』(マガジンハウス)、石田淳氏との共著『挫けない力 逆境に負けないセルフマネジメント術』(清流出版)。最新刊は『大切なのは「動く勇気」 トライアスロンから学ぶ快適人生術』 (TWJ books)

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