28日、富士ゼロックススーパーカップが神奈川・日産スタジアムで行われ、昨季3冠のガンバ大阪とJリーグ2位の浦和レッズが対戦した。前半は両チームが膠着状態から、動かぬままスコアレスで終了。後半はG大阪が選手交代により、流れを掴むと、23分にFW宇佐美貴史のゴールで先制。アディショナルタイムにも1点を加え、2−0で完封勝ちした。3冠王者が連覇へ向けて、いい弾みをつけた。

 途中出場パトリック、全ゴールに絡む(日産)
ガンバ大阪 2−0 浦和レッズ
【得点】
[G大阪] 宇佐美貴史(68分)、パトリック(90+4分)
 3冠王者のG大阪が浦和を2−0で下し、8年ぶり2度目のスーパーカップを制覇した。昨季、Jリーグで優勝争いをした両クラブ。G大阪は劣勢に立たされながら、終盤の選手交代がハマるという、まるで天王山となった第32節のVTRを見るような試合展開となった。

 序盤、ボールを支配したのは浦和。だがG大阪の立ち上がりが悪かったのではない。長谷川健太監督はその要因を「レッズの方が切り替え早く、前線のプレッシャーもきつかった。赤嶺(真吾)が入りましたが、なかなか起点を作らせてもらえなかった」と分析した。G大阪は守備に回る機会が多く、自陣に引いて守りを固めた。

 攻撃のイメージが先行するG大阪だが、昨季リーグの失点数は2番目に少なかったように守りも堅い。浦和にボールポゼッションで上回られながらも、シュートは3本に抑え、決定的な場面は作らせなかった。「集中できていた」と長谷川健太監督が選手たちを称えた前半は0−0で終了し、試合を折り返した。

 膠着状態から、先に動いたのは浦和。後半11分、ミハイロ・ペトロビッチ監督はMF高木俊幸に代えて、FWのズラタンを投入した。長身186センチのズラタンを1トップに入れ、前線に高さを加えた。昨季、大宮アルディージャで7ゴールを決めたスロベニア人ストライカーのパワーで期待したが、G大阪のセンターバックの丹羽大輝、岩下敬輔が体を張って封じ込めた。

 G大阪の長谷川監督が最初の交代カードを切ったのは18分だ。赤嶺に代えてパトリックを投入。昨季途中から加入した長身のブラジル人ストライカーは、交代直後から宇佐美と息の合ったコンビネーションを見せ、浦和守備陣を脅かした。

 パトリック投入から5分後、ついに試合の均衡は破れた。右からのコーナーキックを得たG大阪。MF遠藤保仁が右足で放り込んだボールに、ニアで合わせたのはパトリックだ。頭ですらすようにゴール前へつなぐと、背番号39のエースが反応。「(自分のところに)こぼれそうな気がしていた」と、昨季公式戦21ゴールをあげた宇佐美がゴールへの嗅覚を発揮した。右足を合わせ、ゴールネットに突き刺した。

 待望の先制点をアシストしたパトリックは、パワフルな動きで、その後も躍動した。アディショナルタイムには、ドリブル突破でペナルティ内に侵入。一度はシュートをGKにセーブされたが、こぼれ球を自らが詰め、ダメを押した。直後に試合終了の笛が鳴り、2−0でガンバ大阪が勝利。守備陣の奮闘と、長谷川監督の選手起用が光り、G大阪が今季初タイトルを手に入れた。

 G大阪は4日前、アジアチャンピオンズリーグで中国の広州富力に0−2で敗れていた。そこでの反省がゲームで生かされた。守護神の東口順昭は「ACLで立ち上がりに失点していたので意識していた」と、DFラインは攻め込まれながらも、コミュニケーションをとりつつ、前半を無失点で切り抜けた。東口は「DFラインは集中できていた」と自軍の守備陣に胸を張った。

「内容はよくなかった」と宇佐美は振り返った。特に攻撃面ではパトリックが入るまで、いいところがなかった。宇佐美とパトリックの2トップが、他チームにとって脅威であることを証明しただけに、新戦力の赤嶺がコンビネーションを深めていくことが課題だろう。とはいえ、宿敵を破っての今季公式戦初勝利。3日後のACL第2戦、1週間後のJリーグ開幕に向け、いい弾みになったのは間違いない。3冠王者がJの主役であることをアピールするとともに、まず今季“1冠目”を掴みとった。

(文/杉浦泰介)