3日、日本サッカー協会(JFA)が会見を開き、ハビエル・アギーレ日本代表監督との契約解除を発表した。アギーレ監督らがスペイン検察庁から八百長の疑いでバレンシア予審裁判所に告発されたことを受け、JFAは2日深夜に告発が受理されたことを確認。本日14時、大仁邦彌JFA会長がアギーレ監督に契約解除を申し入れ、指揮官がそれに同意した。スチュアート・ゲリング(コーチ)、ファン・イリバレン(フィジカルコーチ)、リカルド・ロペス(GKコーチ)も契約を解除する方針だ。
(写真:契約解除のタイミングについて大仁会長は「今のこの時点しかないのかなと思う」と語った)
「今回のこの告発の受理について、私どもとしては一番考えないといけないのは、日本代表への影響。我々日本サッカー協会にとって、最大のミッションはW杯への出場。2018年のロシアW杯の出場権を何としても獲得しないといけない。その予選が6月から始まる。今回のアギーレ監督の告発の受理によって捜査が始まり、その後には起訴され、裁判が始まる可能性がある。我々としてはこういう影響がW杯アジア予選にできるだけでないように、リスクを排除する必要があると考えた。これらのことから今回、アギーレ監督との契約を解除するということになった。アギーレ監督には、まず第一に契約解除の理由は代表チームへの影響のリスクを避けたいということ。八百長に関与したということではない。アギーレ監督にとって、(八百長疑惑は)名誉に関わる大変な問題。無実の証明に全力を尽くして欲しいと。本日の2時に私の方から契約の解除を申し入れ、アギーレ監督からは『やむを得ない』と同意を得た。誠に残念な結果に終わって、代表の選手、ファンやサポーター、スポンサーの皆様、関係者の皆様には大変ご心配をお掛けして申し訳なく思っている。今回の私ども結論をぜひ理解していただいて、今後ともご支援をいただきたい」

 大仁会長は沈痛な面持ちで、アギーレ監督と契約解除に至った経緯を説明した。アギーレ監督が八百長に関与したことが証明されたわけではない。しかし、このまま指揮官との契約を続行し、仮に有罪の判決が出て代表監督から退く時期がW杯直前になった場合、それこそ代表チームは甚大なダメージを被るだろう。大仁会長が述べたように、「リスク」を排除した結果が、アギーレ監督との契約解除だったのだ。

 1月のアジアカップでは準々決勝敗退に終わったものの、周囲のアギーレ監督に対する評価は低くはなかった。大仁会長が「我々はアギーレの手腕、力量を高く評価している。できればこの体制で今後も続けていきたいと思っていた」と語れば、霜田正浩技術委員長(強化)も「こういう問題がなければ、間違いなく日本を強くしてくれた監督だと確信している」と契約解除を悔やんだ。

 JFAとしては、後任人事を速やかに進めなくてはならない。3月に親善試合2試合が予定されており、6月にはロシアW杯アジア1次予選が始まる。W杯予選に向けて、3月の親善試合は貴重なテストマッチの機会だけに、大仁会長は後任決定を「何としてもそれまでには間に合わせたい」との意向を口にした。ただ、「間に合わせるために、“この辺でいいだろう”という人材を選ぶことはしない」とも語り、親善試合に代行監督を置く可能性も示唆した。

 霜田技術委員長は、後任監督に求めるものとして「一番大事なのは、W杯に出ること。そのためには(アジア)最終予選に進まなければならないので、6月から始まる1次予選でいい結果を残し、その確率を高めてくれるような監督」と語った。その上で「現在、Jクラブで指揮を執っている監督には声をかけない」方針を技術委員会で決定したことを明かした。新体制が始動し、3月のシーズン開幕を控えているJクラブを考慮したかたちだ。そうなると、後任候補には“どこのチーム・組織にも属していない人物”あるいは“Jクラブ以外のチーム・組織で監督を務めている者”といったところが、挙がってくるだろうか。いずれにしても、イレギュラーな人事であるために、契約締結までの道のりは平坦ではない。

 何より、契約を急ぐ中で、後任候補の“情報”を見落とすわけにはいかない。大仁会長は、アギーレ監督の騒動の教訓として「反省しないといけない」と切り出し、次のように続けた。
「もっとしっかり調べておくべきだった。(交渉段階でアギーレ監督の八百長疑惑が)分かったかどうかは分からないが、(後任人事では)そういうことがないようにしっかり調べたい。この先、短い準備期間しかない中、W杯予選に向けて、日本代表をどう強いチームにしていくか。そういう観点から技術委員会で今までの経緯を含めて、これから全力で取り組んでいってもらいたい」

 また大仁会長は自身を含む役員や関係者の処分を検討し、今月のJFA理事会に諮ることも表明した。日本サッカー界に激震を巻き起こした八百長騒動。一刻も早く成長の針を再び進めるために、大仁会長のいう“全力”の内容が問われる。

(文・写真/鈴木友多)