23日、日本陸上競技連盟は都内で会見を開き、8月の世界選手権北京大会に出場する競歩代表7名を発表した。男子20キロは世界記録保持者の鈴木雄介(富士通)に加え、日本選手権優勝の高橋英輝(富士通)と全日本競歩能美大会2位の藤澤勇(ALSOK)を選出。同50キロは昨秋のアジア競技大会金メダリスト・谷井孝行(自衛隊体育学校)と、日本選手権と全日本競歩輪島大会を制した荒井広宙(自衛隊体育学校)と日本記録保持者の山崎勇喜(自衛隊体育学校)が選ばれた。男子は日本陸連が定めた世界ランキング12位に相当する派遣設定記録Aをクリアした6名がほぼ順当に代表入りを果たした。女子20キロは日本選手権と全日本競歩能美大会を制した岡田久美子(ビックカメラ)が唯一、代表に入った。世界選手権で8位以内に入り、日本人トップとなれば来年のリオデジャネイロ五輪代表に内定する。
(写真:五輪と合わせて5度目の世界大会に挑む鈴木)
 強力な布陣で北京に挑む。日本陸連の今村文男競歩部長は「全選手入賞」と目標を設定し、男子では初のメダル獲得も目指す。男子20キロは世界ランキングトップ10の6割を、同50キロは4割を日本人が占めており、メダルの可能性は十分にある。20キロのエース・鈴木は「3人で金銀銅」と表彰台独占を掲げた。

 3月の全日本競歩能美大会で1時間16分36秒をマークし、世界最速の称号を手にした鈴木。そこに満足する様子は見られない。「ひとつの目標ではありましたが、世界新記録は自分の中で大きいものではなかった。陸上の世界一は世界選手権もしくはオリンピックで金メダルを獲ること」と語る。

 金メダルを目指す最大のライバルは前世界記録保持者のヨハン・ディニ(フランス)。鈴木は「彼は本来50キロの選手。20キロ選手としてのプライドがある」と闘志を燃やす。毎回、メダル争いに絡んでくる競歩王国・中国勢も手強い相手だ。鈴木が銀メダルを獲得したアジア大会でも、ロンドン五輪銅メダリストの王鎮に1分近い差をつけられ、後塵を拝した。昨年の借りを敵地で晴らしたいところだ。

 今大会のコースは従来の1周2キロから1キロに変更される。周回が多くなる分、審判の目に多くさらされるため、選手が歩型違反をとられるリスクは増える。だが「美しいフォームが長所なので有利」と鈴木は前向きに捉えている。これまで一度も失格を経験したことのない正確さが売りの鈴木にとっては“追い風”と言えるだろう。

「3つの世界大会で金メダルを獲る」ことを20キロの集大成に位置付けている鈴木。その第一関門となる北京で、最速の男は最強を証明する。日本勢の世界選手権での過去最高成績は6位。日本人で初めて競歩の世界記録をマークした鈴木が、また新たな歴史を塗り替える。

 以下代表選手は次の通り。

◇男子競歩20キロ◇
鈴木雄介(富士通) 4大会連続4回目
高橋英輝(富士通) 初出場
藤澤勇(ALSOK) 3大会ぶり2回目
(写真:会見に出席した代表メンバーの高橋、鈴木、谷井、荒井)

◇男子競歩50キロ◇
谷井孝行(自衛隊体育学校) 6大会連続6回目
荒井広宙(自衛隊体育学校) 3大会連続3回目
山崎勇喜(自衛隊体育学校) 3大会ぶり4回目

◇女子競歩20キロ◇
岡田久美子(ビックカメラ) 初出場

※数字は世界選手権の出場回数

(文・写真/杉浦泰介)