今年2月に4回目の調査を実施したところ、全国の知名度は前回(昨年6月)同様14・5%のままだった。一向に伸びない。1年の延期が決まった東京五輪に比べると、あまりにも影が薄い。その影の薄い大会に、これからは注目が集まるかもしれない。好むと好まざるとにかかわらず五輪の“露払い”のような役目を担うことになってしまったからだ。

 

 来年5月14日から30日にかけて行われる「ワールドマスターズゲームズ(WMG)2021関西」は、<概ね30歳以上の成人・中高年の一般アスリートを対象とした生涯スポーツの国際総合競技大会>だ。五輪同様、4年に1度の周期で開催される。今回で10回目。アジアでは初の開催だ。

 

 会場は大阪府、京都府、兵庫県、福井県、滋賀県、奈良県、和歌山県、鳥取県、徳島県、岡山県の2府8県にまたがる。WMG組織委は国内3万人、国外2万人、計5万人の参加者(選手、競技関係者、家族)を見込んでいる。

 

 WMGには五輪にはない魅力がある。規定の料金さえ支払えば、選手の家族でも開会式や閉会式に参加することができるのだ。「おとうさんやおじいちゃんが頑張っているところを家族皆で応援する。そんな風景が見られるのがWMGの特長です」(WMG組織委広報部・吉田武司氏)

 

 また海外からの参加者の世帯平均年収は10万ドル(約1084万円)を超えるというデータもある。平均滞在日数は15・8日。WMG組織委によると、スポーツツーリズムを中心とした経済効果は1461億円を見込んでいる。

 

 2度目の五輪開催で、東京に投資が集中する中、関西の自治体や経済界はWMGを景気浮揚や地域振興のテコにしたいとの思いがある。1月からはアーリーエントリーも始まった。さらにアクセルを踏もうとしていた矢先にパンデミックが発生した。

 

 1年の延期を余儀なくされた東京五輪の開幕日が来年7月23日に決定した翌日、WMG組織委は「当初計画のとおり開催したい」との声明を出した。とはいえ、これもコロナ次第。生殺与奪の権は未知の微生物が握っている。

 

 もし5月に開催予定のWMG関西が延期、もしくは中止となった場合、その2カ月後に開催予定の東京五輪に影響が及ぶのは避けられないとみる。

 

<この原稿は20年4月1日付『スポーツニッポン』に掲載されたものです>


◎バックナンバーはこちらから