日本サッカー協会は3日、JFAハウスでリオデジャネイロ五輪アジア1次予選を兼ねた「AFC U-23選手権予選」に臨む日本代表メンバー23名を発表した。海外組からは久保裕也(ヤングボーイズ)、南野拓実(ザルツブルク)の2名が条件付きで招集。国内組からは手倉森誠監督が指揮を執ってから、常時代表に呼ばれているDF植田直通(鹿島)、MF中島翔哉(FC東京)、FW鈴木武蔵(新潟)らは順当に選出され、唯一大学生で代表に入っていた室屋成(明治大)は選考から漏れた。今後、U-22日本代表は11日にミャンマー同代表と親善試合(フクダ電子アリーナ)を行い、AFC U-23選手権予選(マレーシア、23日〜)に出場する。
(写真:リオ五輪に向け、最初の関門に挑む手倉森監督)
「日本サッカーの挽回、反撃の先陣を切る」。手倉森監督はそう意気込んだ。昨年はA代表がブラジルW杯で予選敗退。U-16、U-19日本代表が世代別のW杯の出場を逃した。「悔しい思いをして強くなっていくところを示したい」。U-22日本代表がリオ行きの切符をかけての第一関門となるAFC U-23選手権予選に挑む。グループIに入った日本はマカオ、ベトナム、マレーシアと予選突破をかけて争う。いずれも格下との対戦となるだけに指揮官は「引かれても崩せるクオリティーを持った選手たち」と期待を寄せる精鋭を選んだ。

 クラブによっての人数制限はなく、ベストメンバーを選ぶことができたのは大きい。中でも注目度が高いのが、久保と南野の海外組FWコンビだ。ともにA代表のキャップ数はゼロだが、その才能は元代表のアルベルト・ザッケローニ監督も認めるほどだった。久保は3年前、高校生ながら代表に選出され、一方の南野は昨年のブラジルW杯直前の代表候補合宿に参加した。現U-22代表が手倉森体制となってからは、昨年12月のタイ・バングラデシュ遠征で2人を呼んでおり、指揮官もその目で力量を確かめている。「持っているものは申し分ない」と太鼓判を押す。

 今回の招集に当たっては「協会の努力と所属クラブの理解に感謝したい」と手倉森監督は語ったが、日本代表の国際Aマッチと違い、U-22代表に拘束力はない。2人に関しては、条件付きでの帯同ということで折り合いをつけた。久保は3試合すべての帯同が可能だが、そのうちの2試合までの出場に限られる。南野はクラブ側が4月4日のリーグ戦に出場させたい意向があり、第2戦のベトナム代表戦後にチームを離れることとなった。

 対戦する3カ国のイメージについて、手倉森監督は「機能的かと言えば、そうじゃない部分がある」としながらも「(格上に対する)モチベーションがある」と警戒する。ベトナム代表を率いるのは三浦俊也監督。Jクラブの監督時代に対戦経験がある手倉森監督は「嫌らしいことをしてくる」という印象を持っているほど、不気味な存在だ。それでもリオ五輪に向けて、ここはまだ第一関門に過ぎない。相手を圧倒するぐらいの力は見せつけたい。手倉森監督は「駆け引きの部分でも考えながら、日本らしさを出して戦いたい。やりたいことをやらせないくらいの気持ちでぶつかっていかなければならない」と述べた。

 11日には壮行試合として、ミャンマーU-22代表戦がフクダ電子アリーナ(フクアリ)で組まれている。手倉森監督は「まずは手倉森ジャパンの国内初お披露目。サッカーを発展させる思いをピッチで存分に表したい」と抱負を語った。また試合日は東日本大震災があった日でもある。当時、被災クラブのベガルタ仙台で指揮を執っていた手倉森監督は、練習場も確保できない状況だった。その時に練習場を借りていたのが千葉だった。そういった縁のある場所で、東北復興のためにプレーでメッセージを送る。指揮官は「勇気や力を届ける試合をしたい」と誓った。

「巧いとか機能しているというよりも、国を背負っていることを示してほしい。戦っている姿、躍動感を出してもらいたい」と、選手たちに求める手倉森監督。23日が始まるAFC U-23選手権予選。日本の初戦は27日にマカオ代表とぶつかる。グループリーグ1位に入れば、文句なしでリオデジャネイロ五輪アジア最終予選を兼ねた来年1月のAFC U-23選手権へと進める。2位でも次のステージ進出への可能性はあるが、第一関門は足踏みひとつせず、一気に駆け抜けたい。

<U-22日本代表メンバー23名>

GK
櫛引政敏(清水エスパルス)
牲川歩見(ジュビロ磐田)
中村航輔(アビスパ福岡)
DF
松原健(アルビレックス新潟)
山中亮輔(柏レイソル)
亀川諒史(アビスパ福岡)
奈良竜樹(FC東京)
岩波拓也(ヴィッセル神戸)
植田直通(鹿島アントラーズ)
MF
大島僚太(川崎フロンターレ)
遠藤航(湘南ベルマーレ)
原川力(京都サンガF.C.)
矢島慎也(ファジアーノ岡山)
野津田岳人(サンフレッチェ広島)
中島翔哉(FC東京)
豊川雄大(鹿島アントラーズ)
秋野央樹(柏レイソル)
吉野恭平(サンフレッチェ広島)
FW
荒野拓馬(コンサドーレ札幌)
鈴木武蔵(アルビレックス新潟)
久保裕也(BSCヤングボーイズ)
浅野拓磨(サンフレッチェ広島)
南野拓実(ザルツブルク)

(文・写真/杉浦泰介)