12日、日本サッカー協会(JFA)は都内で理事会を開き、八百長疑惑の渦中で契約を解除したハビエル・アギーレ前代表監督の任命責任について、大仁邦彌会長ら関係者の処分を協議した。理事会は大仁会長、招聘の陣頭指揮を執った原博実専務理事、霜田正浩技術委員長(強化)ら協会幹部に責任はないとして、処分を下さなかった。ただし、騒動を起こした責任を鑑み、大仁会長が給料の50パーセントを4カ月、原専務理事と霜田技術委員長は同30パーセントを4カ月自主返納すると発表した。
 現体制での再スタート――。これがJFAの下した判断だ。

 この日の理事会では、主に「契約時にしっかりと情報を確認できなかったのか」「八百長疑惑が明るみになってからの対応は適正だったか」「契約解除は正しかったのか」の観点から、大仁会長、原専務理事、霜田技術委員長らの責任について議論した。

 大仁会長は理事会で改めて、各理事にアギーレ前監督との契約解除に至る経緯を説明するともに、「代表チームの選手、ファン、サポーター、スポンサー、サッカー関係者の皆様にご心配、ご迷惑をおかけした」と謝罪。監督の選任にあたっては「協会がちゃんと(アギーレ氏の身辺を)調査したかについては、そういう意識が足りなかったのも確か。その点を我々は反省しないといけない」と契約時における調査不足も認めた。

 だが、身辺調査の難しさもあり、理事会では八百長疑惑が予見できたかはわからないといった意見もあったという。問題発覚後から契約解除に至るまでの対応、判断についても、総じて肯定的な意見が多く出たようだ。その上で、担当役員への責任追及はしないとの結論に至った。

 理事会では大仁会長と原専務理事が、4月にFIFA理事選や新規約でのJFA会長選などが控えているため、任期を全うしたいという意思を述べ、両者とも続投が承認された。
 一方で、大仁会長はアギーレ前監督との契約解除が決まった3日に、霜田技術委員長から「責任をとって辞めたい」と伝えられたことを明かした。しかし、大仁会長は「現在、最優先でやらなくてはいけないのは新しい監督、新しい体制を整備すること。『そのままやれ』と申し付けた」と霜田技術委員長を慰留。処分は会長、原専務理事同様、理事会に一任することで同意し、続投が承認された。

 課題の後任人事については、現在、海外出張中の霜田技術委員長が選考を進めていると見られている。ただ大仁会長にも原専務理事にも、霜田技術委員長からの報告はないという。原専務理事は「(理事会でも)具体的な名前はまったく出ていない」と話すにとどめた。

 6月のロシアW杯アジア2次予選を見据えた時、JFAとしては3月末の親善試合までに新監督を迎え入れて一刻も早く代表の強化を進めたい。体制が変われば、後任人事遂行のスピード低下は必至。現体制継続の狙いのひとつはそのリスクを避けるためだろうが、引責辞任を申し出た霜田技術委員長が再び陣頭指揮を執っていることには疑問を感じざるを得ない。協会全体で大仁会長らに処分はしないと決まった以上、現体制への責任追及は少しは収まるだろう。雨降って地固まる、という。しかし、その地面は少しの雨で再びぬかるみやすくなっていることを、JFAは忘れてはならない。

(文・鈴木友多)