2月23日(日)、2020シーズンの開幕戦(J2第1節)を迎えた愛媛FC。「さあ、ここから!」という思いだったが、その後(第2節以降)は新型コロナウイルス拡大の影響からJリーグは中断の期間に入っており、公式戦は行われてはいない。世界各地におけるウイルス感染の早期終息を祈りつつ、今回は開幕戦での私たちサポーターの活動を振り返りたい。

 

 

 

 

 

 

 

 開幕戦当日、会場となるニンジニアスタジアム(愛媛県松山市)は、幸いにも朝から晴天に恵まれ、試合に向けた準備も大いに捗った。

 

 私は愛媛FCサポーターズクラブ「ラランジャ トルシーダ」の応援備品の事前準備もあり、試合開始5時間前にはスタジアムへと到着。太鼓や横断幕などをスタンド入場口へと搬入後、会場設営のため、午前中から汗を流しているボランティアスタッフの仕事を少しだけ、お手伝いさせていただいた。エチケットのためマスクをして作業されている方も多かったのだが、開幕戦を迎えることができる喜びやチームへの期待感から、楽しい会話や笑い声等も聞かれ、皆さん元気な様子で、ひと安心。

 

 ゴール裏スタンドのコアブロックに陣取るサポーター達は、試合開始4時間前にはスタジアム外周へと集合し、試合前の打ち合わせやスケジュールの確認などを行った。その後、横断幕の紐の付け替えや応援備品などのメンテナンス作業を行い、事前準備に勤しむ。(ニンジニアスタジアムでは)今季の公式戦から、再びゴール裏スタンドが開放となり、私たちコアブロックのサポーターもバックスタンド席からゴール裏席に引っ越すことになった。

 

 試合開始の3時間30分前。久しぶりとなるゴール裏スタンド内へと横断幕を搬入し、幕の配置を試行錯誤。それでも手慣れたもので、およそ30分で設置作業を終え、選手たちの会場入りを待つ。

 

 この日、ウイルス感染拡大防止のため、選手とのハイタッチ企画など、一部のイベントは自粛されたが、サポーターによる「選手の入り待ち」は普段どおり、実施されることになった。

 

 試合開始2時間前、選手たちが乗っている愛媛FCカラーのラッピングバスがスタジアム入場門に到着。第1ゲートに集結したサポーター達が「準備はいいか さあ闘え!」と書かれた白幕を掲げ、選手たちをチャントの大合唱で出迎える。

 

「愛媛のー! 男ならー!」

 

 試合に臨む選手達を勇気付けるチャントがスタジアムに響き渡った。

 

 愛媛FCサポーターでは、今季も新しいチャントが作られ、公式戦での応援に導入されることになっている。試合開始1時間前には、ゴール裏スタンド内コンコースに新チャントの練習を含めた決起集会も行われ、戦いに向け、サポーター達の気持ちも高まっていく。

 

 同時間帯、スタジアム外周のイベント広場では、J2開幕を祝う恒例の「餅まきイベント」を愛媛FC事務局が開催。両クラブのサポーター達が大勢集う中、今回もイベントのお手伝いをさせていただいた。

 

 イベント終了後、スタンド内に移動し、応援やビッグフラッグ(エンブレムフラッグ)展開に向け準備を進める。そんな中、選手たちがピッチ内練習のためグラウンドに姿を現すとスタンドから歓声が沸き起こる。続けてサポーターによる試合前の応援ルーティーンが始まり、新シーズン開幕を迎えた喜びを改めて実感できた。

 

 選手たちの試合前の練習終了後、ピッチでは河原和寿さんの現役引退セレモニーが行われ、サポーターからは彼を労うコールと拍手が送られていた。

 

 試合直前となり選手達が入場。皆で協力してゴール裏スタンドに陣取るサポーターの頭上にビッグフラッグを展開する。

 

 日が傾き、時刻が午後4時を廻る中、試合がスタート。開始と同時に、今季も各チャントのタイミングに合わせ「手拍子・お願いします」と書いてある自作の手拍子ボードを掲げ、スタンド内を歩きまわり、応援の誘導を行う。夕刻が迫り肌寒い中だったが、数多くの観客が誘導に合わせ、手拍子や声だし応援に協力してくださった。

 

 試合は後半3分、愛媛FCがコーナーキックのチャンスを得る。DF前野貴徳選手が右コーナーから、ニアサイドに向けセンタリング供給。このボールを捉えたDF茂木力也選手が鮮やかなヘディングシュートを決めて愛媛が先制! 大歓声に包まれるスタジアム! しかしその後、相手に逆転を許し、最終スコア「1-2」で悔しい敗戦となった。

 

 それでも、昨年J1を経験している力のあるチームに対して、セットプレーから先制ゴールを奪えたことで自信を得ることができたと思うし、新戦力の選手たちがチームに融合しつつあったことは、今後に向けて期待が持てた。

 

 試合後、ゴール裏スタンド前へと挨拶に来た選手たちに対し、サポーターは「愛媛FCコール」で次の戦いへ向け、エールを送っていた。

 

 例年通り、ホームゲーム試合後の会場では、事務局の運営業務に関わる撤収作業が行われている。私たちサポーターもボランティアスタッフとして、今年も撤収作業を、お手伝いすることになった。会場外周に設営されたテントや看板、のぼり旗や物販品などを撤収し、スタジアム内の倉庫に運び込んだり、トラックへと積み込んだりするのである。勝利後の作業は足取りも軽く楽しいのだが、敗戦の後は気分的に辛く、運ぶ物品も重く感じる。この日は、愛媛が敗れたということもあり、仲間同士、愚痴をこぼしながらも作業を進め、約1時間30分程で全ての撤収を完了。その後、事務局スタッフやサポーター仲間との挨拶を終え、家路に着いた。開幕戦の長い1日が、ようやく終わりを迎えたのである。

 

 3カ月振りの公式戦ということで様々な活動が重複し、体力的には少し疲労も感じたが、それでもスタジアムという空間において、気の合う仲間たちと会話を楽しみ、また新しい人々との嬉しい出会いもある中、試合を観戦し、愛するクラブを応援できる喜びや幸福感を改めて感じた2020シーズンの開幕戦であった。

 

 先行き不安な世界情勢の中、今は辛抱の時期だと考えるが、リーグ戦が再開された暁には、エチケットに気を付けつつ、スタジアムの大空間で繰り広げられる熱く激しい闘いを、沢山のサポーターと共に心置きなく楽しみたいと思っている。

 

<松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>

1967年5月14日、愛媛県松山市出身。愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。

 


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